見出し画像

ヒメサユリについて想う

オトメユリとも言います。これが標準的な和名のようです。
現在はヒメサユリの方が一般的です。
学名はLilium rubellum。Rubellumは「赤っぽい」という意味だそうです。
典拠【植物の学名(種小名・種形容語)索引http://www2.tky.3web.ne.jp 】

山形、新潟、福島の県境付近にのみ自生します。
宮城県南部の一部(七ヶ宿町)にもあります。

150m程の低山から1700m位の高山まで生育しています。
野生のユリの中で最も早く開花するユリです。
昔の五月(さつき)、田植え時に咲くのでサツキユリという方言もあります。
独特の甘い香りを持ち、群生すると芳香がただよいます。
西日本に自生するササユリが、豪雪地に適応した変種だとも言われます。
環境省のレッドリスト(準絶滅危惧種)に入っています。

ヒメサユリとササユリの違いは下の写真をご覧ください。

16対9 ヒメサユリとササユリ 背景白

 ヒメサユリ(福島県西会津町)       ササユリ(静岡県南伊豆町)

オシベの色がヒメサユリは濃黄色。ササユリは紅色です。
色はヒメサユリが鮮やかなピンク。ササユリは淡いピンクです。
ヒメサユリの花は小ぶり。ササユリの花弁は細長く反ります。

昔はそれほど珍しい花ではありませんでした。
故郷(新潟の山間部)の里山でも普通に群落がありました。今もわずかに残っています。

★払川2021.6.3.2_1_1

今年6月に300mm望遠で撮影。蕾4つと花が2つ確認できます。
川を挟んだ崖なので人手を免れたのでしょう。標高150m程の場所です。

浅草岳や飯豊といった高山に咲く花と思っている方もいますが、
昔は里山で普通に見られた花です。
6月初め笹団子の笹を採りに山に入ると、ヒメサユリが咲いていたものです。
亡くなった母は
「戦争中の食糧難の頃、根っこを掘って食べたものだ」と言っていました。

今は、数か所の保護地に行かないと見られなくなりました。
一番有名なのは南会津の高清水自然公園です。
100万本と称している通り、圧巻の群生で一見の価値があります。
町では刈り払い、火入れ(山焼き)、育種など徹底した管理を行っています。

ここまで増えた陰には、南会津にある月田農園の努力があります。
月田禮次郎さんは、父上と共に数十年かけてヒメサユリの栽培に成功した方です。
それまで、ヒメサユリの栽培は無理だと言われてきました。
地元の人が山から掘ってきて、庭に植えても1~2年で消えてしまうからです。
ウィルスに弱いという特性もあります。
試行錯誤の末これらを克服して栽培法を確立したのが月田さんです。

余談ですが、
大河ドラマ「天地人」に、ヒメサユリで部屋を埋め尽くす場面がありました。
月田農園から仕入れたものではないかと推測しています。

ヒメサユリが里山から消えた理由は色々考えられます。
山野草ブームで乱獲された…大きな原因だと思います。

炭焼き、カヤ刈りなど人手が入らなくなり里山が荒れた。
雑木や植林杉で覆われ、里山に陽が差さなくなりました。
ヒメサユリは日当たりが好きなので、生育できません。
月田さんも言われていますが、一番大きな要因はこれだろうと思います。

温暖化の影響もあるかも知れません。
最近は、雪国にいないはずのイノシシが、球根を食べるという被害が起きています。

日本は「野生ユリの王国」だと言われます。
園芸種と見まごう美しいユリが沢山あります。
その中で一番可憐で美しいのがヒメサユリだと思います。
できるなら故郷にもう一度ヒメサユリの丘を再現したい。
それが私の叶わざる夢です。

長文お読みいただき有り難うございました。








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?