7年半ぶりに初恋の人と会った日の日記

 最後に日記を書こうと思ったのはいつだろう。今まで書いたことがあるのは夏休みの宿題だが別にやる気ではなかった。つまり今、進んで日記を書くのは人生で初めてのことで、同時にそんな衝動を生み出させるほどの出来事が僕に起こったことを意味する。そしてそれは題字の通り、初恋の人との久々の出会いなのだった。せっかくこの日記を読んでいただける読者がいるため、まずは僕と彼女の関係を振り返る。あ、ここでの彼女はガールフレンドという意味ではなく、単なる三人称単数代名詞として捉えてほしい。

 出逢いは中学3年生のときで、同じクラスの女の子だった彼女。最初は「仲の良い友達」として関わっていて、お互いに朝早くから教室に居て他の生徒も少ないからそこで沢山話をしていた記憶がある。お互いに俗にいうオタクに分類される人種で、話も割と合う方だったと自負している。
そんなことを続けていくうちに僕の中でそれはいつしか、人生で初めて抱く恋愛感情に変わった。するとどうなるか。なんと、彼女と話せなくなってしまった。今までは気にしないような彼女の一挙手一投足にドキドキしてしまう、ピュアといえば聞こえはいいがその実異性に不慣れなだけという状態になってしまった。おまけに告白はチャレンジではなく確認であることをまだ知らないから、告白して無事玉砕。その後の関係がどうなったかは言うまでもないだろう。

 そして高校を卒業し別の大学に進んだことで会う機会は全く無くなった。彼女と関わることは今後ないだろうと思いながら過ごしていたある日。まさかのまさか、ある春の日に彼女から連絡が来た。彼女の名前が唐突にアプリに出てきたときは、正直嬉しさよりも緊張・疑念の方が強かったと記憶している。それでいざ話してみると、かつての仲が良かったあの時期に近い、楽しいやり取りになっていた。まあ2週間ぐらいで止まったけど。

 そして今夏。7年半ぶりに彼女と会うことになった。誘ったのは僕の方からで、その文章を送ることすら緊張していた。女の子と2人きりで会う約束を持ち掛けたことがほとんどないので、ある意味当然ではある。しかし優しい彼女はいいよと言ってくれたため一安心。待ち合わせの日が近づくにつれて、もうすぐ会えるというのにその日を待ち遠しく思う気持ちは大きくなっていた。

 当日は寝坊することもなく、きっちりと待ち合わせ場所に着くと彼女がそこにいた。7年半ぶりの出会いと聞くと仰々しいが、現実はもっとずっとあっさりしたもので良い意味で軽かったし、一方で嬉しさという名の質量もしっかりと感じた。久々に見た彼女の姿は、かつて見たときと比べて雰囲気はあまり変わらないものの、髪型や服装は年相応のかわいさを持っていた。まあ初恋の人なので容姿が僕にとっていいのは変わらないのだろう。てかここでかわいいって言うとキモイかな?いやかわいい人にかわいいと言って何が悪い。

 さてそんな7年半ぶりの再会ではなにをしたかというと、場所を移しながらとにかく話をした。約9時間、ほとんど会話は止まらなかったと思う。彼女はとにかく喋るのが好きな人で、僕も人の話を聞くのは好きなほうなのでそこの相性が噛み合った結果だ。こういうのがあってもいいよね…?本当にこれ以外のことはせいぜいご飯食べる(しかも話すのメインで食べるのはサブ)ぐらいしかしてないので、ここからは話した内容についてつらつら書いていく。

 まずは中高時代の振り返りから。お互いに知っている中学時代、お互いにまともに知らない高校時代。たまには知っている思い出に浸り、たまには知らない思い出を知る。そこには――その話が出るのは仕方ないけど――僕が告白してフラれた出来事もある。そこで7年半遅れの精算をお互いにすることにした。僕が急に喋れなくなったり告白が唐突だったりで、相手も恋愛ごとにそこまで慣れてるわけでもなく、と総じて「お互いにこういったことに慣れてなかったんだなあ」という気持ちになった。7年半埋めることができなかったわだかまりをここで埋めることができただけでも、彼女と会えてよかったと思う。

 それに関連してセクシュアリティの話になった。読者の中で「アセクシュアル」や「アロマンティック」という単語を聞いたことがある人はどれぐらいいるだろうか。自分はこのとき初めて聞いたのでそこまであまり認知はされていないと思われる。軽く説明すると、「アセクシュアル」は他者に性的欲求を(あまり)抱かない人、「アロマンティック」は他者に恋愛感情を(あまり)抱かない人のことを指す。そして先ほどの話にも繋がるが、彼女はどうやらアロマンティック・アセクシュアルらしい。つまり多分僕がどれだけ顔がいい男でどんなに振る舞いが完璧でも、おそらく告白は通じなかった可能性が高い。いつまでも失恋話に絡めるのはさすがにやめようか。ともかく自分にはないセクシュアリティの話は興味深いもので、僕が今まで考えたことのないような考えを聞くことできた。と同時に人間の恋や性欲は難しいものだなと感じた。
ちなみにこの後本屋に寄った際、それに関する本があったので買ってみた。少しずつ最後まで読んでみようと思う。皆さんも興味があれば。

 あとは彼女の近況について。現在彼女は文学を嗜んでいて、なんと現在とある本を執筆中(世に出回るのではなく個人の本屋に置いてもらうもの)らしく、ここまで書いた字数は35万字ぐらいとか言ってた(全部が本に載るわけではないが)。ありえなすぎる。僕も二次創作の小説を書いているが、今まで出した作品全て合わせたものの数倍である。また読書や映画・アニメ鑑賞も大好きで、一月に触れる作品の数も多いこと。そんな感じで好きなことに対して僕以上に熱中し、心血を注いでいる姿は僕の目には輝いて見えて、また自分もそういったこと――SSを書いたり今こうやって文字を書いたりはたまた音ゲーの何かだったり――を頑張る気持ちになれた。今回日記を書いたのもその一つ。とりあえず修士終わるまでに同人誌出したいな〜って考えてます。そのときはよろしくね。

 ということで2人とも文章を書くことには触れている(ただし彼女の方がとんでもなく凄い)ことでそんな話もした。彼女は純文学をメイン、僕はエンタメ小説のみということで一口に文学と言っても書くときには大きな違いがあって、一文一文字の表現に注視する純文学は僕にとってはとんでもなく難しいものに見え、書ける人は凄いと思った。そんな彼女は同じ純文学を嗜む後輩がいるようで、彼・彼女らの話も色々聞かせてもらった。みんな本当にすごいらしく、既に純文学の同人誌の主宰をやってたり表紙のオシャレなデザインもできる人もいたりと、聞いててハイレベルすぎるな…って人が多かった。実際にとある彼の文章を読んだが本当にすごいこと。一文字までこだわっていて、表現技術だけで「これは凄い」と思わされ、純文学の持つ表現力の素晴らしさに感動した。そして、とても素晴らしい人に出会えた彼女は本当に嬉しそうで、いい人に出会えてよかったとなぜか親心が発揮した僕でした。

 さてここまでの話だと一般大学生に思える2人だが根はオタク。ということで最近好きなコンテンツの話も。僕は音ゲーと『アイマス』(の中でも765プロ、の中でも菊地真)で、彼女は『ラブライブ(特に蓮ノ空)』と『カリスマ』(他にもあったかも)が好きらしい。その中でも『カリスマ』は色々おかしいコンテンツで面白く、気になって少し見たところ湊大瀬くんが個人的なビジュで好きでした。彼のソロ曲も聴いてみたら良さげなので少し大瀬くん中心に見ようかな?って思ってます。保証はできません。
(一応彼のソロ曲のリンク貼っておきます。かっこいいね)


 …とこんな感じで9時間喋り続けたのがあの日のこと。7年半ぶりに、しかもめちゃくちゃ気まずかった関係だったとは思えないほどの一日を過ごせて楽しかった。彼女の方もそう思ってくれてるといいな。また、7年半抱えていた半ばトラウマのような思い出に向き合い、色んな意味で前に進むことができたと思う。それに彼女の今もかわいらしい姿も見れたし。
自分にとってこの日は楽しく印象的で、過去のマイナスな自分と決別し今後の自分の色んな活動を頑張ろうと決心する、そんな一日となった。

 ちなみに最後、彼女と2S写真撮れて嬉しかった。


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