ことばの音の規則性:音韻論入門 I

並び方、というのは言語においてだいぶ重要なことなんです。単語の並び方に関しては生成文法入門 で探っていっています。

今回この入門では、音の並び方の規則性について考えてみたいと思います。

そう言うと、とっかかりにくいので例を見てみましょう。

しんぶん

よく知っていることばですね。「ん」が2回ありますので注目してみてください。

実はこれら2つの「ん」は違う音なんです。
1つ目の「ん」は英語で言うところの M の音です。両唇を閉じて発音します。やってみてください。2つ目の「ん」は英語の N ですね。唇は閉じませんね。

しかし、これら2つの「ん」が別の「ん」には聞こえませんし、別の「ん」だと思って発音したりしませんよね。実際は別の「ん」として発音しているのに。これが「音韻論」のミソかもしれません。

これら M と N の2つの「ん」は異音と呼ばれています。同じに聞こえるんですね。

ちょっと待って下さい。マミムメモ と ナニヌネノ は同じに聞こえませんね。これらも M と N なのに、当然ながら別の音ですね。なぜ「しんぶん」の「ん」は同じに聞こえるのか不思議ですね。


英語でも似たような使い分け(?)があるのですが、英語では表記も発音に引っ張られていて明示化されています。下の2つの単語を考えてみてください。

possible
credible

これら2つの単語の否定形みたいなやつ作れますよね。

impossible
incredible

possible には im- 、credible には in- ですね。M と N ですね。ちなみに、それぞれ M と N で発音されるので、実際に別の音です。否定という点に関しては同じですし、inpossible とか imcredible って単語が存在しないようですし、im-in- の「中の人」は同一なんでしょうねえきっと。

in- がつくやつをリストしてみましう。

inaccurate
incoherent
indefinite
inequity
infinite
inhabitable
inimaginable

いっぱいあります。

im- はどうでしょうか。

immoral
immodest
impartial
imperceivable
imperfect
implausible

m か p で始まる単語ばかりですね。他には無いようです。

どういうことでしょうか?

M か P で始まる単語にくっつくときだけ im- になっていいんですね。その他は in- なんですね。

だいたい様子は分かりましたが、なぜでしょうか?

マミムメモ、パピプペポって言ってみてください。それぞれ、両唇を閉じて発音します。あっっっっっっっ、最初の方で M を発音するときも両唇を閉じるって言いましたよね?それですそれ。

M、P、そして B の音って、両唇を閉じて発音するんです。Nは違います。両唇を閉じて発音するMPBの音の前の N は M になるんですね。これは日本語の「しんぶん」の1つ目の「ん」が M なのとほぼ同じですね。

次の音に合わせて別の音になる、同化って専門用語では言うんですけど、次の音ではなく前の音に合わせるやつもあります。英語では複数形の -s とかが「ス」と発音されたり「ズ」と発音されたり「ィズ」と発音されたりですね。日本語英語に限らず、いろんな言語で同化という現象は見られます。たぶんですけど、きっと全部の自然言語にあると思います。

今回は、次の音に合わせて発音が変わる、というのを見てみました。音の規則性の一つです。次の音韻論 II に続きます。





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