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求めよSARABA与えられん

 勝算がある。

 かなり固い勝算がある。あのおっさんは確かに言ったんだ。

「叶えてやろう」

 だからこそ勇気を出して「好きです!」と叫んだ僕に加奈子ちゃんは「毎日毎日しつけーよ!」と言った。

 いやしつこくはねーよ、一回目だもん。一回目の勇気の振り絞り方だったじゃん今。そんなこと言えるはずもなく、僕は一回目の振られ方のリアクションをするほかなかったが加奈子ちゃんはそれを見てほとんど舌打ちをしていたように思う。加奈子ちゃんの「しつけーよ」は音として態度として僕のハートに突き刺さった。

 誰だ。

 俺の振りをして加奈子ちゃんに告ってたのは誰だ。いわゆるドッペルゲンガー的な奴が俺より先に加奈子ちゃんに想いの丈を伝えていたとでもいうのか。なら言ってくれよ。振られた時言ってくれよ。一言ダメだったって俺に言ってくれてもいいじゃない。ひどいよドッペルゲンガー。お前は一体今どこにいる? もう一人の俺の行方を追って、俺は今日からそのためだけに生きていく!

 それでも腹は減るのでラーメン屋にふらっと入る。

 これが世にも奇妙な物語だったらラーメン屋の親父が「あんた、さっきも味噌ラーメン食べてたな。よっぽど好きなんだな、うちのラーメンが。」みたいなことを言ってくれてすんなりドッペルゲンガーの話になるのだろうが、それどころかレンゲがない。

「おい、親父! レンゲがないぞ、レンゲが!」

 僕は怒鳴った。

「うちの味噌ラーメンはコーン入ってないんだからレンゲいらねぇだろ!」

 親父も怒鳴った。

 果たしてレンゲはコーンをうまく食べるためにあるものなのか、そんなわけないと僕は思う。まさかあの親父は僕が北海道出身であることを知りながらわざとイヤミを言ったのではあるまいか。いやおかしい。確かに北海道の味噌ラーメンはなんとなくコーンが乗っていたりする。だけど、なぜあの親父が僕の出身地が北海道であると知りえるのか。それはきっとさっき保険証を出したからである。加奈子ちゃんの辛らつな言葉とドッペルゲンガーの可能性に動揺していた僕は、親父に言われるがまま保険証を提示していた。それどころか顔写真がないとダメだと言われ、免許証を出せとまで言われていた。じゃあ免許証を渡すから保険証を返せと僕が言うと、あの親父は今コピー中だから少し待てと渋った。まだ保険証と免許証を返してもらっていない。てか、何でラーメンを食うにあたって身分を証明しなくてはならんのだ。

 さてはこいつが全ての元凶か?

 俺の戸籍情報を元にドッペルゲンガーを生成して加奈子ちゃんと僕との恋路を邪魔しやがったんだな?

 僕は頭にきた。

 テレビから速報が流れた。

 内容は加奈子ちゃんが遺体で発見されたという内容。でかでかと僕の写真。僕指名手配犯。

 ラーメン屋の親父め、なんてことをしてくれたんだ! 陰謀だ! 加奈子ちゃんが死んだ、悲しいよ悲しいよ俺は戦うぞ、加奈子ちゃんの仇をとるためにも、このまま陥れられてなるものか。必ずやラーメン屋の親父とラーメン屋が生み出したドッペルゲンガーを打ち倒し、加奈子ちゃんのお墓の前にすずしく光るレモンを置こう。

 ポケットの中で携帯電話が鳴った。手にとった。やけに懐かしい声だと思ったらなんだ二年前に他界した母ではないか。

「ごめんな、隆弘、しばらく臭い飯食ってくれ。」

 お前も敵なんだね、お母さん。

 僕はラーメン屋を飛び出した。表は既に警官の制服をまとった僕のクローン二百人に固められている。もうこうなったらアレを使うしかない。僕が僕の左腕を引きちぎると、その付け根から大きなクレーンがニョキニョキと生えて僕は二百人の僕を薙ぎ倒した。次の瞬間、背後から細くて真っ赤なレーザーが僕の心の臓を貫いた。貫いたレーザーは地平線の彼方まで伸びていったが、その地平線の彼方のちょっと手前で流れレーザーに心の臓ドキュンされてる人影が見えて僕はそれ絶対加奈子ちゃんだと思って二歩で近寄ったら加奈子ちゃんだった。真っ赤なコーンげろげろ吐いてた。

 とりあえず「ごめんね」と言った。

 そしたら加奈子ちゃんは「いいよ、ずっと好きだったから」って言った。

 で、加奈子ちゃん死んで僕もそろそろ死にそう。この前なんか怪しいおっさんに願い事ないかって言われてそういえば俺「加奈子ちゃんと両想いになりたい」って言ったけどここまで荒唐無稽な叶い方するとは思ってもなかった。こんなんなら叶わなくてよかったし、望まなけりゃよかった。ドッペルゲンガーもクローンも腕クレーンもレーザーで死ぬのも無しで普通に好きな子と付き合うのってすげぇむずいけど、こうなった今となっては全然出来ないことないような気がする。人に頼ってる場合じゃなかった。誰に頼るでもなく単純に好きだって言えばよかったんだ。来世は自力で望む。絶対だ。だからお前らもそうするといい。後悔してからじゃ遅いんだから。あと俺の血文字長げえ

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