隣人の夫婦喧嘩の声

僕は喫煙者なんですが嫁が非喫煙者なので蛍族をやっています。ガラスってすげえんだなと思うんですけど、ベランダで煙草吸ってると普通に家の中にいては聴こえない近隣の音がめっちゃ聴こえる。このめっちゃは本当にめっちゃで色々あるんですけど、体言のみで併記してそれっぽいなんかこう「俺は色んなもの感じてるぜ」感を出す技法を発揮するのがめんどくさいんで本題入りますけどそれらの音の中の一つに毎晩めっちゃ夫婦喧嘩してる声があります。なんか聴こえる範囲から想像すると旦那さんがカッとなりやすい性格というか図星突かれると逆上する性格っぽくて、何かしら言い訳がましい調子での恨み言つらみ言をハイトーンで繰り出してるのが日々聴こえてくる。たぶん奥さんにイヤミったらしいこと言われたのかな、人にイヤミったらしく痛いところを突かれたとき人はこんな調子になるな、なんかそんなような怒気の篭った声が聴こえてくる。嫁さんの方の声はそこまで聴こえない。繰り返すに想像だけど「わかったわかったもう好きにしい」「大きい声出さんといて近所に迷惑やから」的な非常にネガティブな相槌を打ってるんじゃないかなと思われる、旦那さんのでかい声の調子を聴く限りは恐らくそんな感じだ。とある日、煙草を吸おうとベランダに出るといつものとおりに旦那さんがギャーギャー騒いでるのが聴こえた。否が応でも毎日顔を合わせなくてはならん人と仲良く気分良くやれないというのもきっと大変なのだろうなと思いつつ煙を燻らせていると、今日は珍しく奥さんの方も金切り声を上げている。奥さんの方もだいぶヒートアップしてるようで「いい加減にしてくれ毎日毎日」みたいなことを言っている。まぁ、俺の体感的にも結構な頻度だから、奥さんがそう言いたくなる気持ちもわかる。たまにはこんな風に言い返す日があってもいいのかなと思いつつ、僕は二本目の煙草に火をつける。しかし理論上は往々にして起こりうることが分かりきっているとしても、こうして自分の目や耳の届く範囲でこうもギャーギャーと騒ぎ立てられると、どうして共に認め合い共に生きていくことを誓ったはずの二人がこんなにも連日に渡ってワンパターンな言い争いをしているのだろうかと不思議な気持ちも涌いてくる。まぁ、わかるんだけどね、密室だからこそアカの他人がいないからこそ、一度ズレ始めた歯車？歯車はあまりにベタだな、えーと配送？一度ズレ始めた配送はズレる一方、午前中にはって言ってたはずなのに夕方やっとエアコン取り付けに来よったみたいなそういうのはわかるんだけどね。とか考えてると奥さんの方が今日イチの声量で叫んだ。「あんた、あたしのこと幸せにしてくれるって言うたやないの！！」、間髪入れず旦那さんが叫ぶ、「言うてへんわそんなもん！！」、僕はベランダで煙草吸ってたら時たま二人の夫婦喧嘩を聴くだけで何も知らないので何も知らないのだけれども「それはお前奥さんが言うた言うてんねんから、絶対調子良い時に調子乗ってお前が言ってるんだと思うよ、言うてへんことはないよそれは」と思った。僕も今後、嫁さんと何だかうまくいかない口を開けば喧嘩ばかりの時期だって来ないとも限らないわけだけれども、それはそれで仕方ないからその時は喧嘩しても仕方ないとして、だからって過去にとっても仲がよかった時期を嘘だったとか間違いだったとかそういう風に考えちゃあいけないんだろうなと思った。

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