人目をはばかったりはばからなかったり

 人前でなにやら立派なことを言うのが嫌いであるが、好きな人もいる。立派なことを言う人を見ると、
「胡散臭いなあ」
と思ってしまい、なんだかおもしろくなってくるのだ。で立派なことを言っている人はこういう。
「人が真面目に話してるのに何がおもしろいのだ」
それの何がおもしろいかを説明などできるわけがないではないか。笑いとか涙とかそうそう簡単には説明できない。

 近所に市立の体育館がある。そこは休日、体育館の二階ををランニングコースとして開放していたり、ロビーなようなところにテーブルがあり食事、談笑ができるようになっていたりで、たまに家族で行くのだ。こどもが走ってジュース飲んで帰る。お気楽なおでかけだ。その体育館のロビーにおじさんがいた。50歳ぐらいのおじさん。おじさんは図書館で借りたであろう文芸書(ラベルが張っていたのでおそらく図書館で借りたであろうと思われる)を読んでいた。リュックサックからコンビニで売っている1リットルの紙パックのコーヒー牛乳をストローで飲んでいた。そののちリュックサックから自分で握ったであろう、ラップに包まれた握り飯をほおばりだした。
 おじさんが握り飯を頬張った瞬間、なぜだか涙が出そうになった。体育館で本を読みながら握り飯を喰っているおじさんからは、喜びも悲しみ感じることはできない。だけだと、おじさんの握り飯に泣きそうになったのだ。おじさんが握り飯を喰っているのを見て泣いてるおじさんというのはおかしい。あやしいというほうがいいか。私はそっとおじさんから目をそらした。
「何を涙目になってるねん」
とその瞬間誰かに問われたらどうだ。説明などできるわけがない。笑いとや涙のメカニズムを説明するために一生を費やす学者もいるのだぞ、そうそう説明できるわけがない。

 最近思うのはこどもも大人もそうは変わらないということだ。
「それぐらいで拗ねるな」
と大人は言うが、かくいう大人もそんなものだ。大人も自分の分のスイカがなかったぐらいで気分を害するではないか。大人もこどもあまり関係ない。電車が時間通りこなくてもこどもはそれを楽しむだろう。大人のように駅員に詰め寄ることはないだろう。ならばこどものほうがいいではないだろうか。
という前提はあるのだが、やはり大人とこどもが違うところがある。周りの目をいかに気にするか、である。
 ガチャガチャの正式名称はなんだろうか。コインをいれたらレバーを回すとカプセルに入った小物がでてくる、あれだ。六歳児と出かけることが多い。六歳児はガチャガチャが好きだ。極力ガチャガチャはしてもよいと対応をするようにしている。なぜなら親はビールだ、タバコだ、コーヒーだ、散財の日々。だからまいいか、なんて気になるのだが、一日二回はおおい。ガチャガチャは出かけたときに一度だけにしておくれ。しかしそんな理屈がこどもに通るわけがない。
こどもは泣く、叫ぶ、ガチャガチャがしたいと。二回目であろうがほしいものがあるのだと。そのガチャガチャはカプセルの中にうんちの小物が入っていた。
「がちゃがちゃがちゃがちゃがちゃ、うんち、うんち、うんち、うんちがほしい」
と大きな声で叫ぶ、泣く。ゲオでうんちうんちと大声。
 ゲオにはそこそこの人がいるが、わりと誰も笑わない。そういうもんだ。なんだろう。不思議なのだが、老人はにこにこしてくれる。こどもにもおじさんにもないもの。それはうんちほしいと叫ぶ幼児をみてにこにこできる心の余裕かもしれない。うんちほしいと叫ぶ幼児をみてにこにこする老人という景色は、おじさんが握り飯を喰っているのをみて泣きそぅになっているおじさんという景色よりもいいものだと思う。

関本佳史コントの会「イカニワレワレガ」
~田んぼも畑も持っていない人達~
日時 2021年7月24日 土曜日
開場19時 開演19時30分
場所 大阪府大阪市西区江戸堀1-4-21
   日宝肥後橋中央ビル2階2号アワーズルーム
(四つ橋線肥後橋駅下車6番出口四ツ橋筋から1本東へ徒歩1分)
出演者 関本佳史
前売り 1500円(プラス1ドリンク500円)
当日  2000円(プラス1ドリンク500円)
ご予約・お問い合わせ先 zubuno_zubuno@yahoo.co.jp

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