前位相空間を理解する6

定理8

$${X}$$の部分集合$${M}$$のフィルターで$${x\in M}$$に収束するものが存在することと,  $${X}$$のフィルターで$${x\in M}$$に収束し,  $${M}$$を含むものが存在することは同値.

証明

($${\implies}$$)
$${\mathscr{F}_{(M)}}$$を$${M}$$のフィルターで$${x\in M}$$に収束するもの,  即ち,  $${\mathcal{V}_M(x)\subset\mathscr{F}_{(M)}}$$とする.  このとき$${\lang\mathscr{F}_{(M)}\rang}$$は$${M}$$を含む.  また,  任意の$${V\in\mathcal{V}(x)}$$に対し,  $${V\cap M\in \mathcal{V}_M(x)\subset\mathscr{F}_{}(M),V\cap M\subset V}$$より,  $${V\in\lang\mathscr{F}_{(M)}\rang}$$なため,  $${x}$$に収束する.
($${\impliedby}$$)
$${\mathscr{F}}$$を$${X}$$のフィルターで$${x\in M}$$に収束し,  $${M}$$を含むものとする.  このとき$${\mathscr{F}\mid_M}$$は$${M}$$のフィルターで,  $${x}$$に$${M}$$で収束する.

$${X}$$の部分集合$${M}$$がコンパクトであることと,  任意の$${M}$$を含む$${X}$$の極大フィルターが$${M}$$に極限点を持つことは同等である.

定理9

$${X}$$の部分集合$${M,N}$$がコンパクトならば,  $${M\cup N}$$もコンパクト.

証明

$${\mathscr{F}}$$を$${M\cup N}$$を含む$${X}$$の極大フィルターとする.  もし,  $${M,N\notin\mathscr{F}}$$なら,  極大性から$${M^c,N^c\in\mathscr{F}}$$であるが,  フィルターの条件より$${M^c\cap N^c=(M\cup N)^c\in\mathscr{F}}$$となり,  $${M\cup N\in\mathscr{F}}$$に矛盾.  従って$${M,N}$$のどちらか一方は$${\mathscr{F}}$$に含まれる.  $${M\in\mathscr{F}}$$としても一般性を失わない.  従って,  $${\mathscr{F}}$$は$${M}$$を含む$${X}$$の極大フィルターであるため,  $${M}$$のコンパクト性からある$${x\in M\subset M\cup N}$$に収束する.  従って,  $${M\cup N}$$もまたコンパクトである.


定義13

前位相空間$${(X,\mathcal{V})}$$の部分集合$${M}$$がコンパクトであるとは,  $${M}$$が部分空間としてコンパクトなこととする.


定理10

$${(X,\mathcal{V})}$$をコンパクト空間,  $${f\colon(X,\mathcal{V})\to(X',\mathcal{V'})}$$を連続写像とする.  そのとき$${f(S)}$$もコンパクト.

証明

$${f(X)}$$の極大フィルター$${\mathscr{F'}}$$をとる.  $${f^{-1}(\mathscr{F'})}$$は$${X}$$の極大フィルターなので,  極限$${x\in X}$$をもつ.  しかるに,  $${f}$$は連続写像なので$${f(f^{-1}(\mathscr{F'}))}$$は$${f(x)}$$に収束するが,  $${f\colon X\to f(X)}$$は全射なので,  $${f(f^{-1}(M'))=M'}$$が全ての$${M'\subset f(X)}$$について成り立つ.  よって$${f(f^{-1}(\mathscr{F'}))=\mathscr{F'}}$$であり,  $${\mathscr{F'}}$$は$${f(x)}$$に収束する.

定理11

コンパクト空間$${(X,\mathcal{V})}$$の$${\mathrm{cl}(M)=M}$$なる部分集合$${M}$$はコンパクト.

証明

$${X}$$の極大フィルター$${\mathscr{F}}$$で$${M}$$を含むものをとる.  $${X}$$はコンパクトであったから,  極限$${x\in X}$$が存在する.  $${M\in\mathscr{F}}$$であるため,  この$${x}$$は$${\mathrm{cl}(M)}$$の点となるが,  $${\mathrm{cl}(M)=M}$$であったため,  $${x\in M}$$.  これは$${M}$$がコンパクトであることに他ならない.

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