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リバイスの『悪魔』論争

 これはリバイスの『悪魔』って何?についてざっくりまとめた記事です。
リバイス好きで肯定的に見てますが、批判意見も加味して書きます。

※以下本編最終回・映画・FS内容の重要なネタバレ・書籍等のインタビュー内容・偏見を含みます※




■公式辞典によれば・・・

 2024年2月、東映仮面ライダー公式サイトリバイスの用語辞典が公開された!
雑誌・TTFCインタビュー等でも公式から作中の『悪魔』について語られてきたが、広く閲覧できる場で定義されたこの機会に改めてまとめてみる。

気になる『悪魔』の項目は、辞典の一番目だ

”生物の放つ悪性エネルギーであり、ギフの糧となる存在。”

仮面ライダーリバイス 用語辞典 より引用

 リアタイ時から放送終了後に至るまで、リバイス作品内での『悪魔』の定義について曖昧・わからないという意見が見られた。その回答として、用語辞典一行目の説明はシンプルでわかりやすかったと思う。
五十嵐家の『悪魔』たちのようなイレギュラーはあるが、基本的に『生物の悪性エネルギー』『ギフの食料』の2つが解れば問題ない。


■わからない原因

 では何故シンプルな回答にも関わらず視聴者を悩ませたのか?
 本編最終回まででリバイスの『悪魔』を概ね把握したファンもいるように、作中で『悪魔』の定義について説明がされなかったわけではない。
とはいえそれは複数話に渡り、かつ複雑なものになっていた。以下に本編での説明をあげてみる。

「我々を絶滅に追いやるのは……『地球外生命体』、ギフ。
「これは事実なんです!」

第35話『未知なる脅威、人類の進む道』赤石長官の演説

「人類との共存を望んでいたギフ様は私と契約を結び、私はその仲介役を担った」
だが人類はあまたの時代文明場所でギフ様を『悪魔』と罵り拒絶した!

第38話『父と子が紡ぐ!究極のリバイス!』より赤石長官

 赤石英雄長官によって
ギフは『悪魔』じゃなくて『地球外生命体』である
・人間がギフを恐れ忌み嫌い『悪魔』と呼んでいた
ということが解る。
長官のパフォーマンス力の高さに見惚れてしまうシーンだが、彼のこれらの説明こそ超重要な情報だ。
ギフと『悪魔』が同じ種族だと思っていると、後半混乱することになってしまう。

赤石長官は重要なメッセンジャー

 さらに44話では、亜空間の中拘束されたバイスへ、ギフ自身から『悪魔』とその関係性が語られた。

生物の放つ悪性エネルギー…。貴様らが『悪魔』と呼ぶものを食料とする私にとって、地球は楽園だった。」
「素晴らしい『悪魔』を生む種族、人間がいたからだ。」

第44話『全身全霊をかけて、決断の行方』よりギフ様

 ここで作中『悪魔』と呼ばれているものについて
『生物の放つ悪性エネルギー』
『ギフはそれを食料としている』
ということが確定する。
冒頭の、用語辞典『悪魔』の定義になる。

ざっくりまとめ

 このように本編での説明はあったのだが……
①"地球外生命体ギフ"と"悪性エネルギーから生まれた怪物"を人間が同じく『悪魔』と呼んでしまっている
②『悪魔』について本編中これだと言うまとめがない
③五十嵐家の悪魔はイレギュラーで『悪魔』じゃない
以上の3点が視聴者の混乱の原因かと思う。

 作中『ギフ』と『悪魔』については色々な見解がみられ、崇拝信仰の対象であり実態不明の研究対象でもあり、そこに人間の感情も入り交じってなかなか真相に辿り着かない。
それはトライ&エラーを繰り返しながら核心に迫り、改善していくこの作品のリアルな部分で良さでもあるのだが、立場によって見方が変わり登場人物の発言が必ずしも真実とは限らない、情報の取捨選択が難しい作品になっている。


■公式インタビューでは

「ギフと呼ばれる存在が宇宙からきた超常生命体だということが判明した段階で、キチンと劇中の呼称を変えるべきだったんです。」
「人間たちは『悪魔』と呼んではいるけどあれは悪魔ではなく『地球外生命体』です、バイス達も悪魔じゃなくてギフの細胞と人間の細胞が融合して生まれた『新種の生物』なんですって言うところをちゃんと提示するべきでした。」

『フィギュア王 №297』P69より
リバイス企画チーム 金子しん一さん

 視聴者からみた混乱の原因についても的確に分析され、何度か各種インタビューであがっている。
 ここで気になるのが、バイス達五十嵐家の悪魔は正確には『悪魔』じゃなくて『新種の生物』だという情報だ。宿主の三兄妹もギフの遺伝子を持つ自分たちが『人間』なのか悩んだし、バイスはベイルに「『悪魔』らしく」と言われ動揺していた。彼らは『悪魔』を自負していたけど、実はカテゴライズできない新しい存在だった。
前項 混乱の原因③にあげたが、この五十嵐家の悪魔はイレギュラーで『悪魔』じゃないという事実も、とても興味深い一方リバイスの『悪魔』を考える上でややこしい部分でもある。

※この記事ではバイス達も便宜上このまま『悪魔』と呼びます。

いらすとやさんの天使と悪魔

「人間の表と裏……要は、マンガなんかでよくある、自分の心の中の天使と悪魔が会話してるイメージ。
「己の中の悪魔ということですね。『リバイス』の世界の悪魔というのは……自分自身の表に出せないなんらかの負の部分。」
「負というより裏の自分に近いですね。」

『仮面ライダーリバイス公式完全読本』
P46・47より望月P

 更に、リバイスの話を理解する上で最も重要なのが上記の解釈だ。
いくつかの媒体でも同様に語られており、公式では自分の中の裏の部分を具現化した存在が『悪魔』という認識で統一されていた。
バイスが一輝に「俺っちはお前」と諭していたように『悪魔』=裏の自分=自分自身という、辞典での定義からさらにもう一歩踏み込んだ、人間にとっての『悪魔』の実体と言える。ここが本作の肝になる。

 『悪魔』が既存のワードで、イメージが固定化されてしまう懸念もあり他の名称候補もあったそうだ。
しかし「悪魔と契約するライダー」というキャッチーさ、アイテムのスタンプを用いて契約・変身するリバイス独自のカラーを優先したことなどから、最終的に悪魔』が採用されたのだと言う。


■わからない存在

 既存のワード……そもそも一般的に言う”悪魔”は生物・種族というより超自然的・霊的な存在で、邪神だったり元は大天使の堕天使だったり。
(悪魔=自分自身と言うと多方面から怒られるのでは?という心配もちょっとあったので、「『悪魔』と呼ばれている存在」という落とし所はややこしいけど妥当だと思う)
その発祥をよく知らなくとも、ツノがあってシッポがあって人間を唆す”悪い奴”……という不思議な共通イメージはあるけど、諸々の問題もあり説明が難しい、恐ろしくてよくわからない存在だ。

いらすとやさんの悪魔

 さて仮面ライダーリバイスの『悪魔』はどういう存在になっていくんだろう?と探っていた放送初期、公式サイトのイントロダクションにてバイスが『言わずと知れた嫌われ者』と表現しているのを見て私は非常に興味深くなり、とてもワクワクした。

『悪魔。言わずと知れた嫌われ者だけど、人間なら誰しも体の中に悪魔がいるって知ってた?』

『仮面ライダーリバイス』公式サイト イントロダクション

 人々がギフや悪性エネルギーから生まれた怪物を『悪魔』と呼んだように、人が何かを『悪魔』と呼ぶとき、その対象は自分が理解できない・したくない脅威、恐れ忌み嫌い、拒絶すべきものである。
そんな嫌われ者が相棒になって戦うなんてメチャメチャ面白い!しかも悪人だけでなく誰でも心に『悪魔』は内在する。
彼ら(=認めたくない裏の自分)に向き合い理解し受け入れて、コントロールする事で登場人物が成長して行くストーリーだとしたら、きっと見応えのあるドラマになる。

 期待した通り、シンプルな正義と悪、光と闇、巨悪を倒してめでたしめでたし・・と言う話ではなく(そういう話も好きだけど)、仮面ライダーリバイスは一年通して自分や他者の苦しみ・弱さに気付く物語で、最終的な、本当のラスボスはいつも自分自身だった。
 OP曲『liveDevil』でも「真に戦うべきものは何?」と問い続けてきたが、大二がカゲロウを必要としたように、外敵であるギフを排除してもジュウガ戦(狩崎自身の戦い)が待っていたように、最後の最後にバイスが一輝と対峙したように、自分や他者の中には置かれた環境の中で人知れず育った裏の自分があり、それに目を向けず糾弾するだけでは蟠りは永遠に終わらない。

 などと綺麗事を言うのは易しだけど、人には感情も事情もあるので実際はぜんぜん簡単ではない。
その中で受け入れ許し守ったり、見捨てず向き合ったり、素直に吐き出したり、助けを必要としたりつらい時ほど笑ってみたり、攻撃し打ち倒すよりもある種難しい戦いの中で彼らは生き抜いた。
だからこそ、一年間各々苦しみを経て最終回で見せた晴れやかな表情とそれぞれが得た居場所には、大きな意味や成長が感じられる。


■さよならと共存

「あいつら悪魔は素直じゃないし、きっと…悪魔でもないんだ。」
「…悪魔でもない?」
「うん。自分の…分身?自分自身なんだ。」

『リバイスForward 仮面ライダーライブ&エビル&デモンズ』より一輝と大二の会話

 相棒との今までを通して五十嵐一輝は定義を超えた『悪魔』の実体にたどり着く。弟の五十嵐大二もその長く険しい道筋が報われ、自他を受け入れて、誰かに必要とされてではなく今度こそ自身の手で、自分と多くの人たちの居場所を作った。
 兄弟どちらも前進できたが、『悪魔』との関係性、本作中のゴールは違うものになっている。

「俺たちの悪魔もいつか消えてしまうのかな…」
「でも……悪魔との別れは悲しいことじゃないんだよね。」
「ああ。自分が成長するためには必要なことだ。」
「大ちゃんとカゲちゃんって終身契約じゃないの?」
「ハハ…やめろよ。もう成長しないってことじゃん。」

50話『あくまで家族、いつかまた会う日まで』より
大二とさくらの台詞

 無二の理解者であるバイスの消滅を迎えようとする兄を見守りながら、大二とさくらは『悪魔』との別れはその人の成長のためには必要と話していた。
ここで言う『悪魔』との別れは、バイスタンプで実体化し倒したり抜き取ったりして強制的に排除した時とは異なり、悪性エネルギーを自力で昇華した状態と言える。

 しかし「相当捻くれた奴」なら『悪魔』を再度生む事もあるらしい(Vシネよりカゲロウ談)し魔が差したり、命に危険が及ぶほどの事があればまた出てくるかもしれない。人生の中で大きな出来事があるのが前提として、『悪魔』とのさよならと共存は何度か繰り返される可能性がある。
 真相は定かではない(根拠はリバイスファイナルステージにある)が、バイスカゲロウやデストリーム戦後のベイルのように、宿主が生きている限り彼らは記憶の海・深層心理に潜んで見守っており、やはり完全に消えてしまう事はないのではないだろうか。

「悪魔として出てくる負の部分が悪いとは限らないんじゃないか、むしろ悪い部分と向き合うことでバランスが取れるんじゃないかと。
あなたの悪いところは否定するのではなくて肯定しようね、といったメッセージを込めて書いています。」

てれびくんデラックス愛蔵版
『仮面ライダーリバイス超全集』より 脚本家木下半太さん

 この作品では、バイスたちを通して嫌われ者の『悪魔』を否定しなくていいと伝え続けた。
弱かったり狡かったり汚い部分は誰しもあって、嫌になったり隠したり、目をそらしたくもなる。でも自分や人の中の『悪魔』に良い意味で優しく適当に、付き合おうとしてみれば今よりほんのちょっとだけゆるく、生きやすくなるかもしれない。
 自分の『悪魔』が見えた時、自分次第で成長できるチャンスにもなる。

悪魔は僕らの敵じゃなくて もうワンランク上へ連れてく相棒

『Love yourself』#ナイスファミリバ
作詞 藤林聖子 さん

 上はリバイスファイナルステージで発表され、VシネのED曲にもなった、メインキャストによるキャラソン歌い出しの歌詞だ。
リバイスで伝えてきた一年間のメッセージを総括した歌詞になっているので、いつか聴いてみてほしい。


  

■おわりに

 ひとりで論争してきましたが、リバイスの『悪魔』について言いたいことがなんとなくわかっていただけただろうか。
(『悪魔』と宿主の関係性やライダーシステム・ベルトの特性・悪魔獣とギフ〇〇等については先人がまとめてくださっていたので今回割愛しました。)

 偏った見方で行き届いてない部分や見逃しもあったり、五十嵐家の『悪魔』たちが大好きすぎるし、結局リバイスめちゃくちゃ面白いという主旨になってしまったので、自分はこう思う…とかもっと上手く説明できるぞという方もしいらっしゃいましたら、どこかでお手柔らかに、お話していただけたらメチャメチャ助かります。
ここまで読んでくださりありがとうございました!
 


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