卒業式

暖かな春の日差しが、春の訪れを告げ、新しい季節を感じられるようになりました。自らの手で夢を掴み取り、未だ見たことのない景色を見るため、僕たちは、風俗童貞を、卒業しました。


私の卒業式が行われた横浜市日ノ出町は、名は体を表すかのように明るく、活気のある街でした。

屋形船が浮かぶ大岡川の横には数々の屋台が立ち並び、まるで僕の心の高揚を示すかのようです。

そんな大岡川の屋台から程近くにある卒業式の会場は、先ほどの街並みとは一転して静かな雰囲気が漂っていました。

入場し、待合椅子に案内され、スタッフからの呼び出しを待っている間の静寂と緊張感、それはまるで卒業証書授与で名前を呼ばれる前かの様でした。

遂に名前を呼ばれ、階段を上り、部屋の前に着くと、程なくして内側から扉が開かれました。ドアの隙間から覗く細く白い腕はこれからの式典の数々を想像させうるに足りる魅力を放っており、えも言われぬ高揚感が全身を駆け巡りました。

待ち望んだ対面。そこに立っていた女性は、大人の妖艶さと女性特有の無邪気さを纏った笑みで私を迎え入れてくれました。ハーフのような高くはっきりとした鼻筋、優しさと芯を感じる目、程よく薄い唇と、写真とは異なるものの僕の心を動かすには十分すぎる容姿の彼女は私を部屋へと案内し、遂に待ち望んだ式典が始まりました。

部屋は薄暗く、ベッドや浴槽の文句が聞こえるような狭さで、小さな頃に遊んだ秘密基地の様でした。言い換えるのであれば体育館の放送室かのようだと言って良いかもしれません。

努めて明るく接しながらも緊張する私と歩幅を合わせ、丁寧に、しかし手際よく服を脱がせる手際には、舌を巻くものがありました。

されるがままに体を清められ、刻一刻と卒業の瞬間へのカウントダウンが進む中、私の脳内に一つの心配がよぎります。それは、私が卒業に足りうる資質を持っているのかと言うことです。この緊張した精神状態の最中、私の賞状筒が卒業し得るだけの状態に到達できる自信がなかったのです。

しかし彼女はそんな私の緊張と心配など意にも介さないかの様子で、狭い浴槽で肌を寄せ合う中おもむろに私の腰を持ち上げ、私のそれを味わい始めます。私の全身に快感が広がる一方で、それでも依然変化が訪れないことに焦りを感じていると、彼女の長く魅惑的な舌は一層執拗に私の賞状筒を嬲り始めます。身体に走る痺れはより強烈になり、終わらない快感の洪水を浴び続けていると、自然と私の賞状筒は本来の黒さと硬さを取り戻し、卒業に足り得るだけの準備が整いました。

聖なる儀式のための清めが済んだ私たちは床へと移動し、遂に待ち望んだ卒業証書授与へと歩を進めます。

ベッドに横たわり、むしろ心よい彼女の体重を感じながら卒業証書授与が始まりました。
この式典のメインディッシュが始まるや否や、今日一番の快感が私の筒を伝い、彼女と私を隔てる距離が0.02ミリになったのだと知ることになります。全ての脳信号が快感で塗りつぶされる中、言葉にならない嬌声を抑える術はもう残されていませんでした。
画面の中でしか拝めないはずの肢体を目と手のひらで味わい尽くす私を、まるでおもちゃに喜ぶ子供を見るかの様な微笑みで見つめる彼女に、私の賞状筒は益々主張を強めるのです。

止まることの無い快感の波に溺れ、その波が一層強くなったある時、その瞬間は訪れます。私の賞状筒から、卒業証書とも呼ぶべき白く淡い液体が漏れ出したのです。果てた瞬間全ての欲望から解放され、痺れが残る身体にはもう証書はかけらも残されていませんでした。

こうして私は無事に卒業証書授与を終え、風俗童貞を卒業するに至ったのです。
外に出て目に映った夕方の日ノ出町は、何故かさっきより明るく見えた気がしました。

おわり。

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