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【呼吸器内科ローテ前必読!】初期研修医が知っておくべき常識と必読書

■はじめに

 はじめまして!島根大学病院医学教育センターの長尾大志といいます。前職は滋賀医科大学呼吸器内科で、前の職場にいた時に書いた『レジデントのためのやさしイイ呼吸器教室』や『レジデントのための胸部画像教室』は、こちらでもご紹介いただいたりしています。ひょっとしたら、ご覧になった方もおられるかもしれませんね。最初に結論を述べてしまいますと、やっぱりあれらはイイ本だと思います…。
 私が医師になったのは27年前の1993年です。当時は今と違って、卒業したらまずどこかに入局を決め、その時点でキャリアのスペシャリティを決めてしまうことが一般的でした。 私が呼吸器内科を選んだのは、祇園でしゃぶしゃぶを食べたから…ではなくて、内科の中でも<上気道炎などのプライマリケアから感染症、喘息などのアレルギー、間質性肺炎・膠原病などの自己免疫疾患、肺線維症などの変性疾患、過敏性肺炎やCOPDなど吸入物質による疾患、それに肺がんの化学療法や緩和ケアなど>あらゆる病因・さまざまな分野の疾患を取り扱うことができると思ったからです。
 また、臨床実習で回ったときに、医局に臨床熱心な先生方が多かった、ということもありました。学生の当時はなんでも診られるようになりたかったので、今であれば総合診療を選んでいたかもしれません。それでもやはり、呼吸器内科は奥が深く、今でも選んだことには間違いがなかったと感じています。


■これを事前に押さえておくとローテーションやコンサルトが楽になる、呼吸器内科の常識

 さて、そんな私の初期研修はいきなり呼吸器内科から始まりました。呼吸器内科の特徴としては、上でも書いたように色々なジャンルの疾患を取り扱う科ですので(私は大人の小児科とか専門を持った総合診療科という位置づけをしています)、臨床が好きな先生が多いかなと思います。ということは裏を返すと、勉強する事は割と多いわけでそこで心折れてしまう…ということがあるかもしれません。例えば感染症を学ぶということは、抗菌薬の名前もたくさん覚えなくてはなりませんし、アレルギーや自己免疫疾患を取り扱うということは、ステロイド製剤の使い方に習熟しておく必要があります。
 コンサルトを受ける時に気になるのも、やはり基本をきちんとしてもらっているかということです。肺炎の診療に、喀痰をきちんと採ってグラム染色を見ておく、抗菌薬の使い方はきちんとしているか、そういったことがまず気になります。ですから基本事項をしっかりと身につけておくことが大事でしょう。とはいえ、そんな中でも指導医・上級医が興味のある分野・専門分野というものがあることが多いものです。
 ですから、これから回る部署の「得意な領域」を知っておくとカンファレンスの時など突っ込まれポイントが予想出来て役に立つことでしょう。大学であれば、そこの教授をはじめ主だった先生方が、どんな分野で論文を書いているか、どんな疾患を主に取り扱っているかということは、ホームページなどを見ると書いてあるものです。大雑把な概要だけでもいいので知っておくといいでしょう。大学に限らず市中病院でも、よくあるパターンとして肺癌、間質性肺炎、COPD、喘息、などは研究者も多く、興味を持たれている指導医も多いものです。
 肺癌好きな指導医であれば、TNM分類、患者さんのPS、抗癌剤の種類とその主な副作用、RECISTなどを抑えておくとイイでしょう。

オススメ:日本肺癌学会の肺癌診療ガイドラインが公開されていますので、その都度参照しましょう。

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