【空を行く】セレスティアル航空がきたぞー【千葉急行バス!?】

大変です。急展開です。
 4月中は本当に何の動きもなく、千葉急行バスの運行観測も行われた形跡もなく、内小間子バス停の去就も不明という状況だったのが。

「福井空港からTDRまでヘリで84分」

 4月27日に福井県主催で開催された「福井空港小型航空機活用推進大会」において、東京都中央区に所在する「セレスティアル航空」という会社が発表したという内容が、複数の報道機関で報じられている。

 ひとまず大手メディアとしてNHK日経新聞、地元メディアとして北國新聞(※記事の閲覧には有料会員登録が必要)、福井テレビと4社の記事リンクを貼らせていただく。
 これがなんとも華々しい、華々しすぎて香ばしさにまで及ぶ内容となっているようだ。

福井空港の置かれる状況

 まずはじめに、活用推進の対象となっている福井空港のことを説明したい。
 福井空港は1966年に開港した、坂井市春江町江留中50-1-2(開港当時は坂井郡春江町)に所在する地方管理空港。鉄道の最寄り駅は北陸本線春江駅、次いでえちぜん鉄道三国芦原線西春江ハートピア駅で、両路線に挟まれる形でほぼ南北に滑走路を伸ばしている。なお空港ターミナルビルが西側にあるため、直線距離では春江駅の方が近いのだがアクセスとしては西春江ハートピア駅の方が道のりは短い。徒歩ではそれぞれ25分20分となっている。高速道路では北陸道丸岡ICが最も近く、目算およそ15分ほどで到達できるであろう位置づけである。バスは京福バス春江郵便局停留所から徒歩15分というのが最も近いとのこと。かつては直接乗り入れていたようだが、福井空港バス停は2010年9月までで廃止されてしまったそうだ。
 県都福井からもさほどの距離ではなく、アクセスさえ整えれば十分活用できそうな立地に見えるが、そのアクセスが機能しなくなっている。なぜか。
 というのも、福井県内の位置としてはかなり北にあり、隣県石川県の小松空港と距離があまり離れていないとあって、北陸地方の空港としては存在感が低く、1976年以来、実に46年にわたって定期航路が存在しないという、皮肉な「エア・ポート」なのである。開港後10年しか定期便が就航していない小松空港は拡張されジェット機も離着陸できるようになったが、その影響も大きく福井空港は完全に取り残された状態だ。
 そんな状況を打開しようと福井県は幾度もテコ入れを試みたが、滑走路拡張は付近住民に強く反対され、北陸新幹線の開通も見え始め、県としても「使える方が使って下されば」みたいな姿勢になって小ぢんまりと存在するという現状に至ったというところらしい。

ジェット化はできなかったが、ヘリなら

 そんな福井空港だが、グライダーの離着陸はあるとのことで、正直雀の涙レベルであろうが利用実績はあるらしい。
 だがさすがに県内唯一の空港が雀の涙ではよろしくない
 そんなところへ降って湧いたのが今回のセレスティアル航空の「就航」である。
 同社によると定期航路というよりはチャーター便の発展型といったもののようだが、冒頭に記した「福井~TDR(東京ディズニーリゾート)直通便のほか、大阪USJや県内勝山市にある恐竜博物館への運航を計画、まずは1日8便を就航させるとし、その後は神戸、茨城、北海道、沖縄小型機での運航を拡大していくというビジョンを提示したという。
 また魅力はその運賃で、あくまで「搭乗人数により変動がある」というものの、TDRまで定員6人で22000円ほどというから驚きだ。しかも84分で到着、JR特急サンダーバードで福井駅から大阪にたどり着く時間の半分程度である。え、すごすぎん。

5月1日予約開始!ってなってるけども

 さてここからが大変
 予告された予約開始日の5月1日、「いっちょ使ってみようじゃないの」と思った人が同社のHPへアクセスしてみると、
パスワードを要求された】
……らしい。
 で、当日サイトに入れた人の報告では「もう一杯だから受け付けてないよ」みたいなことになっていたとのこと。

 当然航空マニアのみなさんも興味を持つわけですが、「えーと、そんな航空会社あったかな……」という談話が出ているとのこと。
 千葉急行バスでも真っ先に突っ込まれたように、「じゃあ国土交通省ではこの会社のことをどう把握してるのかな?」と調べたところ、今年令和4年1月14日付けの「東京・大阪航空局管轄の航空運送事業者・航空機使用事業者一覧」という表には「セレスティアル航空」という名前がない。この時点で「お? 千葉急行バス案件か?」という話になってくる。
 福井空港での取材を受け付けていたらしいが、報道で紹介されたのは別会社の機体だった、とか。
 じゃあ御社はどんな機体をお持ちなんですかと識者が調べると、「国交省のデータベースには登録がない」。でも同社が所有機ですと紹介している内容には「日本に存在しない機種」もあるらしい。

 多分、ここからちくちくとリンクを辿ると「???」ってなれる
 リンク先がところどころ「404 not found」になってたりする。
無料のブログサイトを利用しているとかなんとか。。。

84分、どこを通るの?

落ち着いて考えてみよう。
福井からUSJなら、まあそんなに時間をかけずに到達できるだろうとは容易に想像できる。
 だが、福井と(千葉県だけど)東京である。
直線的に結ぶと、その間には「日本の屋根」とも謳われるアルプスの山々。挟まるのは岐阜県、長野県、山梨県。距離としても東京~名古屋より離れている
 ヘリコプター……でなかったとしても、小型機でもそれらを越えて1時間24分で到達できるものなのか? 相当な高度を飛ぶことになるが、気圧や酸素濃度の問題はどうなるんじゃ?
 こういうような疑問が実際に噴出しているのである。

え、存在してるの?

 そうなると実在を疑う、まさに千葉急行バスと同様の疑問が起こってくるのは自然な流れだが、その答えはこちら経済産業省の法人データベース。法人としては「間違いなく存在する」らしい。少なくとも2021年7月15日以降は(出典元情報参照)。
 この辺は千葉急行バスとは異なり「法人として存在している」のは確実らしい。千葉急行バスは、バス停数か所が確認されただけで「警察が確認している」以外の実在性が全くの不透明。このねじれが何とも趣深い

実現性の面では……?

 前述したとおり、「ヘリで84分、福井空港からTDR」というのは正直疑問でしかない。せめてUSJならまだそれができそうな気もするが、「どこに降ろすの」という点もあり、「え、これ大丈夫なの」と思わざるを得ない。
 そもそもが、恐竜博物館ではヘリポートの設置工事だとかそういうことも行われていないという話。
 なんだろう、この。

その面で言えば千葉急行バスは停留所が区間の半分程度しか明らかになっていないものの、需要や運行時間の問題がどうしたって存在するものの、想定ルート上の停留所を順番にたどって走行すること自体は何ら問題にならない。ただ無許可で運賃を収受してしまうと違法になる(これを俗に言えば「白タク行為」とはなるのだが)くらいで、道交法上の違反さえ行わなければ(主に運行時間中の路線バスの停留所は周囲5mの範囲での駐停車禁止、信号や車線、速度、歩行者保護……そのくらい?)、その経路で車両を走行させることには憲法でも保障されるような自由な行動である。

 対してこのセレスティアル航空は、どうなんだろう。
福井県が主催する会合での発表とあって、報道でも割と大きく取り上げられている。規模で見ても千葉急行バスの比ではない。ネットミームで済むレベルの状況ではない

たとえばのはなし。

 これから、各種許認可や登録を行って、実際に運航してゆくというなら、このエントリも一種の誹謗中傷のような扱いになって、最悪訴訟も辞さないレベルの非難を受けることになりかねない。
 だが、この件を現状確認できる範囲で見るならば、「えらい大風呂敷だなこれは……」としか思えないのである。
 だって、同社のサイトを見ると「こういう実績がありますっていう広報を行ってるんですよ。登録状況が一切確認できないのに
いろいろほじくるとどうにも傾げた首が元に戻せない情報が他にもゴロゴロあるらしい。社長が新電力やってるだとかって? どこまで本当か分からない

公開情報をもとに。

本社住所を見ると、都営浅草線宝町駅A2出口から徒歩5~6分程度のオフィス街のビルが出てくる。首都高都心環状線にほど近く、東京メトロ日比谷線・JR京葉線八丁堀駅からだとA3出口からおよそ徒歩7~8分くらいだろうか。5階建てで、1フロア1テナントの作りであることまではわかった。航空会社が入居しているような雰囲気は微塵も見られない。これはストリートビューの撮影時期が2021年3月なので、「まだそこにない」だけの可能性もあるにはある。

顛末はまた今後の話……になるのか?

 他にも、登記がどうなっているのかとか、そういう面でも確認する人が出てくるかもしれない。情報をつぶさに当たれる人の報告を、従来通り待つことにしたいと思う。
 ちょっと話も大きくなっているので、まとめを待つ方が実際的かもしれない。

参考:国際信州学院大学鉄道研究会様


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