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CLEの打撃不振を深掘りする

 これまで全然更新していなかったnoteをTDLを機に立て続けに書く事ができました。良かったのかどうか分かりませんが、個人的にはかなり気になっていたのでスッキリした部分があります。

 下書きをいろいろ書き溜めてはいたものの、リリースできなかったせいで賞味期限切れになったものがかなりあるのですが、その中で期限が切れていないものがCLE打撃陣の不振に関するこの記事です。

 2013年の就任以降、在任機会が長くなった事もありますが、かつてなく逆風の吹くフランコーナ体制ですが、監督の采配のみならず、もっと根本的な問題が横たわっていると思います。その点について少し深掘りしたいと思います。

CLEの打撃戦略

 現在TDLを受けて絶賛クラブハウス崩壊の危機に直面しているCLEですが、フランコーナ監督のあるインタビューが物議を醸しています。

説明すると、5点ビハインド、最終回、無死満塁の場面で打撃不調のM. ストローに代わり打撃好調なT. フリーマンやD. フライ、長打を期待できるO. ゴンザレスをなぜ代打に送らなかったのか?という記者(The AthleticのZ. マイセル記者)の質問に

「ホームランではなく、ベースランナーが必要だ」

と答えたという事です。確かに仮に代打がホームランを打っても1点差までしかならないのでもう1人ランナーが必要だ、という事なのかもしれませんが、兎にも角にも点が入らなければ意味はない訳で、しかも打撃が期待できないストロー送っても意味ないだろ、と総ツッコミでした(案の定ストローは三振、その後のクワンの犠牲フライで1点返しただけに終わりました)。

 今の打撃不振を取り上げるに当り、2021シーズンに遡りたいと思います。このシーズン、我らがクリーブランド・インディアンス(当時)は、被ノーヒッターの年間記録を更新する程の歴史的な貧打に喘ぎます。その為オフシーズンにそれまで9年間打撃コーチを務めた、T. バンバークレオ(90年代に西武でプレーしたバークレオ)を解任し、代わりにシカゴ・カブスでコーチを務めたC. バライカを新たな打撃コーチとして雇います。


 そして迎えた2022年、クリーブランド・ガーディアンズに改名した初年に新たな打撃戦略で新たなシーズンに臨みました。

記事を要約すると大別していわゆるスモールベースボールというヤツで、三振が少なくコンタクトスキルに優れた打者を揃え、塁に出て盗塁してプレッシャーを投手に与える事により得点を狙う戦略です。確かにCLEは近年、コンタクトスキルに優れる選手をドラフトで獲得・育成してきましたから、長所を活かす戦略と言えるかもしれません。

 そうした戦略と対極にあるNYYにALDSで結局敗れてシーズン終了した為にSNS中心に多少の議論が起きたものの、総じて高い評価だったと思います。結果、フランコーナはALの年間最優秀監督を、フロントはALの年間最優秀エグゼクティブを受賞しました。

 自分が最初にこの記事を読んだ際、ど素人ながら

「本当に三振しないだけで打撃陣が良くなる(攻撃が良くなる)のだろうか?」

と疑問に思いました。そして考えた結果、

①全員が高い打率・出塁率になった場合

②高いレベルでクラッチ(いわゆる勝負強い状態)になった場合

この2つのどちらかでない限り、難しいのではないか、という結論になりました。①はチャンスが多ければ繋がる可能性は高まりますし、②はチャンスで打てれば得点が増えるからです。

STATSは物語る

 ではここで昨年のチームスタッツを見てみましょう。

2022シーズン

打率  .254(7位)
出塁率 .316(13位)
四死球率 7.3%(28位)
三振率 18.2%(30位)
安打数 1410(6位)
得点数 698(15位)
HR数 127(29位)
盗塁数 119(3位)
OPS     .699(16位)
wRAA  −19.5(18位)
BABIP  .294(13位)
wRC+   99(16位)
Clutch  2.93(2位)

RISP(ランナーがいる場合)
(こちらは四死球と三振が数ですが、計算面倒なのでご容赦下さい)

打率  .259(11位)
出塁率 .336(12位)
四死球数 167(9位)
三振数 298(26位)
安打数 373(3位)
得点数 571(3位)
HR数 46(9位)
盗塁数 33(7位)
OPS     .753(15位)

セイバーは苦手なのですが、見事な結果となりました。まさに先の記事の通り塁に出て、盗塁でプレッシャーを与えて得点していました()。そしてランナーがいる時といない時のHR数の順位で分かるように、非常にClutchだった事が分かります(ちなみに2022年のClutch1位はCHWでした、よく逃げ切りましたね)。つまり昨年のCLEは先述の自分の仮定の②に当てはまったと言えると思います。

 では今年のスタッツを見てみます。

2023シーズン

打率  .254(7位)
出塁打率  .251(15位)
出塁率 .314(20位)
四死球率 7.8%(25位)
三振率 18.4%(30位)
安打数 934(14位)
得点数 446(26位)
HR数 82(30位)
盗塁数 87(8位)
OPS     .696(25位)
wRAA  −50.8(25位)
BABIP  .293(19位)
wRC+   92(23位)
Clutch  1.21(8位)

RISP

打率  .233(15位)
出塁率 .330(20位)
四死球数 117(8位)
三振数 204(24位)
安打数 233(16位)
得点数 346(17位)
HR数 20(27位)
盗塁数 26(16位)
OPS     .716(24位)

少し意外な部分もありましたが、なかなか興味深い結果になりました。昨シーズンと比べて数値は劇的に悪化はしていませんが、MLB全体が打高投低の傾向なので、相対的に順位が下がっています。そして(思ったよりはマシでしたが)やはり盗塁数が減っている事、そして一番の違いは得点が減少しています。実際見事にRISPでの指標が軒並み下がっていて、Clutchの順位も下がっています。

 今季のMLBの大きな変更点の一つは守備シフトの制限であり、それが先述の打高投低の傾向の主な要因だと思いますが、本来ならCLEが一番その恩恵を被ってもおかしくないのに、むしろ悪化している事に問題が見え隠れしているように感じます。

何が問題なのか

 これは5月の記事ですが、従来自分が感じてきた事を見事に文章にしてくれました。

要約すると、

「三振しない事は三振より良いけど、それで攻撃力が高まる訳じゃないよ」

という事です()。なぜなら三振の数と他の打撃STATSには殆どの場合、相関関係がないからです。そしてハードヒット率(HB%)やバレルが良くない結果、三振しなくても凡打に終わる可能性が高い事を指摘しています。

 この記事が書かれたのは5月上旬、CLEのBABIPがかなり悪く(.270)、案の定調子が一番悪い時でした。4点以上点が入らず、なかなか勝てない日が続きました。それ以降BABIPも昨年同様平均値(.300)並に落ち着いてきて、今の姿が実際の実力という事でしょうか。昨年はwRC+が99で平均(100)より少しだけ劣る打撃だったのが、今年は92と、それより悪化している事がSTATSから分かります。

 今のSTATSを調べると更にこの記事の信憑性が高まりました。5月より更にHB%やバレルが悪化しているヒメネスやブレナンが低迷する一方、昇格したD. フライはHB%やバレルが高く、活躍も納得です。DFAされたM. ズニーノは案の定両方の数値がかなり悪化していました。アリアスがHB%がチームで一番高いですが、彼の場合、やはり三振率の高さがネックでしょう。一方、両方の数値があまり高くなく、変化もあまりないJ. ラミレスやS. クワンが打撃が堅実なのは、三振率の異常な低さにあると思います。

ちなみにトレードされたA. ロサリオ、J. ベルは5月とそんなに変わってはいませんでした。ロサリオは対右投手を苦手にした事が悪かったのかもしれませんが、ベルの場合はちょっと分かりません。「何が原因か分からないけど生産的にならなかった」というフロントの説明は

そして何と言っても注目すべきはJ. ネイラーです。この記事でも、The Athleticの J. ボウデンの記事でもJ. ネイラーは調子を上げてくるかもしれないと書いてあり、当時は「ホンマかいな」とかなり疑っていたのですが、それからみるみる調子を上げてCLE打撃陣の救世主になりました。見事なまでにHB%、バレル共に良くなっています。セイバー凄い😳😳😳腹斜筋のダメージでIL入りしたのが本当に恨めしい限りです。

打撃コーチへのインタビューから見えてくるもの

 6月ですが、バライカ打撃コーチのメディアとの質疑応答をThe AthleticのZ. マイセル記者が記事にしています。

個々の選手にフォーカスした質問が多いですが、チーム全体に関する内容をかいつまんで要約すると

・一貫性が大事

・プレッシャーかけ過ぎ

・むやみやたらにファーストピッチから振ってる訳ではなく、攻撃的であると同時に賢くあって、カウントの早い段階でダメージを与えていわゆる打者有利なカウントになるよう指導している(初球は必ず見逃していたクワンにもファーストピッチからスイングするよう指導したみたいです)

・シフトは制限されたものの、相手チームの守備戦略にかなりやられている

・若いチームなのでまだまだ調整が必要だし、パワーをつけるのには忍耐が必要

 あまり内容がなくてまとめにくかったのですが()、興味深いのは、別に単打を打てと言っている訳ではなく、長打を望んでいると述べている点です。なるほど、ではなぜ一向に増えないんでしょうか。

 たらればの話をしても仕方ありませんが、個人的には昨オフにJD. マルティネスか、J. ターナーを獲得すべきだったと思います。二人ともデビュー当初は苦労したものの、卓越した打撃理論でスターに登り詰めたからです。恐らく前者はポジションゆえに、後者は年齢故に補強リストから外されたと推測しますが、どうでしょうか?何にせよ、今のコーチ陣が長打を指導する能力に欠けているなら、どこかしら外部から入れてくる必要があると思うんですけどね。

終わりに

 セイバーが苦手な自分には珍しくセイバーっぽい内容になり、自己満足しておりますが、どこまでご納得頂けるか…😅

 エンゼルスなどの陰に隠れていますが、CLEもTDL後1勝しかできず、野球以外の話題で盛り上がってしまい、PS進出オッズは絶賛下降中です😭

 TDLを挟んで幾つか記事を投稿しましたが、個人的事情などにより当分は生暖かく行方を見守りたいと思います。最後に

頑張れ、ガーディアンズ‼️

#ForTheLand

(Photo by Michael Starghill/MLB Photos via Getty Images)

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