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T. バウアーについてあれこれ

 気づけば今年も暮れの暮れになりましたが、MLBはテキサス・レンジャーズが球団史上初めてチャンピオンとなり、NPBは阪神タイガースが38年ぶりに日本一となりました、各球団ファンの皆様お疲れ様でした。いろいろアップしたいと思いながら記事をアップできずに年を越そうとしておりますが、今年中に一つはアップしたいと思い、唯一アップできそうなこの記事をアップしたいと思います。

はじめに


 この記事の原案は今年1月にバウアーがロサンゼルス・ドジャースからリリースされた時に原案を書き上げていました。ただ内容的に(特に当時は)非常に可燃性の高い内容の為、当方の様な泡沫アカウントでも躊躇してお蔵入りになっていたものです。

 その後バウアーのNPBでの活躍により日本のみならずある程度議論できる環境になったかと思いましたが、かなりの加筆・修正が必要になりましたので、アップに時間がかかってしまいました。

バウアーと例の一件についての所感

 バウアーについては説明するまでもないかと思うので()、一応WIKIを参照します。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/トレバー・バウアー 

球界屈指の理論派にして球界屈指の問題児、CLE在籍時にもいろいろなトラブルを起こしてくれました(遠い目)。

 そして2021年、性行為中の女性への暴力で訴えられたバウアーは制限リスト入り、そして訴えが裁判所で退けられたにも関わらず翌2022年にMLBのDV(ドメスティック・バイオレンス)規定に違反したとして2年間の出場停止処分が課されました。しかし異議申し立ての結果処分が軽減されて今シーズン開幕からの出場が可能になり、彼をロースター入りさせなければならなくなった所属先のロサンゼルス・ドジャース(以下LAD)が以下のステートメント(声明)と共にDFA(いわゆる戦力外)を決めたのが1/6(日本時間 1/7朝)でした(1/12にリリース)。

DVは許されざる行為ですが相手女性の訴えも退けられています(後述しますがその後和解・終結)、この件自体の是非に関してはノーコメントです。その上でこの件に関しての個人的所感は

①処分の重さ

 薬物規定と違い量刑が定まっていないDV規定ですが、バウアーに下されたのは2シーズン出場停止(既に数十試合制限リスト入りしていたにも拘らず、その分を除いて)。今年SBに加入したR. オスーナや現在KBOでプレーするA. ラッセル、前NYYのクローザー、チャップマンなどもDV規定に違反しましたがほぼ100試合以下、バウアー以外で100試合超だったS. ダイソン(元SF、TEX)は長期間のDV、中絶強要までしたのに、それでも1シーズンの出場停止でした。DVは非常にセンシティブであり、薬物と違い一概に測りにくい部分はありますが、他のケースと比較する限りバウアーへの処分は特異と言わざるを得ません(先述の通り制限リスト分を含めて軽減されましたが、それでも過去最長です)。 

 常日頃からMLB、特にコミッショナーのR. マンブレッドに盾ついてきたバウアーにここぞとばかり意趣返しをした、と思われるのも無理ないかと思います。

②LAD( の対応

 問題が表面化して以降、当時の所属先のLADはバウアーが無罪を主張しているにも拘らず、一切庇う事なく対応してきました。報道では多くのチームメイトがバウアーの復帰を望んでいなかったとの事です。

程度は違うもののかつてDV規定違反したF. ウリアス(今季またDVが発覚し、制限リストにはいったままFA)がそれ以後もチームに留まっていた事を考えれば、LADのステートメントにどれだけの説得力があるのか、個人的には疑問視せざるを得ません。ただ信頼関係がここまで破壊されていては復帰の可能性はほぼ皆無だったのではないでしょうか。DFA前にバウアーと一度会談したのも単なるアリバイ作りだったとしか思えません。本気でバウアーが謝罪する可能性があると思ったのでしょうか。

その後の会見でフロントトップのフリードマンは決断は正しかったとコメントしていますが、今シーズン先発が怪我やら何やらでどんどん離脱して、結局ポストシーズン早期敗退したのは皮肉な話です。

その後のバウアー

 クレームされずにリリースされた結果、バウアーの2023年の年俸(出場停止期間との兼ね合いで、既に支払われていた制限リスト入り分が差し引かれた2250万ドル)はLADが支払い、バウアーがMLBでプレーした場合、新チームはメジャー最低年俸(72万ドル)でバウアーを獲得する事ができましたが結局MLBのどのチームも彼を獲得する事はありませんでした。

 その後かねてより親日家としても有名だったバウアーがNPBでもプレーするのでは?と噂されるようになり、かねてからコネクションのあった横浜DeNAベイスターズが獲得する事になりました。

先述の年俸規定はNPBでは当てはまりませんが、現役の、しかも全盛期のCY賞投手の契約としてはインセンティブ含めても格安と言えるのではないでしょうか。

 その後の活躍については皆さんも良くご存知の通りです。当初は苦労したものの徐々に本領発揮、オールスターにも選ばれました。シーズン終盤怪我で離脱してしまい、CSではメンバー入りしたものの登板機会のないまま終戦したのは残念でしたが、彼の活躍は個人的には嬉しかったです。

バウアーの来季

 シーズン終了後いろいろな噂が飛び交う中、彼の代理人であるR. ルーバはMLBの複数球団と交渉中であると明かし、MLB復帰の可能性が取り沙汰されました。

しかしその後進展は見られず、先日の説明ではベイスターズとも交渉中だという事です

 個人的には彼のMLB復帰は非常に難しいと思います。日本語記事はきえてしまいましたが、彼がLADからリリースされた当時のMLB公式の記事では

ひょっとすると、バウアーはメジャーリーガーとしての最終登板をすでに終えてしまっているのかもしれない。

MLB公式より

との一文があったのは非常に重みがあると言えます。実際USAトゥデイのB. ナイチンゲール氏は彼がアンタッチャブルな存在になっていると伝えています。

 先に引用したTrade Rumorsのバウアーがリリースされた記事にある各球団の反応を見ていると、SFとの契約終了後引き取り手が見つからずに実質引退したバリー・ボンズのケースを思い出しました。ボンズもバウアー同様に能力の高さとは裏腹に物議を醸す事の多い選手でした。今回問題になったスキャンダルのみならず、今後起こりうるリスクを考えると、ボンズ以上に各チームが二の足を踏むのは無理もないと思います(15年前の世相と比べれば尚更でしょう)。

 もし彼が今後MLBに復帰するとしたら、

①前田健太がLADとしたような、非常に不利な条件での契約(チームにとってノーリスク・ハイリターンな)を受け入れる

②MLBが無視できない様な、成果なり、メソッドを打ち立てる

これ位しかないんじゃないでしょうか。少なくとも今オフにMLB復帰はないと思います。

バウアーのCLE復帰は?

 バウアーの経歴を振り返るとMLBデビューしたARIでは捕手などと衝突して即トレード、LADも加入年にクラブハウスで反感を買って結局DFAと、やはり素行面のリスクが非常に高いと言わざるを得ません(CINでは話は知りませんがコロナ禍の為実質1シーズンも所属していませんでしたし)。

 そう考えると6年半もCLEに所属していたのはある意味スゴいと思いますが、多くの方がご存知の様に彼はトラブル(首位争いをする中降板に不満でバックスクリーンに暴投した)を起こした末にトレードされています。正直MLBで彼を使いこなせるのはCLEしか無いようにも思いますが()、CLE番記者のP. ホインズが述べている様に獲得に動く事はないと思われます。最初の告発に続いてCLE所属時にも同様の事案があったとして告発されています(その後不起訴)ので、藪蛇になるリスクもありますし。現エースのS. ビーバー始め今のピッチャー陣でバウアーから影響を受けた選手もいますし、若手が彼からいろいろ学ぶ点もあるとは思いますが、先発候補が多数いるチーム事情も併せて考えると、個人的には可能性はかなり低いと思います(救いの手を差し伸べる可能性含め)。個人的には復帰してくれればいろいろ嬉しいですが。

終わりに

 先に少し触れましたが、そもそもの彼の出場停止の切欠になった相手とは先日和解が成立し、バウアーはSNSで改めて自分の潔白さについて説明しています。

事案そのものについてはノーコメントですが、この事案がバウアーの選手生命に致命的なダメージを与えたのは間違いありません。

 先述通りMLBによる意趣返しがあるのかどうかは分かりませんが、自分がバウアーに関して残念なのは彼がMLB全体に与えた良い影響も無視されている件です。今やNPBの選手も多く利用するしドライブラインが有名になったのはバウアーがMLB選手として初めてドライブラインと契約し、SNSでそれが広まった事によります。

大谷翔平が不振だった2020年にドライブラインを訪れてトレーニングし、翌シーズンの飛躍に繋がったのは有名な話ですが、バウアーがいなければ、彼がドライブラインを広めていなければ、どうなっていたかは分かりません。

今や当たり前とさえなっているモーションキャプチャーやラプソードと言った器具を用いたトレーニングや、それによって得られたデータの活用に先鞭をつけた彼の功績は計り知れません。

引用記事からするとバウアーはその功績をひけらかす訳でもなく、野球界の発展を真摯に願っていると思うのですが、ボンズやクレメンスらPED使用者同様に"いなかった"様に扱われるのでしょうか。

この記事にあるようにかつてUCLAでチームメイトだったG. コールがバウアーに「野球界にバウアーの未来はない」と言ったのはMLBファンの間では有名なエピソードですが、それがこうした形で現実になる恐れがあるのは非常に残念です。賛否両論ありますが、個人的には何らかの形でもう一度彼がマウンドに立ってくれる事を願います。


 あまりに加筆が必要で、1月に書き下ろした時にアップしておけば良かったとつくづく思います。まだいろいろ書きたい記事はありますが、とりあえずこの記事だけでも年内に間に合って一安心しております。フォロワーの皆様含め1年間ありがとうございました、良いお年を。


Photo by Kyodo News via Getty Images

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