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ヒット作家の心「Block City積木の町」スティーブンソンStevenson

🖋Pdf版もございます。

 スティーブンソンRobert Louis Stevensonは、作品のキャラクターの印象を世間に残した作家です。二重人格の主人公の死を書いた「ジキル博士とハイド氏」や、フリント船長が登場する冒険物語の「宝島」など、物語に書かれたキャラクターの名前が情報になって公用語のように世界で意味のある単語になっています。
 スティーブンソンは「積木の町」と題した短い詩に、子供が心の中の空想を積み木で作り、そこに物語を合わせて楽しみ、大人になるにつれて積木遊びを好きで無くなっても、子供のころに育んだ空想の世界は心の中に生きている、と思いを込めます。
 子供が空想の世界を冒険して楽しむ勢いは、作品に隠された秘密を探るスティーブンソンの好むスリルなのかもしれません。
 代表作の「ジキル博士とハイド氏」は、社会で成功した善良なジキル博士と世間から爪弾きにされる卑しいハイド氏を守る秘密がジキル博士の死によって暴かれる衝撃の作品です。
 もう一つ、同じ位に有名な「宝島」も、フリント船長の隠した財宝を狙う船乗りたちの冒険の物語です。
 両作品とも、物語の重要人物になる曰くあり気なキャラクター達が物語の主人公に良く似ています。ジキル博士とハイド氏は、世間では全く違う評価の人物でも実は同じ人物でした。財宝を持ったフリント船長と、財宝を奪おうとする船乗りたちは、宝を隠す側か、見つける側かに別れた、財宝を我が物にしようとする人達です。
 目印を追って秘密に近づくまでに主人公は自分と同じか、気付かない間に未来の自分に会っているのかもしれません。そして会った相手も主人公に気付き、なにか他とは違う印象を読者は感じ取るのではないでしょうか。世界には同じ顔の人が三人いるとも、同じ顔の人と出会うと死んでしまうとも、言われます。スティーブンソンの好んだのは、子供の頃に誰しも驚いた逸話に紐づいた嘘か誠か怪しい伝説だったのでしょうか。
 子供の頃に好きだった話は、大人になるに連れて読み返さなくなります。心の中に仕舞われて、今一度手に取り直す必要が無いからかもしれません。大人になって読み返すのは、大人になってから好きになった話です。しかし大人になったからと言って、全く好みが変わったわけではなく、子供の頃に好きだった話と大人になって好きになった話を交ぜて楽しみ、心の世界は収束しないのかもしれません。
 見掛けには知られなくても、人は空想の世界なら覚えていられる、そうしたスティーブンソンの強い思いが実現しているのが‘ジキル’や‘ハイド’、‘フリント船長’なのではないでしょうか。

「ヒット作家の心「Block City積木の町」スティーブンソンStevenson」完

©2024陣野薫


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