見出し画像

北の大地から爽やかな風よ届け

北の大地、北海道。
どこまでも続く大地に風薫る風景が思い起こされるのではないだろうか。
その北海道で、クリーンエネルギーに転換すべく時代を見据えた試みが行われているのを下記日経新聞記事よりご紹介したい。

さて、上記記事にある森町であるが、この程、「ゼロカーボンシティ宣言」する考えを示したということだ。

ゼロカーボンシティとは、再生可能エネルギーによって稼動される都市であり、CO2排出量が無く、温室効果ガス排出によって地球に害を及ぼすことがない都市のことであり、環境省においては、2050年にCO2排出量を実質ゼロにする事を目指す旨を首長が公表(宣言)した地方自治体を指していう。
ちなみにゼロカーボンとは二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)といった温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにすることである。また、ゼロカーボンシティ宣言をすることによって何がメリットとしてあるかというと、補助金の申請がし易くなるということだそうだ。

この森町での取り組みはというと、3つ掲げられている。
一つはCO2の吸収のための森林を整備する。面積の7割を占める森林を有効活用し道南スギのブランド化や用途開拓によって新たな産業を創出するそう。
二点目は海藻にCO2を吸着させる「ブルーカーボン」の活用である。街の特産物、コンブに着目したようである。
三点目は太陽光などの再生可能エネルギーの導入の増加という。北海道内でも比較的降雪量が少なく適地と見てのことだそうだ。

このように北海道内でも続々と表明しており、4割強の76の自治体が宣言している。全国では749の自治体が表明しているという。
そんな北海道で行われているゼロカーボンシティへの取り組みが特集されていたので触れていきたい。


「石狩CCU」構想及びCCS実証実験

CCUとは、二酸化炭素を回収して利用することをいう。
「カーボンリサイクル」というコンセプトにより経済産業省が推進している。
石狩市では、国の脱炭素先行地域指定も誘致を後押しするため、必要な電力を再生エネルギー電力で全て賄えるエリアを設けて電力の消費が大きいデータセンターでもCO2排出をゼロにできると誘致活動を展開しているが、石狩湾新港にあるLNG(液化天然ガス)火力発電所があるほか九州電力系のバイオマス発電所も8月に稼働することを受けて発電所から排出されるCO2を分離・回収して資源として有効活用する構想が浮上しつつあるそうだ。

対してCO2を地下深くに貯留するのがCCSである。
その可能性をも石狩湾は秘めているという。

また、CO2だけでなく水素をも視野に入れてCCUを行おうとする街づくりを模索しているのが我が街、鉄の街である室蘭市である。
水素エネルギーの利活用などによる脱炭素社会を推進する「室蘭脱炭素社会創造協議会」の取り組みの一環という。
水素とCCUの活用が進めば、水素とCO2から合成メタンを製造できて工場のエネルギー源になり得るそうだ。鉄の街というほど製造業が多いため、期待大だ。

一方、CCSの実証実験を既に行っている自治体がある。
新千歳空港からほど近い太平洋側に面した苫小牧市である。

苫小牧市では日本初となるCCSの大規模実証実験が2012年度から国家プロジェクトとして行われていて2019年11月までに30万トンの地下貯留に成功。さらに新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの受託事業で企業による新たな取り組みが行われているという。

CCU・CCSといった取り組みによりどの程度北海道が全国へCO2回収の役割を担っていけるかが期待されるところではないだろうか。


 洋上風力発電

洋上発電において鉄の街室蘭市が「海洋再生可能エネルギー発電設備等拠点港湾」(基地港湾)の指定に伴う国の意向調査へ指定を受けたいとの回答を示したそうだ。
全国で基地港湾指定を受けているのは、秋田港(秋田市)、能代港(秋田県能代市)、鹿島港(茨城県鹿島市、神栖市)、北九州港(北九州市)だけである。
指定を受けると、洋上風力の産業集積地となるため、ゼロカーボン都市としての将来が見据えられよう。

この流れの中で、大成建設は2021年11月に室蘭市と浮体式洋上風力発電関連の技術開発などに関する連携協定を結んだ。2024年以降に洋上風力発電関連拠点を整備するという。室蘭進出の決め手となったのは、洋上風力発電のポテンシャルの高い東北以北で大きな敷地があって誘致を積極的に進めている自治体が室蘭以外になかったからだったからだそうだ。
また、五洋建設も室蘭市で洋上風力発電関連部材向けの架台を製造する新工場を2022年10月に稼働させるという。

ただし、課題はある。電源系統だ。
空き容量が少ないのだ。そのために電力を需要設備に供給するための発電や変電などを統合されたシステムを構築して電源系統を確保するのが求められている。

課題はあるとはいえ、この洋上風力基地港湾が増えることにより、街の活気ももとより、北海道の他の洋上風力発電を行うエリアへの供給などが進められエネルギーの転換がなされていく将来像が見えてくるのではないだろうか。


 ブルーカーボン

ブルーカーボンとは、海藻や植物プランクトンなどが主に光合成によって大気中から炭素(二酸化炭素CO2)を取り入れ、それを従属栄養生物が利用するという一連のプロセスの中において、海洋生態系に吸収され固定される炭素のことである。陸上に存在する森林などに蓄積される炭素であるグリーンカーボンの対語だ。ブルーカーボンの方がグリーンカーボンよりCO2の吸収量が多いという。

北海道開発局により実験実証を勧められている釧路市と、北大とソニーグループによって実験が勧められている釧路市と隣接する厚岸町。
ともにゼロカーボンシティを表明している。この2市においていうと、昨今のサンマの水揚げ減などによる漁業の衰退が人口減に繋がっており、ブルーカーボンの試みによってコンブなどの藻場の再生や漁業への好影響をもたらす可能性に期待がかかる。

日本は海岸線が長い国として有名であり、現に私も西日本の海岸線1周旅行に車で行った際には走行距離が1万数千キロに及んで驚いた経験があるくらいである。
ブルーカーボンは実に日本のCO2削減の方法として相応しいのではなかろうか。


  バイオガス

北海道といえば、想像できる風景が広大な緑の中で牛が草を食む牧歌的な酪農地の風景ではなかろうか。
そんな酪農において、さまざまなクリーンエネルギーとしてバイオガスからメタンを生み出し、さまざまな用途へ転用する試みが行われている。

上士幌町では町内のバイオガスプラントで作った電力を販売し、一般家庭などで使用する電気の脱炭素をすすめている。ほど近い鹿追町でも2027年度から3基目のバイオガスプラントの稼働計画を立てており、町の公共施設や家庭全ての電気をまかなえるという。

また、この鹿追町では「しかおい水素ファーム」がバイオガスから水素を製造・販売している。町の水素ステーションから燃料電池車(FCV)や燃料電池フォークリフトに供給しているとのことだ。

バイオガス由来のメタンからメタノールを製造できるというが、通常天然ガスで作られるものがバイオガスで製造できるとなると、資源高・エネルギー高が叫ばれる時代にあたって希望が見出せるのではなかろうか。


このように、さまざまなエネルギーの試みが行われている北海道。
北の大地よりゼロカーボンのクリーンな風が日本全国に届けと願う。


これらゼロカーボンの試みについての詳細は、以下の日経新聞の記事をぜひご一読されたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?