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夢を信じるものたちへ。【リンクラ活動記録15話感想】

©プロジェクトラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ

散々「こいつァもう良すぎて俺がどうこう語るのも野暮ってもんやで……」とか言ってたのに、何度読み返してもやっぱり良すぎてこの感情を書き残しておきたくなってしまったので、現時点での梢センパイとスリーズブーケへの考えをまとめておこうと思います。(だいぶ波に乗り遅れてるのはご愛嬌)

※ アプリ「Link!Like!ラブライブ!」内の活動記録・配信などのネタバレを含みます。ぜひ、活動記録の最新15話まで目を通したのち、読んでいただけたらと思います。






先日、蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ活動記録第15話『夢を信じる物語』が更新された。たゆまぬ努力と繋がる想いをのせ、たどり着いたラブライブ!本戦のステージ。そんな多くの少女たちが夢見た最高の舞台の決着は、必ずしも、全ての人にとって劇的なものであるとは限らない。蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの少女たちもまた、夢寐から醒めるように、日常へと戻っていく。

ラブライブ!敗退

残念ながら、「敗北」それそのものには言葉通りの意味しかないと思う。勝つために努力した時間や積み重ね、そこに至るまでの想いすらも、容赦なく無にしてしまう。それが、負けるということ。だからこそ、「敗北」にそれ以上の意味と価値を与えるのはいつだって、それを経験したものたち自身であると思っている。

積み重ねた努力を賞賛し、自分自身の誇りとするのか。
切望した勝利へのさらなる原動力とするのか。
あるいは、新たなる挑戦への糧とするのか。

蓮ノ空女学院、第103期のスクールアイドルクラブが味わった初めての「敗北」。メンバーそれぞれが敗北からなにかを学び、自分だけの答えを出す中で、『私にはなにもない』と涙を流した少女の姿が、僕は瞼の裏に焼きついて離れないのだ。




今まで我々は、『ラブライブ!』を目標に掲げた少女を何人も見てきた。

ある少女は、廃校の危機を阻止するため。
ある少女は、自分たちの学校の良さを伝えるため。
そして、ラブライブ!に出場しないことを選択した少女もいた。

多くの高校球児が甲子園を目指すのと同じように、多くのスクールアイドルがラブライブ!優勝を目指す。乙宗梢もまた、『ラブライブ!優勝』を夢見た少女の一人であり、その夢は、今までたくさんのスクールアイドルを見てきた自分にとって、特段珍しいものではないと思ってきた。

だからこそ、気づけなかったのかもしれない。自分が、『乙宗梢』という少女のことを全然わかっていなかったということ、わかった気になっていたということに。
そして、彼女にとって『ラブライブ!優勝』という夢は、文字通り『全て』だったということに、だ。

突然だが僕は梢センパイのことが大好きだ。才色兼備な振る舞いと美しい言葉遣い。聞いた人の心の霧を払うような歌声。優れた能力を持ちながらも、目的のため弛まぬ努力を重ねる姿には尊敬の念しか湧かない。仲間の心の機微に気づき、部長として寄り添うことができる優しさ。天然な一面から時には空回りもしてしまうところもかわいらしい。

あえて断言するが、これらは他の誰もが認める乙宗梢の魅力の一部である。そりゃそうだ。我々蓮ノ空のこと好き好きクラブの皆さんがどれほど長い間彼女のことを見てきたと思ってる。梢センパイの良いとこなんて、言えと言われなくても217個ぐらいすぐに言ってやる。

さて、こうした他者からの評価が、人間の自己を形成することがある。「アイデンティティ」というものは、他者から肯定されることによっても育まれる。より詳細に言うなら、他者からの評価や肯定が自分を見つめ直すきっかけとなり、さらなる「自己実現」と「自己表現」へ繋がるのだと思っている。(余談だが、こういった過程は虹ヶ咲2期がとても上手に描写していると思う)

自己肯定とは、心の声を聞き、自分を自分たらしめる願い・信念・誇りと向き合うこと。じゃあ乙宗梢を『乙宗梢』たらしめるものは何なのかというと、それは『ラブライブ!優勝』という夢と、それを叶えるために積み重ねてきた努力なんだと思う。

では、夢に手が届かなかった彼女に残る「アイデンティティ」とはなにか?
それが示されたのが、15話ということになる。

『なにもない』。

乙宗梢は、『ラブライブ!優勝』という夢を叶えることでしか、自分自身を心の底から肯定することができない。

思わず、「そんなことないよ」と言ってあげたくなる。そんな僕らの感情は、日野下花帆の「センパイは、なんでもできるじゃないですか!」という言葉にも表れていると思う。
僕らが梢センパイの姿に見る溢れんばかりの魅力。それこそ直前まで僕らは、敗北を経験しながらも、仲間たちの想いを聞き部長の務めを果たそうとした彼女の強さ、そして、仲間たちの前では決して涙を見せようとしなかった彼女の気高さを見ていたのだ。僕らが、ましてやずっと側にいた蓮ノ空の仲間たちが、彼女に『なにもない』なんて思うはずがない。

でも、乙宗梢自身は違った。自己評価の低い彼女にとって、他の誰かに伝わると信じていた唯一の誇りが努力だった。その努力は全て『ラブライブ!優勝』という夢のため。極端に言えば、彼女がなにもかも懸けて歩んできたその道程は、夢を実現できなければなんの意味も為さない。少なくとも、乙宗梢はそう考えていることになる。

そりゃあ、僕だって梢センパイの自己評価があまり高くないのは知っていたけれど。
ここまでか、って。

僕は乙宗梢のことをわかっていなかった。というか、『ラブライブ!』という大会のことも全然わかっていなかったのかもしれない。『ラブライブ!』はスクールアイドルなら誰もが目指すもので、輝かしい『優勝』という栄冠があるのと同時に、数えきれないくらい多くの敗者たちがいる。敗けたスクールアイドルたちが、どんな想いだったのか。そして、どうやって立ち上がってきたか。わかっていたつもりだった。だから思っていたのだ。
『ラブライブ!』は勝ち負けだけじゃない、挑むことに意味があるんだよって。
君が君自身の歩んできた道を笑って肯定できるなら、『ラブライブ!』に敗けたって、出なくたっていいんだよって。

でも、今の梢センパイに対してそんなことが言えるのか?「夢に手が届かなくたって構わない」なんて言葉がかけられるのか?
『ラブライブ!優勝』という夢は、彼女にとって『全て』なのに。

そんなことを考えていたら、見届けることすらできずに呆気なく終わってしまった『ラブライブ!』本戦のステージが、「負けちゃったんだなぁ」というおとぎ話を見ているような感覚から急にリアルなものに変わってきて。なんかもう、梢センパイが泣いてるのが悔しくて悔しくて。なんで勝てなかったんだよ、蓮ノ空が世界最強だったじゃんって、こっちまで泣けてきてしまった。

フラッシュバックするめぐ

夢とは憧れであり、前に進むための燃料だ。同時に、強く人を縛りつける枷でもある。『ラブライブ!優勝』という、シリーズ内ではありふれた夢。それに敗れた者が抱く感情をここまで鮮烈に、根深い問題として描いたのは初めてなんじゃないだろうか、とまで思った。

梢センパイの夢を叶えるチャンスはあと一回だけ。
僕は頭を抱えた。「来年また頑張ろうよ」なんて気休めの言葉は、彼女の覚悟を知った今、出てくるはずもない。
頼むから誰か、梢センパイを救ってくれよ……




でも、乙宗梢の一番そばには、彼女の覚悟を知ってなお、同じ夢を信じてくれる存在がいた。

僕は梢センパイの本質はわからなかったかもしれないけれど、少なくとも、そのことだけはわかっていたのだ。それは彼女が歩みを止めなかったから、花を咲かせる日の光を掴むことを諦めなかったからこそ巡り会うことができた、太陽なのだと。

個人的に一番グッときた台詞。

日野下花帆のこの言葉を聞いた時、「そうなんだよ!」と声が出てしまったのを覚えている。未来の梢センパイがスクールアイドル活動を振り返った時、悲しい顔をしていて欲しくない。全てが終わった時、梢センパイに自分自身がやってきたことを笑って肯定してほしい。

そのためには、梢センパイの夢を叶えなければならない。僕らから見て最強に違いない、何一つ憂いのない103期の蓮ノ空ですら優勝できなかった、『ラブライブ!』という高く険しい壁を、来年度の最後のチャンスで勝たなければならない。

じゃあ優勝しよう。今度こそ夢を叶えよう。
そう言ってあげられるのは、やっぱり日野下花帆だけだなぁと。

僕は乙宗梢は、自分の夢を一番そばで肯定してくれる味方が欲しかっただけなんじゃないかと思うのだ(もちろん、彼女には蓮ノ空のみんなや、蓮ノ空のこと好き好きクラブの皆さんがいるのだけど)。
初めは家族からも良い顔をされなかった夢。自分にはない才能を持つ仲間たちに囲まれながらも、自分の努力を信じ続けた夢で、様々なアクシデントに心を傷つけられながらも諦めきれなかった夢。そして、苦楽を共にした仲間たちと全てをかけて挑んで、届かなかった夢。
そんな夢への不器用な一歩一歩を、「間違ってなかったよ」と肯定して欲しかったんじゃないかと思うのだ。

だからこそ、日野下花帆のかけた言葉は、心が折れそうだった乙宗梢が一番かけてほしかった言葉であり、彼女にとって救いだったのではないだろうか。
今、日野下花帆がこの場所にいられるのは、他でもない『大好きな梢センパイ』のおかげであると、ありったけの肯定を何度も何度も与えてくれる。『なにもない』と思っていた自分の存在が誰かの夢を救っていて、今度はその誰かが、自分の夢を叶えようとしている。そして、一番そばでずっと同じ夢を信じてくれると言うのだ。

陰った乙宗梢の心を図々しいくらいに明るく照らす、温かくて心強い光。ああやっぱり、日野下花帆は太陽なんだ
そして彼女がここにいる事こそが、乙宗梢の歩んできた道程に価値があったことのこれ以上ない証明になる。君が今光を与えられているのと同じように、君の歩みが、誰かを照らしてる。ほら、きっと近づけてるよ。君が憧れたスクールアイドルに。

これから先も乙宗梢の自己評価の低さは簡単には覆らないだろうし、彼女がまた自分のことを『なにもない』と思ってしまうこともあるのかもしれない。だが、ここにただ一つ確かなことがある。

『あたしに、梢センパイがいたように』

「梢センパイには、日野下 花帆がいる」

最高のアンサーだ。

幼い頃からの大切な夢を叶えたいから。
自分が積み重ねてきた努力を肯定したいから。
大好きな人たちに笑顔でいてほしいから。

だから、『夢を信じる』。
それが、これからのスリーズブーケ。




『ラブライブ!』シリーズにおいて、『夢』という言葉がすごく重要なキーワードとして扱われていることは周知の事実だと思う。でも、どのシリーズでも共通しているのは、「夢は続いていくもの」として描かれていることだと思っているんですよね。

梢センパイの夢は、『ラブライブ!』優勝を経てひとつの区切りを迎えてしまうかもしれないけれど。
夢が叶い、梢センパイが自分自身を心の底から肯定することができた時、彼女の眼にはきっと、『夢のその先』が見えているんじゃないかなと思います。
僕は、梢センパイのその口から、彼女が願う『夢のその先』が聞いてみたいのです。


夢を信じるものたちへ。

未来の君たちが、その全てを愛せますように。

本記事はこちらの楽曲で〆させて頂きます。

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