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自作詩

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#詩

心の色

赤、青、黄、緑、橙、 赤と青の間の色、 間隔のメモリは数億 紫では1メモリ 青と黄色の間に海の色 黄色と白の間に光の色 黒と白の間に心の色

磨ききられる

逆にこんなことを したくはないとは 思わないとも 言い切れない とも 言い切れない と 思い切れない 切ない夜に

猫と老人と

夕刻 玄関を開けて外にある 郵便受けを覗いていると 猫を抱えた老人が 門の外を通り過ぎ 隣の家の生垣の下に置いた 餌の器の前に猫を下ろし またきた方に歩き出した 角を曲がる手前立ち止まって振り返る老人 私は猫の方に目をやる 猫はこちらを見つめている じっと見つめてにゃあという 猫の名を小さく呼ぶと 門を通り玄関に駆け寄った 扉は開けたままにした

胡麻団子

壁面に映る陰が 伸びていくのをぼうと眺めている 全ては等しく平等に 曖昧さを孕んでいる プラスチックがきらきらと光っている それも少し経つと見えなくなっていた 腹の底に溜まった黒い餡が ギュルギュルと排水溝に吸い込まれていく 飛び交う蝶や鳥の陰が 壁面を通り過ぎていくのを 視界の端で捉える 窓枠は大きいほどよい

個体

九通りの道を 同時に進むことで ようやくひとつの 自立した個体 互い違いに 折り重ねられた 筋の隙間を かいくぐり 共存する あの世とこの世 それは必ずしも 表裏ではない どこからどこまでが どちらなのか 侵食し合う 二つの光を纏い 意気揚々と 闊歩する ひとつの自立した個体

どんでん返し

そんなばかなうそだろおい ずっとずっとそうだとしんじて ここまでやってきたのだろう あるはずのものがないなんて そうやすやすとうけいれられるか いばらのみちをふみこえて こんなものなどかすりきず ころげておちてもほねくだけても こんなものなどかすりきず とて しんじてここまできてみたけれど げんじゅうにまもられ いくえにもとびらをもうけた ほこらのなかは がらんどうのからっぽだった あなたがあるとしんじてみていたものは わたしにはみえないものだった (ぅわーお わーお 

シナプスパズル

長い年月をかけて つながりを作り続けた 幾億の神経を いったん全部バッラバラに分解して 兆ピースのシナプスパズルにする 気が遠くなる 途方にくれる 気持ちがいい 台無しだ なんて 思えたら最高 正しさの基準なんて はなからなかったということを 思い知らせてやる 聞いてるか オレの脳

溜息天女

ふう、と はきだしたいきが ちいさなくもになってとぐろをまき ぴかぴかと かみなりがおこる いなづまをながめていると くものなかからにゅるりと はごろもをまとった ちいさなおんながでてきて こちらをいちべつして ふわりふわりとただよっていた つかまえてやろうかと てをのばしたが まどをあけていたため がいきにのっていってしまった ちいさなくものうずまきは まだくちのしたでぐるぐるとしていたが もういなびかりはしていなかった

僕だけのうた

きみにしかみえないいろと きみにしかきこえないおんがくと きみにしかかんじられないひかりと きみにしかこたえられないといと きみにしかさわれないぬくもりとが せかいのすべてだと どうしてだれも おしえてくれなかったのだろう ふさがれたままのめは たいかしたりきのうふぜん すべてのかのうせいをうばって ぼくだけのうたをうたう

砂浜スカート貝殻

はだしですなはまをあるくきみの まっしろなあしを むいしきにめでおっている きみだけにきこえるおんりょうで なにかのおんがくをきいているようで おどるようにかいがらを ひろいあつめている かいすいにはんしゃするたいようきらり ぬれたあしがひかる うみかぜになびくスカートの ひらひらとスローモーションのよう きみがおどりながらかいがらをひろい なにかのおんがくをくちずさむ

肉を裂くうた

幾重の皮膚の下の 肉の中に埋まっている ガラスの破片 傷口はとうに癒え 表面上は無いもののように見え 忘れ去られた内側の裂傷 不具合を内包したまま 機能し続けた身体 ふとその存在を 白日に晒すうた 幾重の皮膚を裂き 肉を抉じ開け ガラスの破片に優しく触れて 血まみれの手でそれを取り出し ほらこれ 君の中に埋まっていたこれは そのままにしておいてはいけないと 差し出す 少しの苦しみと痛みは心地よい 記憶にも無いそれは とても鋭利で残酷で綺麗 洗い流して磨き上げ 大事に大事に布に

目の中のゴミ

いつだって 喜びを映して 痛みを分かちあって 怒りを昇華して 笑いあって そうして 目の中のゴミを処分してまた 次の戦いに挑んでいくのでしょう?

霧散

心の感じたその瞬間の 豊かな流れのある感覚が 言葉に表すとたんに雑に 単純化されて霧散してしまう この現象に名前をつけたら 途端に意味が霧散してしまう

人生はなんですか 楽しかったっていいたい