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自作詩

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2022年9月の記事一覧

猫と老人と

夕刻 玄関を開けて外にある 郵便受けを覗いていると 猫を抱えた老人が 門の外を通り過ぎ 隣の家の生垣の下に置いた 餌の器の前に猫を下ろし またきた方に歩き出した 角を曲がる手前立ち止まって振り返る老人 私は猫の方に目をやる 猫はこちらを見つめている じっと見つめてにゃあという 猫の名を小さく呼ぶと 門を通り玄関に駆け寄った 扉は開けたままにした

胡麻団子

壁面に映る陰が 伸びていくのをぼうと眺めている 全ては等しく平等に 曖昧さを孕んでいる プラスチックがきらきらと光っている それも少し経つと見えなくなっていた 腹の底に溜まった黒い餡が ギュルギュルと排水溝に吸い込まれていく 飛び交う蝶や鳥の陰が 壁面を通り過ぎていくのを 視界の端で捉える 窓枠は大きいほどよい