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自作詩

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2022年5月の記事一覧

どんでん返し

そんなばかなうそだろおい ずっとずっとそうだとしんじて ここまでやってきたのだろう あるはずのものがないなんて そうやすやすとうけいれられるか いばらのみちをふみこえて こんなものなどかすりきず ころげておちてもほねくだけても こんなものなどかすりきず とて しんじてここまできてみたけれど げんじゅうにまもられ いくえにもとびらをもうけた ほこらのなかは がらんどうのからっぽだった あなたがあるとしんじてみていたものは わたしにはみえないものだった (ぅわーお わーお 

シナプスパズル

長い年月をかけて つながりを作り続けた 幾億の神経を いったん全部バッラバラに分解して 兆ピースのシナプスパズルにする 気が遠くなる 途方にくれる 気持ちがいい 台無しだ なんて 思えたら最高 正しさの基準なんて はなからなかったということを 思い知らせてやる 聞いてるか オレの脳

溜息天女

ふう、と はきだしたいきが ちいさなくもになってとぐろをまき ぴかぴかと かみなりがおこる いなづまをながめていると くものなかからにゅるりと はごろもをまとった ちいさなおんながでてきて こちらをいちべつして ふわりふわりとただよっていた つかまえてやろうかと てをのばしたが まどをあけていたため がいきにのっていってしまった ちいさなくものうずまきは まだくちのしたでぐるぐるとしていたが もういなびかりはしていなかった

僕だけのうた

きみにしかみえないいろと きみにしかきこえないおんがくと きみにしかかんじられないひかりと きみにしかこたえられないといと きみにしかさわれないぬくもりとが せかいのすべてだと どうしてだれも おしえてくれなかったのだろう ふさがれたままのめは たいかしたりきのうふぜん すべてのかのうせいをうばって ぼくだけのうたをうたう

砂浜スカート貝殻

はだしですなはまをあるくきみの まっしろなあしを むいしきにめでおっている きみだけにきこえるおんりょうで なにかのおんがくをきいているようで おどるようにかいがらを ひろいあつめている かいすいにはんしゃするたいようきらり ぬれたあしがひかる うみかぜになびくスカートの ひらひらとスローモーションのよう きみがおどりながらかいがらをひろい なにかのおんがくをくちずさむ

肉を裂くうた

幾重の皮膚の下の 肉の中に埋まっている ガラスの破片 傷口はとうに癒え 表面上は無いもののように見え 忘れ去られた内側の裂傷 不具合を内包したまま 機能し続けた身体 ふとその存在を 白日に晒すうた 幾重の皮膚を裂き 肉を抉じ開け ガラスの破片に優しく触れて 血まみれの手でそれを取り出し ほらこれ 君の中に埋まっていたこれは そのままにしておいてはいけないと 差し出す 少しの苦しみと痛みは心地よい 記憶にも無いそれは とても鋭利で残酷で綺麗 洗い流して磨き上げ 大事に大事に布に