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自作詩

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2022年2月の記事一覧

取捨

志半ばで散った 君のほくろの位置を数を 思い出しながら 日差し加減のいい窓辺で 紅茶をすする 空に還った 君の匂いを温度を 思い出しながら 一枚板の食卓に 花を飾る 午後 レースのカーテンが 風に揺れて はらはらと こぼれて落ちた心のかけらを 大理石の床からするりと掬い上げて 窓の外に吹き捨てた

残念

残念ながら わたしのためにあなたにできることは ないのです 残念ながら あなたのためにわたしにできることは ないのです 残念ながら 無念ですが そんなものはどこにも 存在していないのです ありがとう 嘘でもうれしい ありがとう 本当にうれしい 私のためにあなたのために 私のせいにあなたのせいに 見返りを期待しますか? 生きててくれてありがとう って 知らんがな 感謝するなら 神様あたりにどうぞ 思うだけなら ご自由に

復讐

ふくしゅうしたい だれにかわからないけれど ふくしゅうしたい なにをされたのかわからないけれど ふくしゅうしたい いかりのもとがわからないけれど ふくしゅうしたい どこへむければいいのかわからないけれども なんとしてでもふくしゅうしたい すべてのきずのしかえしを しかえしを しかえしを だれに どこへ なんのために するのかわからないけれども

渾身

森は深く 沈み込んだ体 見えないように 見透かされないように 隠れているのが 鬱陶しくなって そろそろ日の当たる場所へ 這い出てみようか 渾身の力を込めて 腐った土を 押し退けた

罪咎

鐘の音が遠くに聞こえている 忘れないよう 忘れられないよう 本当のこと 嘘のこと 表と裏とが行ったり来たり どちらが裏でどちらが表か 当ててごらんと言わんばかりに どちらにしても 鐘の音は 忘れられないように 鳴り続けている

煩くて嫌だった

風の音が鳴っていた 耳を塞いでも音が消えなくて嫌だった すごく嫌でたまらなかった 何だか悔しくなって 声を上げて泣いた めっちゃ泣いた おいおい泣いた 自分の声がもっと煩かった 泣くのをやめた 鼻をすすりながら ダメだこりゃ、と言ってみた 大きな声で煩かった 風の音が遠くなっていた

惑溺

とびらをあけて でたそこは どこでもなくて ここだった

盲憑

わたくしの こだわりをつめこんで こだわりにこだわりぬいた こだわりのこだわりを どうぞ おこだわりくださいませ

廃棄処分

心が渦巻いたとき 頭で生成される言葉を 廃棄処分するためには 費用がかかるため 命を削ってでも 働かなければならない ということになるのだろうか

なかったこと

もうしないから ごめんなさい ないてないて あやまって おかあさんを おこらせて ごめんなさい もうしませんと なきさけんで あやまならければ いえにいれてもらえなかった なんてきおくは なかったこと

降参

数の暴力 怒涛の攻め入り 大群で襲いかかる 美術館という名の戦場 浮世で掠れた自我ごとき 散り散りに退散 胡散は霧散 降参

銅像

静謐な曲線から 見出される生 筋肉の躍動 滑らかな肌が 無機質で冷たい

凪いどこう

はしゃぎすぎたから 凪いどこう 頭の中に水鏡 下流の石ころの手触り 磨かれた木の肌触り 猫のおなかにダイブ 無音無音無音無常

散弾

いっそはちきれて とびちってやりたい とおもってみても このからだには ショットシェルも トリガーも とうさいしていない せいぜいはっしゃできるのは へくらいなものだ それならばと おおきくいっぱつ ひりだして さあてそろそろ ばんめしにするか