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女子空手部の顧問となった新人教師の悲劇_1

第一話「副顧問初日。校内ランキング戦」


「今日から空手部の副顧問をやらせてもらう山田隼人と言います!よろしくお願いします!」

山田隼人は今年で24歳、教員生活も3年目となる
今年の8月に急遽、この東海付属女子高等専門学校へ転勤し、女子校の空手部の副顧問を任されることになった
本心では大学まで続けたバドミントン部を指導したかったが、それでも与えられた環境のなかで、精一杯頑張っていこうと意気込んでいた

山田は人生初の空手着の姿となり、武道場で自己紹介を行なっているが、周りは全て女子部員である
アイドルのような容姿の者、自分よりも体格に恵まれている者、年季の入った黒帯を締めて明らかに実力がありそうな者…など、全部で40人ほどの部員が居た


「ねぇねぇ、先生って何歳ですかー?」
「この中で誰が一番可愛いと思いますかぁ??」
「先生って彼女いるんですかー??」
「なんか先生細くて弱そうですけど、何か運動やってたんですかぁ??」

山田の自己紹介が終わると、女子部員から様々な質問が飛び交う
グイグイと迫ってくる女子校特有の圧力に山田も言葉を詰まらせるが、本顧問の大里先生が仲裁して入る


「ちょっとあなたたち!!山田先生困ってるでしょ!!静かにしなさい!!」
「お、押忍…」
「山田先生、すいませんね。この子たち、久しぶりに男性が来たからか、舞いあがっちゃって…。わたしは空手部の顧問の大里美紀と言います。宜しくね」

顧問の大里先生は身長が175cm程度と山田よりも少し長身だった
また、外目で見ても筋肉質で相当に鍛えられていることが見て取れた


「は、はいっ!こちらこそ宜しくお願いします…」

山田は大里先生に手を差し伸べられ、握手を交わしたが、その瞬間に戦慄が走った

うっ…!??
こ、これは…!?

よく腕相撲で相手の手を握った時に「絶対勝てない…」と相手の実力を悟る時があるが、それを更に強烈にした感覚が襲いかかった
いや、勝てないどころか、心臓を鷲掴みにされて命を握られているようだった


「はぁ…、はぁ…」

山田は息苦しさを感じていた
軽く握手しているだけなのに、身体が動かせない…
仮に大里先生が自分に空手を用いたら、一撃で致命傷もしくは絶命するであろう実力差を感じた


大里先生も同様に山田の実力を測っていた
一流の格闘家ともなると、相手と触れただけでその筋力、格闘センスなどが手に取るように分かる

なるほどね…
攻撃、防御、筋力は「G」
センスが「E」、スピードは「F」ってところかしら
うちの部員の大半は相手させるとマズイわね…
大怪我どころか殺してしまうかもしれない…


大里先生は山田のデータをしっかりインプットし、ゆっくりと手を離した

「それじゃあ始めるわよ。今日は校内ランキング戦ね。準備運動終了後、各クラスに分かれて試合を行います。大里先生は一番下のDクラスで参加してもらいます。よろしいですね?」
「ぼ、僕も参加するんですか…?空手自体を全くやったことないんですけど…」
「もちろんですよ。この部では先生も生徒も対等です。わたしもAクラスで参加します。山田先生もしっかり周りの部員から吸収していって下さいね」
「は、はい」
「返事は押忍で」
「お、押忍っ!!」


山田は初めての空手部に動揺しながらも、女子生徒とともに準備運動に参加した

準備運動を終えると、大里先生の指示でAクラス〜Dクラスへ分かれる
山田はDクラスの場所へ移動すると、白帯の女子部員が6名ほど集まっていた


「それでは各クラス試合を行なって下さい。Dクラスの主審はわたしが努めます。では、ランキング39位、田中聡子!山田先生!中央へ!」
「押忍!」
「い、いきなり僕ですか…」

山田と対戦相手は中央の方へ歩いていき、お互いに向かい合う
田中聡子と呼ばれた部員は、身長157cm程度と女子の平均くらいの体格だった
ショートヘアーの丸顔で可愛いらしい容姿をしているが、どこかオドオドとしており、自信が無さそうな雰囲気を感じた
白帯を締めていることからも、自分と同様に初心者なのだろうか…?

よ、よし!!
黒帯の生徒ならまだしも、この生徒だったらまだ戦えそうだ!!


「山田先生は初めてだからルールを説明するわね。今回の形式はフルコン形式。手技による顔面攻撃、背面攻撃は禁止。急所への攻撃も禁止。掴みや投げも禁止。それ以外は何をやっても良いわ。どちらかが戦闘不能となれば決着。よろしいですね?」
「えっ?せ、戦闘不能となるまで…?」

山田は、自分よりも小柄な女子生徒に対して、殴る蹴るといった行為をすることに若干の抵抗を感じた


「山田先生。聡子は高校から空手を初めたから、まだ空手歴は4ヶ月くらいだけど、心配は無用よ。お互い、全力で戦うようにね」
「や、山田先生…。宜しくお願いします」
「うん…。田中聡子さん、宜しくお願いします」

聡子はボソボソとした声でペコっとお辞儀をして、山田もお辞儀で返す


「それでははじめ!!」

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