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世界が忘れた少女

Come from hospital!!退院した黒主零でっせ!本日12月6日は世界が忘れた少女ことアイシア=マロースの誕生日!!ってなわけで語っていきたいと思うんですわ!

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アイシアと言う子はダカーポセカンドシーズンに登場した新ヒロイン。北欧出身で魔法使いの祖母と一緒に人々にささやかな恵みをもたらす旅をしていたが、祖母の逝去に伴い祖母の友人が住んでいる初音島へとやってきた少女である。しかし実際にはその友人ですら老衰で逝去していて、魔法を継いでいる孫娘である芳乃さくらすら魔法の研究のために渡米している状態だったので魔法を継いでいないが孫息子である主人公・朝倉純一のところにやってきたのだ。

攻略対象ヒロイン10人越えの恋愛ゲーム主人公だけあって純一の周囲には美少女ばかりなのだがファーストシーズンで結ばれたメインヒロインの朝倉音夢やその三角関係である芳乃さくらがいない環境でやってきてしまったアイシアは純一はもちろん他のヒロイン達に支えられながら初音島で生活していく。しかし序盤終わりくらいに音夢が、終盤にさくらが帰還することでその生活に少しずつ変化が訪れていきついにアイシアはさくらが封印していた彼ない桜の木の魔法を復活してしまう……と言うのがダカーポセカンドシーズンの内容。

善悪はともかく心から願った純粋な望みであれば何であれ叶えてしまう枯れない桜の木。元々はさくらの祖母がさくらのために植えた魔法の木なのだが制御が難しく、本来一人1つしか願いは叶えられないにもかかわらずさくらならばどんな些細な願いでも何度でも叶えてしまう上に望んでもいないのにさくらの肉体を植えられた当時の状態(小学3年生)で保存してしまうというさくらからしたらはた迷惑でしかない代物だ。故にファーストシーズンでは三角関係相手である音夢に対して(音夢本人も相当ヤンデレ気質な願いをしたとは言え)もはや呪いとも言うべき悲惨な結果をもたらしたがためにさくら本人によって枯死を願われた。

一方でアイシアは音夢もさくらもいない純一達の日々を見ている上、元々の生活から音夢とさくらの来訪によってそれが崩れたために「みんなが幸せになる世界」として純一と音夢の関係と記憶をリセットする願いを純粋な気持ちで望んでしまう。なまじ魔法を使えるアイシアが純粋な思いで望んでしまった願いなために枯れない桜の木は今一度芽吹き、その願いを叶えてしまったのだ。

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けど、実際にすべての人間が望んだとおりに生活するのは不可能。誰かが純一と結ばれれば他の全ては結ばれない。その度に関係がリセットされる歪んだ世界。そう、「アイシア自身が結ばれるその日まで」。その危険性を散々さくらから指摘されていながらも叶えてしまったアイシアとの関係は完全に険悪なものになり、そしてアイシアもまた失ってしまった記憶と感情に咽び泣く純一と音夢の姿を見てやっと自分の犯した罪の重さを実感する。

「奇跡の代償は、軌跡の解消」

全てを元に戻すことはさくらにもアイシアにも出来ない。しかし手段が全くないわけでもなかった。それはアイシアが自身の存在も介入もなかったことにする禁忌の魔法だった。自分が関与しなかった事にすればセカンドシーズンにおける物語はすべて世界から排除される。最後にアイシアはそれを望み、そしてさくら以外の全員の記憶から消えることになった。

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そして53年の月日が経過した。「D.C.II」にて再登場。枯れない桜の木の研究をするためアイシアが枯らせた枯れない桜の木の一部を回収したために不老不死のままなさくら同様、世界から排除された存在であるが故にアイシアもまた不老不死となっていた。ただ死なない老いないと言うだけでなく人々の記憶に残らないと言う代償を引き継いだまま。そのためアイシアはセカンドシーズンで初音島を離れてからずっと世界中を旅しては自分の魔法でささやかな恵みをもたらし続けてきた。だが53年の月日を経て再び復活した枯れない桜の木の話を聞いて53年ぶり(かどうかは実は分からない。純一達の結婚式に参列している姿がセカンドシーズンの最終回エンディングで明らかになってるし)に初音島へと戻ってきて2代目主人公である桜内義之やさくらと出会う。

自分がその存在と引き換えに枯らせたはずの枯れない桜の木が三度芽吹き花を咲かせている悪夢の未来。だがアイシアは義之を見てその原因を知る。

53年間枯れない桜の木の研究に没頭して死ぬことも老いることもない、時間から置いてけぼりにされたさくら。その間もかつての仲間達は結婚し、その子供達までもが結婚していく。そんな時の流れについ魔が差してしまった。自分の中の孤独に耐えられなくなったさくらは枯れない桜の木を復活させて願ってしまった。自分にもあったかもしれない未来をくださいと。その結果、もしもさくらと純一が結ばれていたらの可能性から誕生した存在・それが2代目主人公の義之だったのだ。それ故に義之は枯れない桜の木がなければ生きてはいけない。けど枯れない桜の木はそれ自体が暴走しつつある。元々は純粋な願いだけを叶える代物だったのが、この時代ではどんな願いでも無差別に叶えてしまう装置となっていたのだ。しかし枯らしてしまえば義之もまた消滅する。だからさくらは自ら枯れない桜の木と同化することでせめて叶える願いの制御をしようとする。

自分と同じ境遇にあり、そして自分と同じ禁忌を犯してしまっているさくらに対してアイシアは何も言えない。だが、その話を聞いてしまっていた義之はさくらが無理をしてしまう前に自ら枯れない桜の木にその消滅を願ってしまう。劃して、その願いは叶えられ枯れない桜の木は少しずつ枯れていきそれに応じて義之の存在もまた壊れていく。周囲の人間の記憶からも消えていき、しかしそれでもアイシアだけは義之の存在を忘れなかった。

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義之が完全に消滅するまでの短い間、アイシアはずっと傍にいてくれた。身も心も1つになった。そして来る最期の時。アイシアは感情高まって枯れない桜の木を再生させようとするが義之に止められ、義之は消滅した。かつて自分が経験した時間からも世界からも弾かれた存在。それをアイシアはその末路を見てしまう事になったのだった。








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「けどどうして義之君は無事だったのさくら?」

「アイシアが好きになってくれたからだよ」

けど、枯れない桜の木が消滅した後、義之は戻ってきた。元々人間の感情や記憶で奇跡を起こす枯れない桜の木。アイシアやさくらが義之を強く認識しているのが原因で枯れない桜の木は最後の最後に奇跡を起こし義之の存在を遺してくれたのだ。まさに愛が奇跡を起こした瞬間である。

「じゃあこれからさくらはお義母さんだね」

「何かやだなぁ……」

全てから忘れられた少女はこうして最愛の人と親友を手に入れたのだった。しかし、実はこのアイシアルートは世界が記録しない物語であるため残念ながらダカーポの正史としては登録されなかった。やがて、さらに20年以上の年月が経過し……

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「D.C.III」にて三度登場。今度は70年以上前に逝去したアイシアの祖母であるシャルル・マロースが転生した姿の芳乃シャルルと出会いを果たす。

上記のD.C.IIでの物語が記録されなかったためアイシアはまだ世界に忘れられたままとなっている。転生体とは言え祖母と再会できたアイシアだがその心は諦観と絶望とが支配していた。何せIIでの救済がなかったことになりさらに20年以上もの間誰からも記憶されない旅を続けていたのだから。

祖母との死別、初音島に来てからの初恋と悲劇、53年間もの孤独な旅路、最愛の人と親友との出会いと別離、そして再び20年以上の孤独な旅路。その末に転生した祖母との出会い。既に枯れない桜の木も存在しない世界でアイシアは自分を「全国様々な場所に旅して魔法でささやかな幸せをお届けするだけのシステム」としてその人生に妥協をして生きていた。

さくらの祖母であり枯れない桜の木の開発者であるリッカ・グリーンウッドの転生体である森園立夏でさえもこうなったアイシアを戻す手段はないと判断せざるを得ない過酷極まる状態。この作品ではさくらとは再会しないため、さくら相手だとどうなるかは分からないが魔力が使えるシャルルでさえもアイシアの事は一晩経てば忘れてしまい、思い出すのに時間がかかる程世界からは強く排除されているアイシア。そんなアイシアを救う可能性がある手段はただ一つ。シャルルが使うクリスマスの魔法だけだった。

枯れない桜の木の魔法と似通った「他人の純粋な贈り物を届けるサンタクロースの魔法」はシャルルが転生前から使え、そしてアイシアもまた得意とするもの。とは言え転生したことで多くの魔力と知識を失ったシャルル単体ではどうにもならない。だからクリスマスに合わせてシャルルとアイシアの魔力が一番高まるタイミングで両者が同時に同じ願いを載せて互いに魔法をかける事、それがアイシアの呪いを解除する唯一の手段だった。

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合計で70年以上もの長い孤独な旅路。しかしそれでもアイシアの心に希望がないわけではなかった。ほかに手段がないからこそアイシアは孤独な旅路を選んだ。だけど回避する手段があるのならそれを望むのは当たり前の話。シャルルはアイシアから再び元の人間としての生活を送りたいという気持ちを呼び覚まし、お互いの魔法を組み合わせることで無事アイシアを再び世界の中に復活させることを可能としたのだった。純一も義之ももういない世界でアイシアが一体どのような幸せの未来を掴むことになるのかはまだ分からない。だが、アイシアに笑顔が戻ってきた。それだけは確かな話だった。

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アイシア同様に不老不死から解放されてやっと人間らしい生活が出来るようになったさくらともまたいい話が出来る事だろう。


総括。初めてダカーポに触れたセカンドシーズンから好きだったアイシア。1で禁忌を犯し、2で結ばれ、3でやっと呪縛から解放された少女をたとえ世界が忘れてもかつて「朝倉純一」であり「桜内義之」だったプレイヤーが忘れていいわけがない。

ところで4は1と2の間で1の裏側の世界が舞台なのだけどさくらさんもナンバリングは全作出てきているのだから今度の4の続編でもアイシア出てこないかな?4に純一登場してるし。あと、祖母の名前が「シャルル・マロース」だからアイシアもフルネームは「アイシア・マロース」じゃないかなぁって思うこの8年間。

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