見出し画像

核兵器を持つことが、核戦争を抑止するって本当?

 ご存じの通り、世界には核兵器があふれています。アメリカとロシアだけで、それぞれ約1万発ずつで、合計約2万発ももっています。その2万発の内、約1,200発が、5分以内に発射可能な状態にあるとされています(戦時即応体制)。これが非常に危険で、誤認、ヒューマンエラー、誤情報などで、あやまって発射されかねないのが今の世界の状況です。

核戦争をしないためには

 さて、この危険な状態を誰もよいとは思っていないのですが、どうしたら核戦争にならないかで、大きく2つに意見が割れるのです。
1つ目は「核兵器で攻撃されないようにするために、自分の国も核兵器を持って、相手を威嚇する必要がある」「核兵器をもつことが核戦争を防いでいる」という意見。これを核抑止論といいます。
2つ目は、世界中の国が核兵器を持つという非常に危険な状態を次の世代の子ども達に残すのはよくないので、何としても核兵器は廃絶する。そのために国際的な条約を作り守ることを目指す。この2つです。

核抑止論の効果は?核兵器使用のシナリオ

 政治家の皆さんは、1つ目の核抑止論をよく言われますが、本当に効果があるのでしょうか。その答えとなる研究が、今年の4月3日に、長崎大学の研究チームから発表されました。
 長崎大学に、米ロ中韓の核戦略の専門家が集まり、3年間かけて北東アジアで核へ危機が使われる30のシナリオを検討し、もっとも可能性の高い5つに絞り研究を重ねたそうです。
その内、最も危険なシナリオは、
「米国の核の先制使用に、北朝鮮が日本の産業施設などに核兵器で反撃するシナリオには、中国も介入して、計18発が使われ、死者は210万人に登る」というものでした。
 実に、広島原爆の10倍の人がなくなる計算です。
とても恐ろしい試算になったようですが、核戦略の専門家の結論を最終報告の中でこのようにまとめています。

「核兵器を持てば持つほど、かえって危険」「兵器をもてば使いたくなる」

 核兵器を持ってしまうと使いたくなる、というのは人間の”サガ”といえるかもしれません。このような状況にならないためにも、きちんと国同士が話し合いをして、しっかりと外交の力を発揮して、核兵器をなくすことが大切だという結論でした。

力の誇示が争いを防ぐ、というのは幻想

 軍事力の強化が戦争を防いでいる、平和を守っているというのは幻想です。何があっても話し合いの強化こそが必要ですね。

『世界の核弾頭データ』2024年版
Copyright (C) 長崎大学核兵器廃絶研究センター

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?