おうちの事情

 今日はアキちゃんのおうちに遊びに行きました。アキちゃんはいつも新しいゲームや漫画の話をします。私はお母さんにあまり漫画を買ってもらえないのでアキちゃんがうらやましいです。
「どうぞ、あがってちょうだい」
「お邪魔します」
 私はアキちゃんのお母さんに挨拶をしました。アキちゃんのお母さんはとてもニコニコしていて優しそうな人でした。

「クッキーがあるよ、ジュースとポカリどっちがいい?」
 アキちゃんの部屋で漫画を読んでいると、アキちゃんがお菓子を取りに行くことになりました。
「じゃあね、ジュースがいいな」
「うん、わかった」
 アキちゃんは一人で台所に降りていきました。ベッドはピンクで、壁にはアキちゃんの好きなアイドルとアニメのポスター、本棚には漫画がたくさん並んでいます。机もちゃんと整理されていて、なんだか「女の子」って感じの部屋です。私は自分の部屋がないのでアキちゃんがうらやましくなりました。

「そうだ、おトイレ貸してもらっていい?」
「どうぞ、突き当りのドアね」
 アキちゃんのおうちは広くて迷いそうです。私はおトイレを済ませてアキちゃんの部屋に戻ろうとしました。すると、向かい側のドアが少し空いていて、中がちょっとだけ見えました。
 中には、アニメのグッズやポスターがいっぱい貼ってあって、髪の長い女の人が机に座って何か一生懸命に書いていました。私はアキちゃんの部屋に戻るとそっとアキちゃんに聞いてみました。
「アキちゃんってお姉さんいたんだっけ?」
「……見たんだ」
 急にアキちゃんは不機嫌になりました。そしてお姉さんのことを少しだけ話してくれました。お姉さんとアキちゃんは半分しか血がつながっていないそうです。そしてアニメのキャラに恋をして、いつも変な漫画を描いたり夜中に変な声を出したりして、大学を卒業しても就職をしないでいつも引きこもっているのであまり家族でも話題にしないそうです。だからアキちゃんは今から女子力を鍛えてかっこいい彼氏をゲットするそうです。大変ね、と言うしかありませんでした。

「ただいま」
「門限を3分も過ぎているわ、何をやっていたの」
「アキちゃんのおうちに行ってきたんだよ」
「まあ、時間を守らせないなんてふしだらな家ね。後で電話しましょう」
「お母さん、恥ずかしいからやめて。私がゆっくり歩いたのが悪いの」
「そう、それなら明日のドリルを5ページ増やしましょう」
 お母さんはニコニコ笑って夕飯を用意していた。私も自分のおうちが嫌だったけど、アキちゃんのおうちも嫌なところがあるんだなあと思ってその日はお母さんのお小言もあまり耳に入りませんでした。

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