泣くなよまりえってぃ
介錯された
各団体、最終節ラッシュである。
最終節を終えると多くの麻雀プロたちはオフシーズンに入り、3月頃までいくつかのタイトル戦がある以外は対局の予定がなくなる。
さて、昨日のエントリーにもあったとおり、私も最終節を終え、順当に降級した。
このエントリーにも書いた通り、今期はずっと生殺しというか、ずっと大きなマイナスを抱えた状態で過ごしてきたので、降級は悔しいけどズバッと介錯された晴れやかさを感じている。
ところが終わりのインタビューでみんなの言葉を聞き、少し思うところがあるので当日の出来事をつらつら振り返りながら語っていく。
腹が減っては
まず良かった点として、集中力が切れなかったことがある。
2時間超えの半荘が終わったとき、みんな疲れたと言っていたのだが、私にはまだまだ余力があった。
普段から集中力が途切れないような施策を講じており、それはまた別で記事にしようと思うが、体力・集中力が不安な年齢になりつつあることを考えると、まだまだ若いもんには負けんぞと、亀仙人のような気分になった。
2回戦の南入くらいから、伊藤高志選手のお腹がグーグーなっていて、真面目な顔で「失礼」とか言うもんだから笑いを堪えるのに必死。
全く失礼なヤツだぜ、と思ってたら3回戦のラス前くらいから私の腹がなりはじめた。
とても恥ずかしかったが「何かありましたか」という顔をして乗り切った。
マイクが拾ってないことを祈る。
麻雀の方は乗り切れていなくて3着→3着で再びマイナス200ptの世界へお帰り。
何にせよでかいトップを取らないとアカンな…と思いながら私は向かいのコンビニに走った。
まずはアラームを鳴らし続けるお腹を黙らせないといけないからだ。
おにぎりの具セレクションと信号待ちに手間取り、スタジオに戻ってきた時にはもうすでに放送が再開されていた。
おにぎりを1つパクつき、慌てて卓につく。
ポイント状況を把握できていなかった。
まぁどのみち大きなトップが必須なのだから、と気楽に構えていた。これが明暗を分けた。
親で爆発した私は80000点に到達。
点数の下にある順位を見てほしい。
残留となる4位・中村誠志選手の点棒を大きく削っており、これは理想的な並びと言える。
この時点で私・松本・中村の3者はほぼ横並びと言って良い状況だった。
だが、ポイント状況の確認ができていなかった私は、まだまだ点棒を稼ぐぞと躍起になる。
その結果、ブクブクに構えて中村選手に2回降り打ちした。
ポイント状況をしっかり把握していれば、中村選手の安全牌だけは確保したり、2件リーチに挟まれたときも中村選手に安全な方を切ったり、やりようがあった。(解説のあさぴんにも指摘された)
そういうのも踏まえて、経験不足を痛感した。
最終節は麻雀とは全くの別ゲーになる、と言っても過言ではない。
その大切さを知っていれば、放送が多少遅れようとも、ポイント状況を確認したはずだ。
私はまだ条件戦(今回の最終節や決勝などの短い期間で勝利条件を争う戦いのこと)の経験が少ないがゆえに、重要性を理解していなかったのだと思う。
今回、オーラス三倍満ツモで劇的な逆転昇級を果たした伊藤は、常に条件を整理している。
自分の条件だけではなく「◯◯さんにとっては、こうなるのが理想ですね」とモニターに映し出されているポイントを見ながら常に笑顔で話していた印象だ。
相手の状況から動向を予測し、それに沿って自分の行動を決める。
伊藤はそれを楽しんでいるのが伝わってくる。
私はClassicの決勝で伊藤に負けたし、リーグ戦でも負けた。
それは下振れでも何でもなく、経験不足、ひいては実力不足だったのだ。
リーグ戦の戦い方、最終節の戦い方、これまではなんとなくで打っていたのだが、改善する余地がみつかったのだと前向きに捉えよう。
そういう意味では早めに降級を体験できて良かった。
いつか伊藤にリベンジできるよう、頑張るのみである。
おかもと
ヨンマ天鳳位を2回取っている岡本壮平選手が最高位戦に入ることを知ったのは、今年に入ってからだった。
まさか自分の所属するリーグとは思いもしなかった。
たしかに実力は最上位クラスかもしれないが、最高位戦ルールはまた別物だ。
不慣れな初年度ということもあり、つけ込む隙は十分にあるのでは…と考えていた。
たしかに所作の面では慣れておらず、毎度何かやらかしていて、その度にプロたるものはなーと先輩面して教えていた。(2年目)
ところが麻雀だけは強いままで、なんというか毎巡の精査が半端なかった。
放送をご覧になった方はわかるかもしれないが、あれだけ余裕のポイント状況にも関わらず、必死の形相で最善手を選ぶ姿が映し出されていたはずだ。
伊藤と共通するのは、思考することを楽しんでいる点にある。
アガりたい、勝ちたい、ではなく、どちらが得か?を考えること自体に楽しみを見出しているのだ。
努力を努力と感じない。そういう強さがある。
勝つために精進する、と言っている時点で、もう私は負けているのかもしれない。
「関西B2で打ててよかったです」
対局を終えた岡本がそう語っていた。
この6人に仲間意識が芽生えただと。
このメンツで1年打てて幸せだったと。
最高位戦に入って本当に良かったと。
おいおい泣かせること言うじゃねーか。
岡本の麻雀はマジでうざい。
チョロチョロして、かき乱し、危険な牌はピタッと止める。
そういうのは鳳凰卓だけにしてくれよと何度思ったか。
一応言っておくが、うざい麻雀、は褒め言葉である。
やっぱり天鳳位は強いよ。
なくなよえってぃ
インタビュー時には笑顔で答えていた相川まりえ選手。
三倍満条件戦を満たされ、まさかの残留。
紅一点の相川は何度も顔を抜かれていたし、悲劇のヒロインと言ってもいい。
ところが、インタビューを終えた相川が涙に伏している姿が抜かれていた。
昇級したやつらのために泣いてたまるかと我慢していた私の涙腺も、ここで崩壊。
普段はオッス!と悟空のような挨拶で接してくる相川。
表裏のないサバサバとした性格は話していても疲れない。
また最近はFACESにていわゆる「ご報告」しているので、ぜひチェックしてみてほしい。
相川は女流Aリーグにも所属しているし、その他にもいろいろ対局があるし、その性格からリーグ戦にここまでの思い入れがあったとは意外だった。
いや、相川も最高位戦に入ってもう7年目。
思い入れという点では私よりはるかに大きいのかもしれない。
天真爛漫のサバサバ系である相川でも、戦いながらずっとプレッシャーを感じていたのか。
そして目前でこぼれ落ちていった勝利に、悔しさが溢れ出てしまったのだろう。
いつかのリーグ戦の帰り道、どんな話の流れだったか覚えていないが、なぜ麻雀プロを続けているのか、という話題になった。
相川はハッキリと答えた。
「自分の存在意義のため」
いろいろな習い事や部活を経験してきたが、どれも長くは続かない。
その中で、麻雀だけはずっと続けている。
我々同様、リーグ戦が楽しくて仕方ないらしい。
麻雀プロであることが、私が生きてきた唯一の証。
泣くなよまりえってぃ。
こっちまで泣けてくるじゃんか。
年々涙腺の弱くなっている俺も、負けたときはなるべく泣かないようにしているよ。
それが敗者の意地であり、勝者への礼儀だと思っている。
でも、悔しかったんだよな。
勝手に溢れ出ちゃったんだよな。
通年リーグはいいぞ
やっぱり良かったな。
不意に思った。
結局降級してしまったし、ずっとシンドいばかりの関西B2リーグだったけど、このメンツで戦えたことは良かったとみんなのインタビューを見てそう感じたのだ。
人間が本能として持っている、共同体バイアス(所属する共同体に情を感じてしまうバイアス)が多分にかかっているのであろう。
しかし、1年をかけてそれぞれの思いをぶつけあい、最後は裏3の三倍満で全てが水泡に帰してしまう、という周りから見たら本当にバカバカしい遊びを、我々は真剣に取り組んでいるのだ。
その思いを共有し、卓を共にした時間はずっと忘れない。
通年リーグはいいぞ。
20半荘というどうしても短すぎる半期リーグより、48半荘の通年リーグは負けても納得感がある。
その戦いは経験として血となり肉となる。
かくいう私は残念ながら来期から半期のC1リーグに戻るわけだが、逆に言えば1年に2回昇級のチャンスがある。
また素晴らしい経験をさせてもらった通年リーグに戻れるよう、来年も頑張っていきたい。
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