J2 第10節 岡山 vs 岐阜 レビュー

岡山 0 − 0 岐阜

2018年4月21日(土)19:03KO Cスタ



◎試合全体の流れ


特徴的なサッカーを展開する大木監督の岐阜に対し、岡山は前線からのプレスで対抗します。試合の入りは良かったものの、岐阜の変化に手を焼いた前半でしたが0−0。後半修正を施して終盤の打ち合いに持ち込むと、リカルド・サントスの初投入もありクロスの雨を降らせますが得点は奪えず。2試合連続のドローとなりました。



☆今回のレビューのトピック

◎大木武監督の特徴的なサッカー ”クローズ”

◎良かった前半の入りと前からのプレス

◎柔軟に守り方をかえられる成長を見せた前半

◎後半ロングボール攻撃で反撃できたわけ

◎ピックアッププレイヤー 齊藤和樹・リカルド・サントス・竹田忠嗣



それではまず、両チームのフォーメーションから確認していきましょう。



岡山のフォーメーションは3142

岐阜のフォーメーションは433

次に、両者のフォーメーションのかみ合わせをチェックします。

岐阜の最終ラインの4枚に対してこちらは2トップなので、岐阜のSBがフリーになりやすい傾向が考えられます。それから中盤の真ん中のエリアは3vs3で数的に同数なんですが、立ち位置がかみ合いませんからマークするときには整理が必要です。そして、WBのところがポツンと空いてくるのでそのあたりをどう考えるか?このあたりがポイントとして予想できそうな組み合わせでした。




◎大木武監督の特徴的なサッカー ”クローズ”




FC岐阜を率いる大木監督は非常に特徴的なサッカーを展開する監督です。よく”クローズ”なんて呼ばれるスタイルなんですが、この試合でもそのスタイルを色濃く反映したサッカーが展開されていました。

この”クローズ”ですが、大きく2つの特徴に注目したいと思います。まず、攻撃の方ですが、ボールサイド(ボールがある方のサイド)に選手がたくさん集まってきてショートパスを交換しながら陣地を押し上げていきます。

ボールサイドに集まる岐阜の選手に対して、岡山の選手がマークにいきますから敵味方が片方のサイドにギュッと集まる格好になります。岐阜はこの密集の中でパスを交換しつつマークを剥がしてタテに突破を狙う。あるいは、ボールサイドの逆側のWG(この図では田中)が、あまり警戒されないところから背後やサイドのスペースを狙う。


一方、ボールを失った時”クローズ”ではどのように対応するのか?

ボールを失うと密集からそのまま前に突進して前プレを仕掛けていきます。岡山がボールを後ろに下げればどんどん勢いをもってプレスに出てきます。そうして早いプレッシャーでこちらの判断する時間を奪ってロングボールを蹴らせ、それを回収してまた攻撃に戻る。この守備に前半はだいぶつかまってしまったので、可能性の低いロングボールを蹴る回数が増えてしまいました。この点について、長澤監督のコメントを参照してみましょう。


長澤監督:奪った瞬間に向こうのリズムと同化しちゃうというか。目線を下げたまま後ろに下げるボールがそのまま相手のプレスのスイッチを入れさせちゃう感じになっていた。(岐阜は)人数をかけてボールサイドに人が来るのでボールを下げちゃうとそのまま突進してくる。




◎良かった前半の入りと前からのプレス



岡山は前からのプレス(前プレ)を習得する途中で、チームとして守備力の強化を狙いとしています。ただ、相手もこちらのプレスを回避してきますからプレッシングのハマり方によって優勢にも劣勢にもなるという試合が続いています。特に愛媛戦や大宮戦ではこちらの前プレを回避されて前半主導権を奪われる試合でしたから、試合の入り方と前プレのかけ方が大事でした。

前述のとおり、4バックが相手なのでSBのところが空きがちになります。これまではインサイドハーフ(塚川の位置)を前に出してSBにプレスさせていましたが、この試合ではWBの椋原を前進させSBの福村にぶつけました。しかし、このようにWBを前に張り出すと岡山の後方にはスペースができてしまいますし、相手のFWとこちらのCBが1対1になる局面が増えます。

岐阜がそこを狙ってスペースにロングボールを蹴るとこちらのCBとFWの一騎打ちになります。純粋な球際勝負やハイボール勝負で岐阜に後れを取るCB陣ではありませんが、スピード勝負やドリブル対応となると少し難しい場面も増えてきます。もちろん岐阜もそういうアタッカーを前線に配置してきていますから、そこは勝負ポイント。岐阜が左サイドを中心に攻撃を展開していたので、右CBの阿部は難しい対応を迫られましたね。



◎柔軟に守り方をかえられる成長を見せた前半



こちらの右サイドで少しピンチを作られてしまった前半でしたが、それにはわけがあります。この試合の入り、岡山は非常に良い入りができました。守備がバチっとハマり岐阜にロングボールを蹴らせそれを処理してこちらが攻撃にでる。比較的狙い通りの守備が出せていましたし、前プレの精度も高かった。しかし、27分あたりから岐阜が変化を加えてきます。


長澤監督:立ち上がりの入りはすごく良くて途中でちょっと25分30分過ぎからペースを取られたような感じになったんですけど


それまで4バックで左SBの福村にボールを集めていた岐阜ですが、インサイドハーフの小野がポジションを落として最終ラインでボールをさばきはじめます。そして、SBの福村が少し前に位置します。これにより、赤嶺・齊藤・椋原で岐阜の田森・竹田・福村に対し3vs3を作れていたところが、小野の分だけ人が足りない状態に陥ります。このまま人数が足りないのに前からプレスにいってもパス本数リーグ一位の岐阜に手玉に取られてしまうだけ。プレスは空回りし、愛媛大宮の再現コースです。ではどうするか?

相手の変化を察知した岡山は、事情がわからないままやみくもにプレスに行くのではなく一旦ブロックを下げ前プレを諦めます。これにより、岐阜に押し込まれることになりはしましたが、プレスを剥がされて空回りする危険性は下がり、結果的には手堅い対応をすることができていました。愛媛戦や大宮戦では、この判断ができなかったためハマらないプレスをどんどん剥がされてしまったのですが、この試合ではその反省点を踏まえ対応力に成長を感じさせてくれましたね。




◎後半ロングボール攻撃で反撃できたわけ



前半は岐阜のプレスにお付き合いしてしまって可能性の低いロングボールを蹴る回数が多かった岡山でしたが、後半はそこへ修正が入ります。



やや距離が近すぎるきらいのあったCB同士の距離感が少し離れることによってピッチをワイドに使えるようになります。選手が遠くなるとプレスに走る方はより遠い距離を走って捕まえに行かないといけなくなりますから、相手のプレスを回避するには必要なことです。そして、中盤でプレッシャーを受けていた上田、伊藤が少し低い位置まで落ちてボールをさばきます。後半岐阜の足が止まってきたこともあって、後方でのボール回しはかなりスムーズになりました。それでもパスで交わせないシーンはあったんですが、そういうときは前半と同じようにロングボールを蹴ります。

無駄蹴りのような形だった前半とは違い、後半は明確に赤嶺の頭をターゲットにしたセカンドボール狙いのロングボールで攻撃を組み立てます。ヨンジェと赤嶺のコンビでやっていたように、前で競る人、後ろで拾う人とタテ関係を作ります。赤嶺のターゲットとしての威力は説明無用。竹田と競り合うシーンが多かったですが、さすがの竹田でもやはり赤嶺はストップするのは難しい。赤嶺の頭を狙うことで、かなり敵陣でセカンドボールを拾い攻撃に入っていけるようになった後半でした。


押し込んでクロスをたくさん浴びせかける形になったので、リカルド・サントスを投入し、左WBに武田を投入。高さのアドバンテージを加えたところに、クロス役として武田を左に置きます。何本も何本もクロスを放り込むところまではいったのですが、最後スコアするところまでは届かず。一方、岐阜はスピードが命。前がかりになる岡山の背後をスピードあるアタッカーでカウンターを狙います。どちらもそれぞれのスタイルで殴りあう展開となりましたが、結局ドローで終戦。勝てる可能性も負ける可能性も同じくらいあった試合でしたが、岡山には収穫のあるドローになりました。




◎ピックアッププレイヤー 齊藤和樹・リカルド・サントス・竹田忠嗣



この試合の特に前半において決定機を演出するなど活躍を見せた齊藤和樹選手。非常にいいプレーをみせてくれました。178cmで赤嶺のようなDFを背負う仕事も(得意ではないにせよ)こなし、仲間のようなドリブラーとまではいかないまでも、ドリブルでグイグイとつっかけられる力も持っており、いろんな仕事を平均点以上にこなせる万能型の選手だなと感じています。とりわけタッチラインに近いところでのプレーは一癖ある選手で、非常に頼もしい。周囲の選手を生かすプレーも得意ですし、これからもっとフィットしてきそうな気配があります。


途中交代で初Cスタお目見えとなったリカルド・サントス選手。ヨンジェの離脱後すぐに獲得された助っ人FWですが、短い時間ながら特徴を感じさせるプレーを見せてくれました。やはり目を引くのは、あの高さと体の大きさ重さ。PA内でプレーされたら相手の選手はさぞかし嫌なことでしょう。一人でボールを持っても難しいという点はあり、ヨンジェみたいに全部自分でできてしまう性能はありませんが、ヘッドの強さ、あとキックの柔らかさ、周囲を使える視野の広さは大きな武器になりそうです。フィット感はまだまだですが、周囲とイメージのすり合わせが進めば暴れてくれることでしょう。



Cスタに相手チームの選手として戻ってきた竹田忠嗣選手敵チームながら取り上げないわけにはいかないでしょう!カバーリングの上手さは相変わらずでだし、ボランチあがりのCBという経歴からくるドリブルの上手さパスの正確さは今更説明のいらない彼の持ち味。チームが変わってどうかな?とは思いましたが、岐阜のスタイルにはもってこいの選手だと思うので安心しました。今年のウチのCB陣の方向性や人選の狙いを見ると、竹田を放出するのもわからなくはない話です。ですが、惜しい・・・!正直相手にするにはかなり嫌な選手なのですが、岡山に多大な功績をのこしてくれたレジェンド。岡山戦以外で活躍して是非とも岐阜で欠かせない選手となってほしいと思います。





それではまた。


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