J2 第9節 大宮 vs 岡山 レビュー

大宮 1 − 1 岡山

2018年4月14日(土)16:03KO NACK



◎試合の流れ


大宮が前半早々にリードを奪ったため、岡山は主導権を奪われる形の試合となりました。大宮は442のフォーメーションからチェンジして攻撃を展開してきますが、その変化に慣れないうちにボールを回されプレスを剥がされ続けたことで岡山はリズムをつかめないまま失点。その後修正したことと、大宮がリードしてからトーンダウンしたことで押し返しことはできたものの得点には至らず。後半に上田康太の今季2点目の直接FKが決まり同点においつくと、赤嶺の見事なシュートなどで追加点を狙うも逆転はならず。今季2度目のドローとなりました。



☆今回のレビューのトピック

◎4222の大宮に苦しめられる”入りの15分”

◎少しづつ見えはじめた”堅守岡山”の攻略方法

◎”前半の入りの15分”を制して主導権を握れ

◎ピックアッププレーヤー 上田康太


それではまず、両チームのフォーメーションから確認していきましょう。


岡山のフォーメーションは3142

大宮のフォーメーションは442

次に、両者のフォーメーションのかみ合わせをチェックします。

大宮の最終ライン4枚に対してこちらは2トップですから枚数が足りません。大宮がボールを後方からつないでいくときにはSBがフリーになりやすい可能性があります。一方、中盤は5vs4で数的に有利なので、ここでは岡山の方が優勢に試合を運べそうな試合でした。



しかし、大宮は攻撃の時にフォーメーションを変えてきます。


このように、SHの横谷や嶋田が外に張っているんではなくて中に入ってきます。このような形のことを普通の442のフォーメーションと区別するために、一般的に4222のフォーメーションと表現します。3421や3142など3バックのチームに対して442のチームがよくやる変化なんですが、これは3バックの天敵ともいえるフォーメーションです。J1だと鹿島なんかやってるのを見たことありますが、そういえば大宮の監督は石井さんでしたね。



◎4222の大宮に苦しめられる”入りの15分”



岡山は守備のチームですから守備のところで相手をうまく封鎖できているとリズムが出てきます。しかし、その守備をかいくぐられたり予想外な展開を作られてしまうと堅い守備が揺らぎ始める。前半の15分、”いわゆる入りの15分”でリードを奪った大宮としてはしてやったりの前半だったことでしょう。では、なぜ4222の大宮に苦戦したのか?そこをチェックしていきましょう。

まずは通常の442のままで大宮が攻撃した場合を図にしてみました。この状態であれば、大宮の中盤と前線の選手に対してしっかりと一人づつマークできる状態にあるのがわかると思います。問題となりそうなのはSBのところですが、かみ合わせのところでも確認したようにここはフリーになってしまうのはある程度やむを得ないところです。


これが4222になるとどうなるか?


横谷・嶋田の両SHが中央に位置取って4222の形を作ります。彼らが位置するエリアはちょうど上田康太の両脇あたりになるんですが、ここは岡山の守備陣形で一番のウィークポイントです。横谷や嶋田のこうした動きに対応できずにこのエリアでボールを受けられると、もう岡山の最終ラインが危険にさらされてしまいますから彼らを放置してしまうのは得策じゃない。しかし・・・

椋原が横谷についていくと、3バック脇の守備者が不在になってしまいます。大宮はこの試合スピードのあるFWを2枚並べていましたから、このエリアで隙を見せるとFWに走り込みを許して前線に起点を作られてしまいます。しかし、放置していては前述のとおり。

相手のSBが高い位置に出てきてボールをさばくときに、これをWBがプレスに行こうとすると、3バック脇もできてしまう上に横谷もフリーになってしまう。

・・・・非常に対応が難しい。もし大宮の後方でのボール回しを完璧に前からのプレスで封じ込められていれば問題は起きませんが、そういうわけにはいきませんから、岡山としては前からいっても交わされるし、交わされたらボールを嫌なところで受けられてしまう。なんらかの対応をしたかったところですが、修正が施されるまでに手痛いリードを奪われてしまいました。


この試合では特に岡山の右サイド、大宮の左サイドからチャンスメイクされるケースが多かったんですが、大宮の左SHに入っていた横谷選手にはかなりやられてしまいましたね。ギャップに入っていって効果的にボールを受けたり、スペースへ走りこんでこちらの守備を誘導したりととても厄介な動きを繰り出していました。失点シーンでもそうですが、その後のサイドチェンジからのチャンスメイクのシーンを見てみると・・・

ボールは左サイドにあって大宮の右SH嶋田が持っています。このとき横谷は岡山の最終ラインの背後のスペースへ走りこむそぶりを見せます。そうするとどうなるか?

横谷が裏へ走ったので椋原はそれについていきます。右WBの椋原が横谷についていってしまうと、右サイドを守る人がいませんから広大なスペースができてしまう。そこにサイドチェンジのボールが入ればSBの河面はどフリーでクロスがあげられる。と、このように横谷選手にはスペースを使う動きとスペースを作る動きで非常に効果的なプレーをされてしまった前半の立ち上がりでした。


大宮がリードしてからトーンダウンしたことと、岡山の守備が大宮の最終ラインのボール回しへプレスをかけていくことをセーブしたことで次第に大宮のやり方に慣れていった岡山でしたが、攻撃の方でも大前、富山の2トップの献身的な守備もあって相手の中盤や裏のスペースを攻略することがほとんどできませんでした。大宮に対する守備の対応が決まるまでのおよそ15分間。やはり”入りの15分間”でリードを許してしまったこと。これがゲームの行方を一番左右した要素といって差し支えないでしょう。




◎少しづつ見えはじめた”堅守岡山”の攻略方法




ここまでの9試合で岡山は6勝1敗2分。勝ち点20で首位に立っています。得点は7。失点は3ということで、非常に硬い守備力をベースとしたチームです。1試合に複数失点した試合は0ですから、相手チームは「岡山から点を取れるとしたら1点あるかないか?だろう」と考えるでしょう。また、高さがあって人に強い3CBと献身的で運動量のある中盤のプレスは厄介です。ハイボールは跳ね返され、平面でのショートパスはプレスにひっかけられる。ボールを取られるとすぐさまロングボールを蹴られカウンターに入ってくるのでボールをもって攻略する場合相応のリスクを背負わないといけない。先制してそのまま逃げ切った試合は6試合。リードを許せばそのまま勝ちきってしまうチームです。そういうわけで、岡山は”どちらが先制点をとるか?”が極めて重要な相手です。さて、このチームを相手はどうやって攻略しようとするでしょうか?


岡山がここまでで苦戦した試合はこの大宮戦、そして今季初の敗戦となった愛媛戦なんですがこの2試合には共通点があります。それは、どちらの試合も先制された試合であることと前半の入りが不安定だったことです。


前述のとおり大宮戦では3バックの天敵である4222のフォーメーションで攻撃を展開し、SHが重要な役割を果たして岡山の守備をかいくぐりました。岡山は前からのプレスが定まらず、相手の出方を理解するのに手間取っているうちに失点してしまいました。ではもうひとつの愛媛戦はどうだったか?愛媛のやり方はこのような形でした。

愛媛は3421のフォーメーションだったんですが、攻撃時に大宮と同じように立ち位置を変えてきます。ボランチが最終ラインに、シャドーがボランチの位置に、そしてWBまでもが落ちてきて愛媛陣内で数的有利を作ります。この愛媛の変化によって岡山のプレスの枚数が足りなくなりますから、岡山のプレスはかかりません。愛媛は自由にボールを動かすことができます。

後方でボールを持てる状態を確定させつつ、愛媛はシャドーの河原が岡山の守備弱点であるボランチのヨコのスペースでボールを受けたり、大きなサイドチェンジを使って手薄な逆サイドに配球してきました。


この大宮のケースと愛媛のケース。どちらもこちらのプレスを回避する可変フォーメーションの採用。ボランチ脇の活用、そしてサイドチェンジという共通点があります。岡山の想定していない攻め方を見せることで、対応の遅れを生じさせそのうちに先制点を奪う。それができたのがこの2チームなんですね。愛媛戦においてもハーフタイムを挟んで監督からの指示が伝わった岡山は守備のやり方を変えて愛媛に対応。同点、逆転とはいかなかったものの前半やりたい放題にされていた守備を見事に立て直しました。もともとの守備力は高いわけですから、機能不全から復旧して本来の力が出せるようになれば大丈夫。しかし、その一時的な機能不全を前半の入りの15分で起こしてリズムをつかみ先制されてしまったのがこの2試合です。




◎”前半の入りの15分”を制して主導権を握れ



チームは相手を研究してどのようにプレーすれば相手に勝てるか練習して試合に臨みます。その練習の成果が最も色濃く出るのがこの”前半の入りの15分”。岡山としてはこの時間帯で相手をしっかりと見極めて的確に守備の対応を決めなければなりません。ですからゲームを見るうえで大事になってくるのが、”前半の入りの15分”で守備が上手くいっているかどうか?です。ここで守備が上手くハマればいまのところほとんど勝つことができているわけですからね。守備で主導権を握れるかどうかが大事なポイントです。


どういう時に守備が上手くいっているか?それを見分けるうえで一つの目安になるのが、相手の選手がボールを持った時にどのくらいの近さでプレッシャーにいけているかどうか?です。もし、相手の選手が中盤より前で自由にボールを受けている場合は守備になんらかの問題が起きていると考えていいと思います。そうではなくて、相手が前に進みづらいくらいにきちっと寄せることができていれば大宮戦や愛媛戦のときのようなポジションのズレ、マークのズレが起きていない証拠です。たとえば新潟戦のように前半から上手く守備がハマればまず大丈夫。相手も次から次へと対策を練ってきますから、この2試合と同じように守備で難しい試合を迎えることもあるでしょうが、まずはそこを落ち着かせていかに辛抱してチャンスを待てるようになるか?そこが大きなポイントになりそうです。




◎ピックアッププレーヤー 上田康太



この試合で2点目となる直接FKを決め同点ゴールを上げた上田康太選手。おそらく岡山の選手で1シーズンに直接FKを2点以上決めた初めての選手だと思いますが、この得点が相手に与える影響は決して小さくないでしょう。上田康太の直接FKを嫌って相手の守備はファウルギリギリのプレーを選びにくくなりますから、その分アタッカーの自由度は増します。持っているだけで牽制になってしまうという非常に価値のある武器です。この試合では一本先にFKを蹴って惜しいシュートがありましたが、あれがあったのが大きかったことでしょう。優秀なキッカーは試合で蹴ったキックのフィーリングを次のキックの修正材料にしますから、角度的に近いところで”試し蹴り”出来た分、ゴールを決めたFKはやりやすかったはず。すでにアシストもたくさん記録していますが、ゴール・アシストが年間でどのくらいの数字に達するでしょうか?”コータメーター”みたいなものがあっても面白いかもしれませんね笑




それではまた。




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