第10回 勉強会「南国の島と雪国の村の子どもたち」
ゼロカーボン(カーボンニュートラル)に向けて一人ひとりが主役となるための勉強会。
第10回の勉強会は、「南国の島と雪国の村の子どもたち」をテーマに、沖縄県竹富島の小・中学生と長野県白馬村の中学生が、海と山で感じる環境の変化やそれぞれの地域で実践している取り組みを発表し合いました。
竹富島の状況と活動
沖縄県八重山郡竹富町で、海をきれいにする・島の子どもたちの未来を応援するプロジェクトに取り組むエシカルアイランド竹富代表の上勢頭巧さんと、竹富島の小中学生から島の環境や活動についてお話いただきました。
竹富島には中学校までしかないため、石垣島や沖縄本島の高校に進学しますが、コロナ禍で休校になり寮も閉鎖されたため高校生が島に帰ってきました。
幼い頃から遊んでいた竹富島の海にも島外からのプラスチックゴミが目立つようになってきたため、ビーチクリーンに取り組もうということになりました。
月500円からの協力金でマンスリーサポーターになっていただき、寄せられた協力金をビーチクリーンの活動や島の子どもたちの夢を叶える資金に活用しています。
全国の人たちに知ってもらい、応援してもらうためにも動画をSNS等で発信しています。高校生が協力金でやりたいことを考えた結果、「後輩である小中学生にいろいろな体験をさせたい」ということになりました。
まもなく卒業してしまう高校生もいるので、何をしたいか聞いたところ、「みんなで雪山で遊びたい」という意見が出てきたため、白馬村の人たちとつながって何かできないかということで今日の勉強会に参加しています。
今日は高校生は出られないため、小中学生が活動を報告します。
まず初めにマイクロプラスチックを拾ってみました。
全国的に取り組まれている「10,000ピースプロジェクト」(1㎡を1ピースとしてその中のマイクロプラスチックを取り除く)に参加する形で、砂をざるで振るってゴミを取りました。
海藻に付着しているゴミを取るのが大変でした。普段使っているプラスチックが粉々になっているのを目の当たりにして、プラスチックだけでなく他のゴミもできるだけ出さないようにしようと思いました。
竹富中学校バドミントン部では、県大会の遠征費に協力金を活用して、そのお礼としてビーチクリーンを実施しました。
漂着しているペットボトルの量に驚き、ペットボトルを買わずに水筒を使うようにしたいと思いました。波照間島でペットボトルから洋服を作っている人がいて、自分たちでもペットボトルなどから何かデザインできないか考えてみたいと思いました。
ビーチクリーンだけでなく、生き物の観察会もしています。
新月の大潮の夕方にヤドカリは幼生を海に放つ様子(放幼生)を観察しました。
子供たちの「なんで?どうして?」という疑問がたくさん出てきて、海に放たれたヤドカリが小魚に食べられる様子を見て、弱肉強食・生態系を学びました。
長年島に住んでいる大人たちも知らないことがあり、みんなで楽しく学びました。
緊急事態宣言解除に合わせてビーチクリーンを実施しました。
海岸の木の根元には、ペットボトルや発泡スチロールなど多くのゴミが漂着していて、約50袋のゴミを拾いました。
海に泳ぎに行く前に日常的にゴミを拾ったり、ワールドクリーンアップデーに合わせてビーチクリーンをしたりしています。
目の前に落ちているゴミを拾うようになりました。ペットボトルなどのプラスチック製品を買わない・使わないようにしたいと思いました。ラベルを見ると中国語や韓国語など外国語が書かれているゴミが多いことに驚きました。
ゴミを拾ったところはキレイになりましたが、拾いきれなかったところにはたくさんのペットボトルがあって、白い砂浜にあるため目立ってしまいます。次回はもっと多い人数でビーチクリーンをしたいです。
その他にも「マングローブ観察会」や「ゴミから作るハロウィン仮装行列」といったこともしています。
小中学校では、海洋教育子どもサミットの発表に向けて準備をしています。
これまでに、ペットボトル調査、ビーチクリーン、ミツロウラップ作り、サンゴ学習などをしてきました。
海のゴミを減らすために、ゴミを披露活動を続けるとともに、環境に優しい商品を増やしてプラスチックを減らしたいと思っています。
ミツロウラップ:洗って何度も使えるし、簡単に作ることができます。
ライスストロー:お米とタピオカで作られていて、食べることもできます。
サトウキビストロー:プラストックのような強度があり、水分でふやけることもありません。
プラスチックゴミは、世界に1億5,000万トン以上存在し、毎年800万トン以上が新たに流れ出ていると言われています。海洋ゴミの内訳は、プラスチック65.8%、自然物15.9%、木材7.3%と言われていて、プラスチックゴミは400年以上漂うとも言われています。
サンゴはポリプという構造で、刺胞(しほう)という毒針をもち、プランクトンを捕まえたり身を守っています。世界中の海に600〜800種が生息すると言われていて、その約半数が沖縄の海に住んでいます。
サンゴ礁は海面上昇や海水温上昇などの環境変化でストレスにさらされていて、海水温が高い状態が続くと、共生している褐虫藻が喪失して、サンゴの骨格が透けて白く見える白化現象が起こります。大きな台風が通過した後、テーブル状の白化したサンゴが根本から折れることがあります。エシカル協会の末吉さんの「エシカルな生き方講座」を受講して、自然環境・人・地域・社会に思いやりの気持ちを持つエシカル消費に沼りました。
身近なエシカル消費として、量り売りをしている地域の魚屋さんで新鮮な魚を買ったり、ファーマーズマーケットで島内の新鮮な野菜や果物を買うことで、生活ゴミの削減や地域活性化にもつながります。
また、MSC認証のあるマクドナルドのフィレオフィッシュなど、資源と環境に配慮された認証マークのついた商品を購入することもエシカル消費です。一人ひとりの工夫だけでなく、学校や企業も変わっていく必要があります。具体的なアクションとして、ファーマーズマーケットでビニース包装を減らしてもらうことや、イオンに量り売りコーナーを開設してもらうこと、学校の脱プラスチック化などを提案していきたいと思っています。大切な海・自然・人・島のためにエシカル消費を楽しく始めましょう!
竹富島のサンゴはどんな状況ですか?
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夏休み八重山の海でダイビングをしていましたが、浅いところは温かく白化してるところが多く、深いところでは綺麗でカラフルなサンゴが見られました。サンゴがキレイなところでは、亀やマンタに会えることもあるらしいです。竹富島の周りも、白化しているところもあるし、カラフルで綺麗なところもあります。一度綺麗にしたビーチはどれくらいでゴミが来てしまいますか?
ビーチクリーンの頻度はどれくらいですか?
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満月と新月で潮の満ち引きがあり、引き潮の時にゴミが目立つようになります。ゴミは毎日のように流れ着きますが、海の中にあるゴミが漂着するのはありがたいことで、海の生物のお腹に入る前に人間の手で拾うことができます。漂着しているゴミは海ごみの5%と言われています。
白馬村の状況と活動
白馬中学校のSDGsサークルの代表を務める出口天仁さんから、活動の様子を報告していただきました。
白馬中学校SDGsサークルのテーマは「白馬の雪を守ろう」をテーマに半年ほど活動しています。
自然の力を利用した省エネと光合成による二酸化炭素削減を目的として、2種類のグリーンカーテンを設置しました。
オカワカメは、成長が早く丈夫で、栄養満点の健康野菜です。
シカクマメは、乾燥に弱く、枯れてしまいました。
今年は植えるのが遅かったのですが、本来は5月上旬に植えると良いと言われています。
1年A組のベランダに設置し、B組の平均気温を比較したところ、1Aは20.7℃、1Bは22.7℃で2℃ほど差が生じました。
みんなで活動できたことは良かったのですが、植える時期を早くして密度を高くすることが必要だと感じました。
また、学校で使用する紙を減らすペーパーレス活動にも取り組んでいます。
中学校では1年間に57万枚の紙を使っていて、紙とインクで約70万円の費用が発生しています。1本の木からA4用紙13,000枚が作れるので、白馬中学校だけでも毎年43本分の木を切っていることになります。
ペーパーレスに取り組むことで、森林伐採抑止、自然資源保護、事務効率化につながり、学校の方針であるICT活用とSDGsの両方に貢献できます。
紙を使う必要があるものもあるので、そういったものは古紙回収活動をしています。リサイクル・リユースに分けて、ホワイトボードに改修状況を記載しています。9月の時点で2,331枚の紙を回収しています。
4月から9月に使用した紙の量は11万5千枚で、昨年度の19万枚と比べて7万5千枚削減できています。CO2排出量に換算すると、88kg削減できたことになります。
他の生徒や先生たちの協力を得て活動できています。
白馬の雪を守るために、自分たちができることに取り組んでいきたいです。
竹富中学校は全校で10人、小中学校合わせて38人ですが、白馬中学校の生徒数はどれくらいですか?
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約200人です。
雪を守るというのは具体的にどういうことですか?
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地球温暖化で雪が減ってしまうので、CO2などを削減して、温暖化の影響を抑えて雪が降る環境を保ちたいです。ペーパーレスに取り組むためにみんなタブレットを持っていますか?
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生徒一人一台タブレットを使えるようになっています。保護者への連絡もスマートフォンなどに送られるようになっています。夏は暑くて何℃くらいですか?
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昔は涼しかったけど、最近は暑いくて30℃を超える日が多くなりましたが、夏は短い印象があります。今朝は2℃くらいでした。学校と協力してペーパーレスに取り組んでいることが素晴らしいと思います。
SDGsサークルを作ったきっかけはなんですか?
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使っている資源やエネルギーをもっと減らしたり、みんなの環境意識を高めたいと思ってサークルを作りました。初めてのエシカルという本を読んで興味を持ち、小学校の女子児童とエコ部を作ってヘチマを使ってタワシを作ったり、エコなイベントに参加したり、コンポストで竹歯ブラシを土に返す実験をしたりしています。白馬の活動を聞いてもっと色々取り組みたいと思いました。
お互いに質問・意見交換
海洋ゴミの多くは街から出ています。竹富島に流れ着くものは海外のものが多いですが、日本のゴミも太平洋の島々に流れていると聞きます。白馬村のゴミの状況はどういった感じですか?
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白馬村では、街を歩いていてそれほど目につきません。冬は観光客も多く、雪解けとともに目立つ場所もあり、ゲレンデでは春にゴミ拾いが行われています。白馬村にはリゾートホテルなどもあると思いますが、サステナブルツーリズムの取り組みはありますか?
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近隣の市村と合わせて、ホテルやスキー場など観光事業者全体で2030年までにサステナブルリゾートを目指して、再生可能エネルギー由来の電力を使ったり、自然に優しい洗剤や商品を使ったりするなど、アクションリストを配ってみんなでやっていこうとしています。
近日中にリリース予定なので、ホームページや冊子ができたらお知らせします。竹富島では、リゾートホテルが建つ計画がありますが、竹富島では隣の島から水の提供を受けていることもあり、水が足りなくなるのではないかといった不安や、排水はどうなるのか、夜に灯りを点けているとウミガメの産卵に影響があるのではないかといった声もあって、説明がないと賛成できないという反対運動が起きています。人・自然・社会に優しいエシカルアイランドを目指したいと思います。
竹富島では、誰が捨てたかわからないゴミを拾わなければならないし、白馬村では、誰が排出したかわからない温室効果ガスの影響で雪の減少に悩んでいます。昔は11月下旬にスキー場がオープンしていましたが、最近は12月になってもなかなか雪が降りません。雪が降る量も減り、雪解けも早くなっています。
では、その変化にどう対応したらいいのか。CO2を減らすためには、紙の使用を控えて木を切らないようにすることも関係があります。いろいろなことが関係している難しい問題ではありますが、何もしないわけにはいかない、だからできることから取り組んでいるというのは、素晴らしいことだと思います。
ツバルの外相が膝まで海に浸かりながら訴えている様子が報道されていましたが、竹富島でも対岸の火事ではないと感じています。
竹富島も標高が26mくらいしかなく、1m海面上昇すると島がかなり小さくなってしまいます。
世界的に取り組まないといけない状況ではありますが、今日も火力発電を使っています。子どもたちだけでなく、大人も含めてみんなで考えるべきだと思います。海底火山が噴火して軽石が漂流しているというニュースがありますが、竹富島にも影響はありますか?
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今のところ漂着していませんが、今後どうなるかはわかりません。船で物を運んだり買い物に行ったりするので、運行が止まると困ります。竹富島でも温暖化の影響は感じますか?
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サンゴの白化による生態系への影響で感じています。台風が海の水をかき混ぜてくれると、サンゴの状態が良くなるとも言われています。
風速70mなど台風の激化にも恐怖を感じています。
海に囲まれているので夏はそれほど暑さを感じません。白馬高校生はテスト期間中で参加できませんでしたが、3月に卒業した生徒たちが雪を守るために行動を起こしたいという想いから、地域の人たちと気候マーチなどを開催してきました。先輩の活動を見て、自分たちも取り組みたいという生徒が入学して、活動が少しずつ広がっています。
竹富島の話を聞いて、ペットボトル・プラごみが深刻ということを痛感しました。白馬高校では、ペットボトルを買わずに、マイボトルを使ってウォーターサーバーの水を飲もうというプロジェクトに取り組んでいます。
今後、高校生同士の交流なども含めて情報共有したり、子どもたちが行き来できたらいいなと思っています。
様々な活動を頑張った竹富島の高校生のご褒美として、白馬に連れて行きたい!
お知らせ・閉会
次回は、11月25日(木曜日)18:30〜20:30に開催予定です。
リフトの半分を再生可能エネルギーで動かしている八方尾根スキー場の脱炭素への取り組みについて、八方尾根開発株式会社SDGsマーケティング部松澤瑞木さんにお話いただきます。
後半はみんなで「こんなスキー場になったらいいな」を話しましょう!
さらにその次は、12月9日(木曜日)にドイツのフライブルクの先進事例を現地の方から伺おうと思います。
ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました!
学びと実践の両輪でゼロカーボンに取り組んでいきましょう!