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【新人奮闘記 第8回】ドライスーツ修理を学ぶ!

マサル「今日のダイビングも楽しかった~!」

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カッキー「ん?元気ないなシュウト!写真が上手く撮れなかったの?」

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シュウト「カッキーさん、聞いてくださいよ~~…僕のドライスーツ、水没してるっぽいです…」
マサル「えっ!?どこが??」
シュウト「胸のあたり…」

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カッキー「そうかー。胸のあたりだとピンホール(※突起物などに接触したことにより出来る針で刺したような小さな穴)が空いてるのか、給気バルブからの水没なのか判断できないね。よし、検査して修理してもらおう!」

ジュンペイ「はーい!ドライスーツの修理品はこちらでお預かりしまーす!!」

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シュウト「ジュンペイくん!!」
勝海「ジュンペイは最近、届いた修理品の受付業務を頑張ってるんだよ~」
カッキー「せっかくだから、この機会にドライスーツの修理とメンテナンスについて、勉強してみようか!」

ジュンペイ「はーい、じゃあ修理受付はこちらへどうぞ!!」

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勝海「まず、お客様から工場に届いた修理をご希望のドライスーツは、1着ずつ【リペアシート】というものを作成します。」

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マサル「なるほど、修理の内容とかを全て書いていくんですね!」
勝海「そうそう。でもこの修理受付という業務は、お客様からの修理依頼内容を書くだけではなく、スーツ全体のチェックも必ず行うんだ。バルブのボタンが固かったり塩噛みしていないか、生地は劣化していないか、ネックシールやリストシールが切れていないか、全体をチェックするんだよ!」

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シュウト「なるほどー、確かにお客様からの依頼箇所以外に、劣化した箇所があったら、追加で修理を希望されるのかをお伺いした方がいいですね!」
マサル「自分では気づいていなくても、プロが見たら修理した方がいい箇所が見つかるかもしれないしねー」
ジュンペイ「はい、シュウト君のドライスーツのチェックが終わったよ!今回は水没の症状があるから、浸水箇所の特定の為に検査をしまーす!次は検査室へどうぞ!」

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シュウト「ジュンペイ君、めっちゃ意欲的に頑張ってるねー!僕も負けないようにしないと!」
ジュンペイ「僕も修理の工程を勉強したいから、ここからは二人に付いていきまーす!」


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シュウト「検査室ってここだよね…?」
名和「やっとここに辿り着いたか!!」

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マサル「名和さん!!」
名和「気密検査は任せとけ!!どんなに小さい水漏れも見つけてやる!!」
シュウト「こちらをお願いします!」

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名和「胸部からの水没ねー。他は特に問題ないみたいだね、スーツ自体も割と新しいし…。じゃ、検査を始めるよ!まずはスーツを表から裏にひっくり返す。シュウト、新人奮闘記の第一回目で教わったことを思い出してやってごらんよ!」
シュウト「ひっくり返すんですね!えーと、第一回目の内容は…あ、ブーツの秘密だ!」

↓↓【新人奮闘記 第一回】ZEROドライスーツのブーツの秘密に迫る!

画像12ブーツのつま先を中に押し込んで…

画像13開口部からスーツを裏返して…

画像14つま先まで全部ひっくり返った!

マサル「スーツがひっくり返った!」
ジュンペイ「これ、なんでひっくり返すんですか?」
名和「もしピンホールが空いていたとしたら、基本的には裏側から水没を止める処置をするんだ。だから、ピンホールが空いている箇所のマークも裏側に付ける。表側にマークをすると、マークが完全に消えない可能性もあるしね!」
シュウト「へ~~」
名和「そしたら、ネックシールの中にエアー注入用のホースを入れてロープで縛って、リストシールも傷まないように丸い缶をセットしてロープで固定!スーツ内を密封する。そして、エアーを注入!!」

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ジュンペイ「おおっ、なんか人形みたいで面白い…」
名和「スーツ内にエアーがパンパンに入ったら、水で濡らして石鹸水を全体に塗る!」

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マサル「スーツが泡だらけ…!これで水漏れが分かるんですか?」
名和「フフフ…ここを見てごらん!!」

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ジュンペイ「ポコポコ大きい泡が出てる!」
名和「石鹸水を塗ることにより、スーツ内のエアーが出ている所が分かる=水漏れしている部分が分かる、という事だ」
シュウト「なるほど!ってことは、やっぱり僕のスーツは胸に穴が開いていたのですね…」

画像57給気バルブは大丈夫か、バルブの裏当を外してチェック!

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名和「漏れている場所をチェックして、そのほかの部分を確認…それ以外は大丈夫そうだな。この胸のピンホール1か所だけ直せば大丈夫だな!」

画像58泡を綺麗に流して

画像58干す!

名和「ドライスーツが乾いたら、次はピンホールの修理だ!これを持って、製造部へGO!」

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こばP工場長「はいは~い!いらっしゃい!!シュウト君のドライスーツの修理ね!」

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シュウト「お願いします…僕の大切なドライスーツを助けて下さい…」
こばP「はいよっ!…ん?」

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こばP「…シュウト君、きみ…もしかして給気バルブノズルのカバーをしないでスーツを畳んだりしてるね…!?」
シュウト「え!?…あ、たまーにキャップするの忘れることも…ある…かな…」
こばP「コラーーーー!!ZEROの社員ともあろう者が、なんてことを!!!実はこれ、結構多いパターンなんだけど、給気バルブのノズルカバーを付けないでスーツを移動の為に畳んだりしてしまうと、ノズルの先端が生地に当たって穴が開いてしまう事があるんだ」

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シュウト「あっ…心当たりが…」
こばP「あとこれも多いんだけど、ダイビング後にドライを干したりするでしょ。その時にも、給気バルブのノズルカバーをつけ忘れたまま裏返してポールとかに引っ掛けると…」

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マサル「あ!背中の部分がノズルに当たってる!」

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こばP「そう、これで背中のこの部分にピンホールが空いてしまうって事例が多い。だからスーツを脱ぐ前に、必ずノズルカバーを付ける!!これ凄く大事!!」

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ジュンペイ「他にも気を付けるポイントってあるんですか?」
こばP「うーんそうだね、着脱時にネックシールやリストシールに爪が当たったりすると、スキン部が避けてしまったりするのは基本中の基本だけど…あ、背中ファスナーのタイプのドライスーツを脱ぐ時に、気を付けてほしいことがある!」

画像30背中ファスナータイプのドライスーツを着せられたシュウト

こばP「この背中ファスナーのドライスーツを脱ぐ時に、」

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こばP「これ!こうやって袖をひっくり返すように抜いちゃうと…」

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こばP「ファスナーが折れてしまう!!」
シュウト「ほんとだ!!」
こばP「ZEROのスポーツドライスーツは、背中ファスナーが樹脂製のYKK AQUA SEALを採用しているから比較的ファスナー部は柔らかいんだけど、それでもこの脱ぎ方をしてしまうと、ファスナーが折れてダメになってしまう。ファスナーの修理は高額だから、本当に気を付けてほしいポイントだね」

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こばP「間違った着用、着脱はスーツに良くないから、初めて着る前には必ず付属の取扱説明書を読んでね!!」

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こばP「ドライスーツは少なくとも年に1回、又は50本に1回のペースで修理に出すことをお勧めしてます。気密検査して、劣化部分が無いかどうかのメンテナンスをしっかりすることが、快適にダイビングをする秘訣だよ!!」
マサル「水没してるなーと思っても、来週もダイビング予約してる時とか、今日すぐに工場に送れません!なんとか応急処置したい!っていう時には、何か方法はないんですか?」
こばP「ん~~、方法はあるけど…これを見てごらん」

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ジュンペイ「これ、カタログに載ってるやつですよね?」
こばP「そうだよ~、これ全部スーツの補修材!修理したい場所によって使い分ける必要があるから、結構種類があるでしょ」
シュウト「これらは、どういう違いがあるんですか?」
こばP「これをぜーーーんぶ細かく説明したら夜が明けるから、サラっと簡単に説明しよう。」

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こばP「まずこれ、チューブボンド。これは、スキンの生地が裂けちゃった時なんかに、貼り合わせる為に使うんだ。貼りたい断面を綺麗に拭いて、ボンドを塗ってしばらく置いて、表面がぺたぺたする程度になってきたらしっかり貼り合わせる。そこから完全に硬化するまで、24時間は触らずに置いておいてね。硬化剤が入っていないから、無理は禁物だよ!」

チューブボンド説明

こばP「あと、チューブボンドはドライスーツのピンホールの応急処置にも使えるよ。目視できる(ピンホールの場所が特定できる)穴だったら水漏れを止める為に使う。」
シュウト「ピンホールの中にチューブボンドを流し込むんですか?」
こばP「それだと、穴の中全体にボンドが行き渡らないから、敢えて少しだけピンホール部分に切り込みを入れる。生地の断面全体にボンドが付くように貼ると、水没は止まるよ。」

ピンホール断面

こばP「そして次に、シューグー!これは一般的な靴用なんだけど、ダイビングのブーツにも使えるんだ。底が薄くなったブーツに、厚めに乗せるように塗る。保護の役割だね。もちろん塗る前には靴底を綺麗に掃除すること!」

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こばP「そしてこちら、セメダインスーパーXとアクアシール!!」

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こばP「これは、両方ともピンホール含む水漏れを止める為の防水性能が高い補修材だよ。漏れている箇所に乗せるイメージでこの補修材を付ける。これも24時間くらい置いておけば、使用できるようになるよ。」
ジュンペイ「この二つは、どう違うんですか?」
こばP「簡単に言うと、セメダインスーパーXの方が塗った後が柔らかくて、アクアシールの方が硬くなる。だから、関節回りとかの良く動かす部分にはセメダインスーパーX、逆にあまり動かさない場所にはアクアシールを使用した方が効果的なんだ。僕だったら、アクアシールは防水ファスナーのコマの周りの生地(ドライスーツ本体の生地ではなくファスナーの生地部分)が擦れた時なんかに使うよ」
シュウト「へー、そういう違いがあったんだ…!」
こばP「た だ し!!」

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こばP「基本的には、ドライスーツの水没やトラブルはダイビング中の重大な事故に繋がってしまう場合がある。だからこそ、定期的なメンテナンスが必要なんだけどね。でも、もしどうしても応急処置をしたい!って場合は、ダイビングとドライスーツの事をよ~~~く理解しているインストラクターさんに相談してみよう!!」

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こばP「間違った修理をしてしまうと、水中でのトラブルの可能性とともに、ZEROの工場での修理ができなくなってしまう可能性があるんだよ」
ジュンペイ「どういうことですか?」
こばP「例えば、前に胸のピンホールの為にセメダインスーパーXを胸全体に塗ってる人がいて、ピンホールが止まらないからと工場にスーツが送られてきたんだけど、どうにもそのセメダインスーパーXが剥がれなくてきちんと修理が出来なかったんだ。完全に直すには、上半身を全部交換するしか方法が無い…って事になっちゃったりね」
シュウト「ひええ、それは大変だ…!!」

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こばP「だから、ドライスーツにトラブルが起きた時は、なるべく速やかに工場に送ってもらって、修理を依頼するのがベストだよ!!」
こばP「そうこうしてたら製造部の手練れの職人が、シュウト君のスーツのピンホールを直してくれたよ!これで安心して潜れるね!」
(※気密検査があるスーツの場合、修理後は必ず再度気密検査を行っております。)

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シュウト「早っ!!ありがとうございます!!」
こばP「君たちは一年間を通して、ZEROの様々な商品について勉強していたね。最後にZEROの看板商品でもあるドライスーツを長く大切に着る為のメンテナンスと扱い方法を少し理解できたかな?」

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マサル「はい!自分のドライスーツを大切に、限界まで着たいです!!メンテナンスについても、これからもっと深く勉強したいです!!」
こばP「良い返事だ!三人もだいぶ頼もしくなってきたな!」
三人「これからも、商品や技術など、ZEROの全てをもっと学んでいって、先輩たちみたいな立派な社員になれるように頑張ります!!!」

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名和「よーし、しっかり厳しく、教えていくからな!!これからもがんばれよ!!」
三人「ハイ!!」

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【こばPからのお願い】
これから暑くなって、ドライスーツのオフシーズンになります。今まで何のトラブルもなくドライスーツを着ることが出来ていても、次のシーズンに向けて是非一度メンテナンスに出して下さい。秋口に久しぶりに着たドライスーツが水没した!急いで直して下さい!と言う方が多くいらっしゃいます。ドライスーツのシーズン前になるとどうしても工場が混雑してしまい、納期も多く掛かってしまう事があります。
合言葉は、『ドライスーツはシーズンオフの期間に、メンテナンス!!』

是非、宜しくお願い致します。


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最後になりましたが、今回を持ちまして約一年間お届けしてきました
「新人奮闘記」を一旦「おしまい」にさせていただきます。様々なことを勉強した三人も、ゼロ入社二年目に突入いたしました。「新人」の冠が取れた三人ですが、毎日まだまだ奮闘は続きます。ここを一区切りとして、今後は更にステップアップした姿で、新しい情報をお届けできるように精一杯頑張ります!
今後も、是非お楽しみに!!

*三人から、一年間の感想として一番心に残った回を聞いてみました。

まずはシュウト!

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シュウト「13年間のダイビング人生においてアウトラストインナーは、ダイビングには欠かせないアイテムとなりました!」

続いてマサル!

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マサル「セミドライスーツ【WDM-02】を着て実際に潜ってみると暖かく、快適に潜ることが出来ました。樹脂製ファスナーを使用しているので動きやすく、お気に入りのスーツです! 」

最後にジュンペイ!

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ジュンペイ「何事も初心が大事!というのもありますが、今現在では1日に何着もスーツを裏返す作業をしていますので、最初に教えて頂きながら、そしてこれまででも1番お世話になっているという回でもあります! 」


一年間頑張った三人に、入江部長(アウトラスト編講師)、樫原部長(水中ライト編講師)も、激励に駆け付けました☆

入江部長&樫原部長

彼らの今後の成長を期待して、これからも温かく見守って頂けたら幸いです。
それでは最後に…

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せーーーーーの!!

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