見出し画像

憧れの憧れの憧れの憧れ。

※執筆者:松本みかん

「これ、どうやって撮ってると思う?」と、一緒に番組をやっている二宮さんから見せられたMVがある。BUMP OF CHICKENの「なないろ」という曲のMVだった。見た途端言葉を失うほどびっくりして、何回も何回も繰り返し見て考えてみたが自分には「どうやって撮っているのか」まったく予想すらできなくて愕然とした。こんな凄いMVを作ったのは誰だ?と監督の名前を見て、さらに愕然とした。林響太朗監督ー。

自分の中での林響太朗監督との出会いはこれがはじめてではなかった。初めて名前を知ったのは、米津玄師さんの「TEENAGE RIOT」という曲のMVを見たときのこと。「このMVかっこいい!すごい!監督は誰だろう??」そこで林響太朗さんという名前を知る。どうやって生きてきたらこんなかっこいい映像が作れるのか。そこから“林響太朗という人”に興味を持つようになり、ネットで読めるインタビュー記事など一気に読み漁った。その中でも衝撃だったのはRyu Matsuyamaさんとの対談での「Footsteps」という曲のMV制作の話。以下はインタビューの抜粋。

林:そうですね。ちなみにこれ、全部印刷してるんですよ。
—どういうことですか?
Ryu:このアニメーションって、映像にエフェクトをかけているんじゃなくて、撮影した映像を1コマずつ印刷して、手作業でエフェクトを加えているんです。それが4000枚。左上のカウントは演出的につけてるわけじゃないんです。
—ものすごく労力がかかってますね。
Ryu:労力もそうですけど、これを考えた響ちゃんもすごい。プリンターが壊れそうになってましたから(笑)。
林:インクのコストとかを考えるのも楽しかったよ(笑)。CMYKのうち、あえてK(ブラック)を抜いて陰影が出るように印刷したんです。それを発見してくれたのは一緒にやってくれた友人でした。
Ryu:動画を一度編集して、そのコマを1枚1枚プリントアウトして、インクを乾かしてスキャンしてということを4000枚分繰り返していて。すごいですよね。

https://www.cinra.net/article/interview-201805-ryumatsuyama

動画を編集してそれを一コマずつ印刷してスキャンする。4000枚も。聞いただけで気が遠くなるような作業。だから左上の数字は演出じゃなくガチの紙の枚数なんだって。そんなこと、頭の中で考えつくことがまずすごい。「ちなみにこれ、全部印刷してるんですよ」ってさらっと話しておられるようなこの会話。この一言の破壊力は、凄い。

さらに自分が好きだった「愛を伝えたいだとか」というあいみょんさんの曲のMVも、菅田将暉さんの「まちがいさがし」のMVも、案の定そこには「監督:林響太朗」の文字。自分がいいと思ったMVの監督がことごとく林監督だということを知った時「おぉぉおおおーい!!!またかー!!!」と心のなかで叫ぶ自分がいた。憧れの憧れの憧れの果ての“謎の嫉妬感”を抱いた。「嫉妬」と形容するにはなんか違うしそれはそれでおこがましいのだけど「ずるいぞ!!!!!!!!!」みたいなそんな気持ち。

冒頭で言っていた「なないろ」のMVについての記事も読んだので、どうやって作られたものなのか一部始終知ることができた。あういう記事は本当に有難い。欲を言うならメイキング映像を見たくてたまらない思いです。

その「なないろ」の制作についての記事の中で何より度肝を抜かれたのが、あのMVは撮影から「10日」程度で仕上げられたものだった、ということ。それを読んだとき、あまりにも自分は小さく、恥ずかしいような存在だと思った。自分が10日でできることなんてたかが知れてる。自分の悩みなんてこの制作チームの方々に比べたらどんなに小さいか。一気に打ちのめされたような敗北気分。でもそれと同時に、ドラゴンボールの悟空が強いやつと出会ったとき「おめえ強えなあ、オラ、わくわくすっぞ!!」っていうみたいにすごくわくわくする気持ちが混在した。強いやつがいるからこそ、自分も強くなるために努力ができる。世の中には自分より“強いやつ”が大勢いる。

「映像を撮りたいと思っていたわけでも音楽関係の仕事をしたかったわけでもなかったんです」と語っておられるのも意外だった。自分も今目の前にやるべきことを全力でやり、その先で、その時やりたいことに取り組めるようになれればいいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?