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盛夏過ぎ 久々水場へ

今年の夏 暑かった というかまだ暑い ひき
こもりを決め込んで涼しい部屋で惰眠をむさぼ
っていた それで医師の勧めによる血液検査で病
が発覚し 今まで 命に別状がない病気にしか
かかったことがなかったために それはそれで
幸せなことだった 余生など 深く考えるきっか
けとなってしまい わさわさ心が落ち着かなかっ
た しかしそういった胸の騒ぎもいつかはなる
ようにしかならないと落ち着く 薬剤の助けか
絶望的な気分は長く続かずに済んだ

日蔭では暑さの中にもかすかに涼気が薄まって
いる気がする 久しぶりに水場へと自転車をは
しらせている 空腹から低血糖になり 熱中症
様の症状が出ることを恐れて控えていた スー
プシャーというのか ちいさな保温容器を買って
その中に裂けるチーズと塩飴を一粒 保冷剤
とともに押し込んだ わずかな糖質と蛋白質
久々にわたる江戸川の流れに少し泥水が別
に流れているのが見えた 川の河口近くは深
緑色をして これで半世紀前より格段にきれい
になっていた 鯊は水質にかかわらず 弁慶蟹
もか 絶えずに棲んでいる

公園入口に矢竹が緑から黒ずんで 蓮は葉を
目いっぱい陽の方へ伸ばして 蜂の巣に似た
身を揺らし始めている ひと月ぐらい留守にした
か かなり草花が進んでしまった 昼咲の月見草
など暑さで枯れはててしまったのか 昼に咲く
朝顔と同じフォルムの白い花も見ない そういえ
ば ベランダから見える斜前の下階の桜も葉が
枯れて冬様になっている 夏 真昼 猛暑 人
出もかなり少ない おととし完成した広場の噴水
も水不足でか円形に乾ききっていた

公園中央の大きなフィールド そのわきを区切り
のように流れていた水路は七月半ばから止め
られて 中ほどをへこませた歩きにくい舗道の
ようになって干上がっていた 私の漁場として
いる水路に流れ込んで水音をたてていたのが
聞こえないとなると思い起して聞こうとして 風
が強くて葉擦れの音に気を取られ思い出せな
い 同じような音になって頭の中で混ざっている

木陰にピンクのシートを敷いて罠を仕掛けた
折り畳み式ビニールバケツにたっぷり水を汲み
置いて 掬っては腕 首 頭髪 ぴしぴし水を
叩いている 木陰では暑さが和らぎ 頭から水
をかぶるのはやめた 半袖を二の腕で濡らす
だけで充分涼しい 濡れた手はジーンズの足で
拭く 七月の始め 頭から水をかぶって腿のあ
たりの生地がささくれているのに気が付いた
ひと月置いて同じようなことをしているうちにそこ
が見事に裂けてしまった 帰ってから妻にいい
爺のダメージジーンズってどうよ と聞いたら
妻は無表情に首を傾げた 裂け目から腿の肌
が生白く気色悪い 誰かが それ いいと思って
やってるの と真顔で聞いてくるかもしれない

仕掛けの方はほぼクチボソで 少し筋蝦がまざ
っている 春先は小ぶりのテナガエビばかりだ
ったが ほぼ通年 真冬以外は筋蝦が主流
水路ではなく 本流の方へテナガは移動して
いるのだろう 息子の職場で 異動が決まった
職員がすすり泣いていた というのを聞いた 私
も散々移動した 地方へ移動と言われた時に
は泣きたくなったが代わりに雨が降っていた
朝から 一尾だけ ほんの小さなタナゴが網に
かかった

罠の間の退屈しのぎに手製の網で水を掬った
意外にも五匹ほどタナゴが掬えた 白い網の
薄物の中にひしひしと震えている木の葉形の
魚体が薄青く光る 間をおいて何回かやると
しめて五匹の多分雌が 最後に引き上げた網
の方で 珍しく銀鮒が捕れた 飼うには少し大
きめか 人差し指 第二関節ぐらいの個体

三時すぎ 成果が出たので帰途についた 広場
に差し掛かった時 噴水が噴いているのが見え
た 昨年同様 かなり引いたところから撮った
通り過ぎる時 中学生くらいか 少女が三人
噴水の中でびしょ濡れにはしゃいでいるのが
見えた 去年も噴水は夏の終わりの方で見た
真ん中を突っ切っていきたいと思いながらゆっ
くり自転車を橋まで流した

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