マガジンのカバー画像

短文

378
創作 随想 回想 コラム その他 短文を集めています
運営しているクリエイター

#猫

猫を見ていただけの話

仕事をやめて暇とおもわれたか 実家から 物置ががさがさすると電話がかかる 父かこしらえた 元禽舎 ではなく物置ほどの鳥小屋 親父も鳥もいなくなって 鳥小屋は大きい物置となって 庭の角に立っている 鉄筋で まず思いついたのは鼠 雨つゆがしのげる古い炊飯器や 着古しの中で 鼠算しているかと思ったら違った 猫だった 庭を猫が横切っていくといっていた 掃き出し窓から 何をするでもなく老母は眺める こたつに座って 湯呑と手元にみかんをおいて とらが堂々と過ぎていく 横切るには狭すぎ

黒猫

黒猫 野良猫はきつい顔をしていた。石段の登り口に二匹でいて、オレンジ色の粒々を食べていた。金木犀の花に似ていたが細かい柿の種だったのだろうか。黒の子猫。 一月ぶりに外出した。半年ぶりの川べりだった。レンズから覗くと鳥やごみばかりが目についた。台風が過ぎたのだ。 雨風の際の猫は上方の茂みに身を隠していたのかも知れない。日曜日に降りてきた。 黄色い目玉を何度かこちらに光らせはしたが、気にとめられている風ではなかった。後で見ると黒い毛の固まりが古い階段に膨らんでいてどのよう

猫尊犬卑

猫尊犬卑 例えるなら猫が女性で犬が男、逆でもいい。 猫ばかりが厚遇され、犬は野良を行っておけ。主として力仕事のほう任せたからな。 何で犬ばかり、犬だって半分は雌だのに。そこはなんとか、巧くやれ。 これからは猫様を中心に据えた社会で行くから。もう決めたから。勝手かもしれないが、そう言っていたじゃない。長年控えに回ったのだからいよいよメインを行ってもらいます。 声が響かない。関係ないね。十分機敏でしなやかだから。これからは別にそれほど、身体を張る世ではなくなるから。匍匐