40年連れ添った話

40歳になるから一度胃カメラでも飲んでおくか。

そう思って今年の健診は胃カメラ付きのコースにした。会社員ではないので全額自費だ。会社が払ってくれるタイプの健診はみんなどんどんやった方が良い。色々オプション付けても全然安い。

今回の胃カメラは経鼻で、まあいけるでしょうと軽い気持ちで鎮静剤なしを選択。おかげで追加料金5,000円が浮いた。ちょっといいビールが3パイントは飲める。しかし次回は料金がかかっても鎮静剤を使うだろう。全てを垂れ流して強烈にしんどい中で自分の食道や胃の状態を見せられることになり、背中をさすり続けてくれる看護師さんの有難さが身に染みた。

検査医は「ピロリ菌の原感染の所見があります」という話をした。私らの世代は大体母親あたりが持っていて、産まれた直後にもらうことが多かったらしい。実際に見た胃の表面はツルツルしておらず、ややボコボコしていた。ちなみに「多かった」と過去形なのは、今は中学生くらいの段階で感染してるか調べて治療するのが一般的だそうで、母子感染がポピュラーだったのも過去のことらしい。全然知らなかったな。

そのへんの話を母から聞いたことがなかったので「知ってた?」と連絡したところ、母自身は20年以上前にとっくに除菌治療済みとのことだった。言ってよ。しかし当時は私にもちゃんと言っていたらしい。ただ引きこもり上がりの将来とかない10代後半の人間に"将来的な"健康リスクの話なんてしても自分ごとに思えるわけがなく、もちろん覚えていなかった。

この件に関しては普通に治療なので保険適用で薬をもらい、1週間ほど朝晩飲み続け、それから2ヶ月経過後に検査。そのまた2週間後に結果を聞きに行き、概ね除菌できてるっぽいことが確認できたので問題なく終わった。後はまた1〜2年ペースで胃カメラ飲んだりして様子を見ていく。

薬を飲んでいる最中のなんとなくの心境として、40年間連れ添ってきたおそらく唯一の相手(ピロリ菌)への情のようなものが一瞬無くもなかった。それを急に駆逐しにかかっているなんて、なんか殺生だな、みたいなことを少し思った。

しかし薬を飲み終えてから検査までの2ヶ月間、明らかに身体の各所に変化を感じた。

  • 以前よりもお腹が空きやすい(何を食べてもとにかく消化が良い)

  • それに伴い胃腸の状態が基本的にずっと良い(入出力どっちも良い)

  • なんだか髪が伸びるのも早い気がする(ただし既に失われた毛根は……)

などなど、緩やかながら全体的に状態異常から回復したような印象がある。

そもそもピロリ菌の何が悪いとされているのかといえば、胃がんになる確率を上げるのがメインだが、その一因としてピロリ菌は毒素を排出しており、それから身を守るために胃がどんどんツルツルではなくなっていくのだそうな。

40年間共生してきたと思って情まで抱きかけたが、ここに来て胃の好調っぷりを見せつけられるとマイナス補正入ってたんだなと思う。母も除菌治療をしてから胃薬のお世話になることがなくなったと言っていた。聞いた当初はそんなことある??と思ったが、まあ全然ありそう。マイナス補正を食らっている自覚がないだけで、他にも調べたらこういう何かは出てくるのかもしれない。

ちなみに胃は好調だが、何も節制せず受けた健診でもオールAを叩き出す、みたいなことは40代に入った瞬間からなくなり、生活なりの順当な数値が飛び出してくるようになった。あと身体のどこかが常に痛い。これが加齢である。

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