総合計画? いいえ、フランケンシュタイン計画です(施策評価(番外))
前回、浜松市の施策評価の問題点の一つとして、次のことをあげました。
・明らかに異質な内容が、施策や構成事業に紛れ込んでいる
こういう、”美しくない”状態が生じる原因を想像してみたいと思います。
1 施策区分と行政組織
まずは、各基本政策(政策)を構成する政策(施策)が、どの部署に所管されているかをみてみます。
見たところ、産業振興課は係長、他課は課長が責任者として記載されているようです。そして、「新規創業や新事業展開の促進」以外は、課あるいは係に、各施策が整然と配分されています。
次に、仮番号1に分類されていながら、具体的な事業がその中になかった”商工業振興施設整備基金積立金”を使う事業の代表として挙げられている”企業立地支援事業費補助金”がどこにあるかを見てみましょう。仮番号3の中にありました。
更に、仮番号1の中で明らかに異質だった”電気登録関連事業”を見てみましょう。この事業が産業経済分野の他の政策に持っていけそうかを考えてみましたが、適当なものはありませんでした。
では、なぜ、”商工業振興施設整備基金積立金”と”電気登録関連事業”が仮番号1に分類されているのか、これは、これらの事業を産業振興課が所管しているから、と考えるのが最も自然でしょう。
浜松市の組織図を見ると、産業振興課は産業部の筆頭課です。部内で複数の課にまたがる事業や適当な所管がない事業は、基本的に筆頭課が面倒をみます。企業立地推進課所管の事業以外にも、”商工業振興施設整備基金積立金”は使われているのでしょう。又、法定受託事務でやらねばならないが他に適当な部署がない”電気登録関連事業”も、産業振興課が引き受けているのでしょう。
2 総合計画のあるべき姿と現実
これに関しては、まず、ある行政学者の言葉を引用しましょう。
「計画策定の手順としては、まず将来のあるべき姿を構想し、抽象的・規範的・普遍的な理念から徐々に具体的・現実的・個別的な実現行動へと落とし込んでいくべきである。だが、現実には現行の計画体系や事務事業を基礎としてそれらを分解したり束ねたりしながら修正変更を行ったり、新たな体系案に掲げられた政策・施策に現行の事務事業を紐づけたりしている。」
浜松市の計画も上記の指摘に違わず、
「現行の計画体系、事務事業、”行政組織”を基礎としてそれらを分解したり束ねたりしながら修正変更を行ったり、新たな体系案に掲げられた政策・施策に”行政組織を考慮しつつ”事務事業を紐づけたりしている。」という状況になっている可能性が高いです。
大半の自治体の総合計画は、戦略的なものでなく、自治体の各組織とその背後にある省庁のセクショナリズムが具現化したような既存の事務事業を、企画部の担当者が”上手に作文”して繋ぎ合わせ、何とか遠目には見栄えの良いものにしたものにすぎません。
表題で”フランケンシュタイン計画”と書いたのは、こういう意味です。
なお、”電気登録関連事業”のような特に施策目的を持たないものは、無理やり総合計画の体系に当てはめる必要があるのか、個人的には疑問に思っています。
”やらざるを得ない”事務事業は執行評価の対象として別体系で評価を行えばいいのではないかと思います。