建設業社会貢献活動推進月間中央行事 発表事例 橋本店のSDGs~桜の植樹から緊急資材配備まで~
株式会社 橋本店(宮城県仙台市)
https://www.hashimototen.co.jp/
1.はじめに
〇橋本店の会社概要
SDGsの取り組みをご紹介する前に、簡単な自己紹介をさせていただきます。私たち橋本店は、仙台市に本社を置く地元建設会社です。完成工事高が東北地方のゼネコンで2番目という規模感の会社です。歴史は古く、今年で創業145周年を迎えました。実は、日本で初めてシールド工法を採用したのが当社です。主な事業エリアは宮城県ですが、近年では東京・四谷の韓国文化院の施工も行いました。特徴的な外観に見覚えがある方もいらっしゃるかもしれません。
〇SDGsの取り組みの全体像
さて、SDGs実現に向けた社会的な気運の高まりを受け、当社が本格的にSDGsの取り組みをスタートさせたのは、2020年の春です。このとき、重点課題・取組み方針を示したSDGs宣言を発表しました。ただし、ゼロから始めたというよりは、従来取り組んでいた社会貢献活動をSDGsに当てはめて捉えなおしたものも多々あります。同時に、各部門から若手社員を集め新たな活動案を提案してもらうなどして、これまでに様々な取組みを行ってまいりました。
そしてこちらが、これまでの取り組みをポスターにまとめたものです。
多方面にわたって活動しているのが、当社のSDGsの取り組みの特徴かと思います。今回はその中から、会社全体の取り組みと現場の個別事例に分け、いくつかご紹介したいと思います。
2.会社全体の取組み
〇桜の植樹
私たちは宮城県の建設会社ということで、東日本大震災発災時には約260件の出動要請を受け、その後も沿岸部を中心に約100件の復旧・復興工事に携わってきました。そういった施設の周辺を中心に、協力業者会である「橋本同心会」と協力しながら、桜の植樹活動を行っています。これは各地の発展の一助、地域の皆様の癒しになることと同時に、CO2吸収による地球温暖化対策も目指した取り組みです。
2016年にこの活動をスタートさせ、現在までに約1000本の植樹を完了しました。これまでに植樹をした場所を挙げさせていただきますと、震災の被災地域では、NHK連続ドラマ小説の舞台にもなりました気仙沼大島や、震災遺構・防災対策庁舎のある南三陸町震災復興記念公園などがあります。そのほか、令和元年の台風19号で被害を受けた丸森町など、植樹場所はこれまでに33箇所にのぼります。今後も2000本を目標に、活動を続けてまいります。
なお、これまでの植樹によるCO2削減量は、樹齢10年として年間約23,000㎏と推計されます。地球規模で考えると微々たる効果かもしれませんが、植樹を続けることで少しでも地球温暖化対策に貢献できればと考えています。
〇神社仏閣の支援
続いて、神社仏閣の改修・支援についてです。
建設会社の技術を活かして、地元の歴史ある神社仏閣を守り、次世代につないでいくことも、一つの社会貢献である考え積極的に取り組んでいます。
具体的には、東日本大震災で被害を受けた神社に復興を祈念して鳥居を奉納したり、地元町内会からの要望を受けて地域の神様の社殿を新築・寄進したり、といった活動をしています。直近では、写真の孝勝寺・釈迦堂の復原工事の施工を担当しました。釈迦堂は伊達藩ゆかりの建造物で、仙台市の登録有形文化財にも登録されています。仙台駅東口から徒歩10分のところにありますので、仙台にお立ち寄りの際は是非覗いてみてください。
〇働き方改革
「地域への社会貢献」とは少し外れてしまうかもしれませんが、地元建設業のリーダー企業として働き方改革にも積極的に取り組み、内容を発信しています。
当社の取り組みは大きく2つ、「労務管理の工夫」と「業務効率化の推進」に分けられます。「労務管理の工夫」としては、PCシャットダウンシステムの導入や、内勤者へのフレックスタイム制の導入、現場での終業を知らせるチャイムの放送などがあります。このほか、社員・協力会社には研修の場などで睡眠の重要性を伝え、8時間睡眠を推奨しています。「業務効率化の推進」としては、事務作業においてはRPA活用や経理処理の電子化、現場作業においてはウェアラブルカメラ導入やICT施工などを進めています。地元建設業ながら、最新技術にキャッチアップしながら取り組むことが重要だと
考えています。
これらの中でも特に効果が大きいと感じているのが、BIM/CIMの活用です。例えば大崎市役所建築工事では、鉄骨と設備配管の干渉検討にBIMを利用したり、BIMのシミュレーションを元に鉄骨建て方手順とクレーンの配置計画を見直したりしたことで、工期を1ヶ月短縮することができました。
これらの取り組みの結果、社員の時間外労働は昨年6月から今年の6月にかけ、大幅に減少しました。社員の88%が月の時間外労働が20時間以内となり、業界紙の紙面でもこれらの取り組みをご紹介いただきました。 今後は建設業界ではなかなかハードルが高い、 厚労省の各種認定制度の取得を目指しています。 直近ではこの7月にえるぼしの申請を行い、さらにくるみん取得に向け男性の育休取得支援制度を制定、将来的にユースエールにも挑戦する予定です。社員や現場作業員の働きやすさを実現し、それを積極的に発信していくことが、担い手確保、ひいては持続的なまちづくりにつながると考え、今後も取り組んでまいります。
3.現場での取組み
現場での事例として、宮城県発注吉田川河川改修工事(その4)で実際に行った取組みを中心にご紹介します。
〇カーボンニュートラル・環境汚染防止対策
CO2削減や環境汚染防止の取り組みをいくつか挙げてまいります。
まず、電動式バックホウの配備です。電気自動車同様、建設現場の重機についても電動化が進みつあり、当社では令和3年度に東北で初めて導入しました。災害時に燃料への引火で二次災害が防止されることから、災害時には特に有効であることを確認しました。続いて、廃油100%(B100)燃料の発電機使用です。常時稼働発電機の使用燃料を、軽油+5%程度の廃油であるB5燃料からB100燃料に転換しました。これにより、長時間稼働と燃料の消費抑制の両立を実現できました。
その他、ソーラー式信号機や、遠隔臨場を活用による移動用燃料の削減など、様々な場面でカーボンニュートラルに取り組んでいます。
環境汚染防止としては、カキ殻による水質汚濁防止対策を行っています。 こちらは、河川や海岸付近の現場で標準で実施しています。現場から発生しやすい土砂の汚濁水を、カキ殻を特殊加工した水質浄化材を通して排水することで、河川環境への影響を小さくしています。カキ殻という本来処分するしかなかったものを再利用するという点で、循環型社会にも寄与しています。
〇ICT施工
こちらの現場では、ICTバックホウの法面掘削を行いました。近年広がりつつあるICT建機は、施工精度の向上、手元人員の削減、丁張人員の削減など、導入効果が大きいと当社でも捉えています。建設業の生産性向上、ひいては若い担い手確保にもつながると考え、積極導入しています。
〇災害への備え
この現場に限らず、当社では東日本大震災や台風被害の経験を踏まえ施工現場で緊急資材の配備を行い、災害発生時に迅速に対応できるようにしています。また、施工現場以外でも付近の地元住民が困っているときは土のうを提供するなど、地域と一体となって災害に備えています。なお、会社全体でも事業継続に関する「レジリエンス認証制度」を取得し、地元自治体等と災害協定を結ぶなど、自然災害への備えを進めております。
4.まとめ
以上が、当社のSDGsの取り組みのご紹介となります。
まだまだ手探り状態の部分もありますが、まずは行動・実践することが大切と考えています。
当社のシンボルマークである「空を飛ぶクジラ」のように、時代に合わせ進化し続ける会社であるため、今後も様々な取り組みを行っていきたいと思います。
[全建ジャーナル2023.9月号掲載]
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