都道府県建設業協会の広報活動 受け手に応じた戦略的広報活動取組み
一般社団法人 三重県建設業協会
【取組み目標】
・土木建築系工業高校卒業生の県内建設業への就職拡大
・普通科高校など建設業の人材輩出元の拡大
・多様な技術者からの発信による人材の確保と定着
三重県の建設業では、今後、高齢化等により技能労働者が大量に離職することが見込まれ、建設業が引き続き「地域の守り手」として役割を果たしていくため、建設業の将来を担う若者の入職・定着を促し、人材を確保することが急務となっております。
三重県の人口減少の現状
三重県による人口動態に関する報告によると2020年(令和2年)国勢調査結果では、三重県の減少率は過去最大の2.5%であり、2020年以降も全国の減少率を上回るベースで人口減少が推移する見込みとなっています。また、県内高校卒業生が県内大学に進学する割合は約2割であり、約8割は県外の大学に進学となっているなど、転出超過は増加傾向にあり、特に南部地域の社会減による人口減少率が高い状況にあります。
出典:三重県の人口減少の現状(三重県)
文部省「学校基本調査」をもとに三重県が作成
三重県内の土木建築系工業高校卒業生の現状
三重県の中小建設企業の人材の輩出元は、県内の高校となっていました。
しかしながら、三重県にある土木建築系工業高校は8校しかありません。この土木・建築系工業高校の卒業生の25%が進学をしています。
また、三重県は北勢地域を中心に電気・電子及び機械等の工場が多く立地していることもあり、土木・建築系学科卒業生においても約4割が建設系以外の企業に就職しており、土木建築系工業高校卒業生のうち県内の建設業関連企業への就職者は毎年80名程度(3割弱)と、建設業就業者の輩出元と期待される土木・建築系工業高校卒業生の県内建設業への入職者が減少しています。
このため、土木建築系以外の学科の工業高校の卒業生及び県内就職を希望する普通科高校の卒業生が県内建設業に就職する取り組みが必要となっています。
これまでの広報活動の課題と反省
現場見学会等の開催や地元テレビ等のマスコミを活用した建設業の魅力発信の取組みは、一定の効果はあったものの建設業関係者と世間一般との認識にギャップがあったことにより、担い手不足が一層厳しい状況となっていると考えました。また、理解を得たい情報の受け手にこれまでの広報は届いていなかったとの反省のもと、①具体的な目標設定と伝える内容の設定、②適切な方法による受け手への発信といった課題を踏まえたうえで、三重県建設業協会では、戦略的広報について検討を行いました。
三重県建設業協会の戦略的広報
① 広報のターゲットとその内容を明確にし、建設業の姿を正しく伝え、理解と信頼を醸成する。
○小学生・中学生:現場の魅力をPR
○ 高校生・保護者:モノづくりの楽しさ・職業としての建設業をPR
○世間一般:建設業の社会的意義をPR
② 期待している情報、広報の受け手に、今まで見えていないものに「気付いて」もらい、意識されるための、受け手に応じた取組を進める。
○小学生・中学生:現場見学会、出前授業の開催
○ 高校生・保護者:実習授業の支援、インターンシップの受入、現場見学会、出前授業の開催
③入職促進に関する関係機関との連携
○ 三重県教育員会:学校・教員との連携(定期的な交流会、意見交換会など)、保護者に対する働きかけへの理解促進
○ 三重県土整備部:現場見学会、出前授業、実習授業の実現の共同取組みと実施企業の評価
○ 三重労働局:労働局、教育員会及び就職担当教諭と建設業協会の定期的な意見交換会、建設業の担い手確保取組みへの財政的支援
④学校・教員との連携
○総合的な探求の時間への参画
・ 実習授業の支援(出前授業):学校内において、協会支部がコンクリート工事、舗装工事、測量等を実習授業の一部として実施する。
・ 進路指導の支援として、女子生徒と女性技術者の交流会を開催し、就職後の不安解消と建設業における女性活躍を送信する。
○土木・建築系工業高校等との連携強化
・ 土木・建築系工業高校の進路指導担当教諭、就職アドバイザーと協会企業のOB、OGとの交流会の開催。
・ 普通科高校進路指導担当教諭、就職アドバイザーと現場体験と協会企業との交流会の開催。
○土木建築系工業高校生徒の資格取得支援
・ 建設業経理事務士3級・4級取得支援研修の開催
・ 2級建築施工管理技士補資格取得(1次試験対策)研修の開催
⑤ 様々な手法を駆使してメッセージを発信する広報
○ 伝えたい受け手と広報テーマに応じて戦略的にメディアチャンネルを設定。
・ 次の世代のために建設産業も取り組んでいるというメッセージを発信する広報を推進。
・ 現代のクチコミであるソーシャルメディアの活用。
○様々な発信者による広報活動
・ 若手技術者からの情報発信
・ 女性技術者からの情報発信
具体的な取り組み事例
○様々な手法に情報発信(SNSの活用)
①Twitterによる情報発信
2021年6月の開設以来、476件のツイート
現在、271フォロワー
②YouTubeによる情報発信
登録者数は239人、63本の動画を発信しました。
③協会女性部部会「パールこまち」
④出前授業による実習授業支援
⑤進路指導担当教諭との交流会
⑥女性技術者交流会
[全建ジャーナル2023.9月号掲載]
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