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「工期に関する基準」の改定について

国土交通省 不動産・建設経済局建設業課

1.背 景

建設業において、若者を含めた将来の担い手確保・育成をしていくためには、長時間労働の是正や、休日を取得できる職場の実現に向けた働き方改革を一層推進する必要があります。令和6年4月から建設業においても時間外労働規制が始まりましたが、これを改革を前進させるチャンスととらえ取り組んでいかなければなりません。
そのためには、DX化の推進やバックオフィスとの連携など、建設業者における生産性向上も不可欠ですが、発注者も含めた関係者の理解・協力のもとで適正な工期の設定を推進していく必要があります。
これまで、適正な工期の設定に向け、令和2年7月に中央建設業審議会が作成・勧告した「工期に関する基準」の周知徹底を図ってきたところですが、令和6年4月からの上限規制の適用も踏まえ、規制の遵守を図るべく、同年3月、同基準を改定しましたので、その内容について御紹介します。

2.工期に関する基準の概要

工期に関する基準は、適正な工期の設定や見積りにあたり発注者及び受注者(下請負人を含みます。)が考慮すべき事項の集合体であり、建設工事において適正な工期を確保するための基準です。当初契約や工期の変更に伴う契約変更に際しては、本基準を用いて各主体間で公平公正に最適な工期が設定される必要があり、その結果として、長時間労働の是正等の働き方改革が進むことで建設業が担い手が安心して活躍できる魅力ある産業となり、他方、発注者としても自身の事業のパートナーが持続可能となることで質の高い建設サービスを享受することができ、相互にとって有益な関係を構築するための基準でもあります。
本基準は、第1章を「総論」とし、「建設工事の請負契約及び工期に関する考え方」や「工期設定における受発注者の責務」等を記載しているほか、工期に関し考慮すべき事項として、第2章「工期全般にわたって考慮すべき事項」、第3章「工程別に考慮すべき事項」及び第4章「分野別に考慮すべき事項」の3分野を中心に構成されています。
なお、著しく短い工期の疑義がある場合には、本基準を踏まえるとともに、過去の同種類似工事の実績との比較や建設業者が行った工期の見積りの内容の精査などを行い、国土交通大臣等が工事ごとに個別に判断することとされています。著しく短い工期による請負契約を締結したと判断された場合には、発注者に対しては建設業法第19条の6に規定される勧告がなされ、また、建設工事の注文者が建設業者である場合には、国土交通大臣等は建設業法第41条に基づく勧告や第28条に基づく指示を行うことができるとされています。

3.改定内容

同基準について、令和6年3月に見直した内容は以下のとおりです。
(1)請負契約及び工期に関する考え方・工期設定における受発注者の責務について
・ 本基準を踏まえた適正な工期設定は、契約変更時でも必要であることを明記しました。
・受発注者間のパートナーシップ構築が各々の事業継続上重要であることを記載しました。
・ 受注者は、契約締結前又は変更契約が必要となる際、時間外労働規制を遵守した適正な工期による見積りを提出するよう努めることを位置づけました。
・ 発注者は、受注者や下請負人が時間外労働規制を遵守できる工期設定に協力し、規制違反を助長しないよう十分留意することを記載しました。また、発注者は、受注者から、時間外労働規制を遵守した適正な工期による見積りが提出された場合、内容を確認し、尊重することを記載しました。(元下間についても同様)
(2)工期全般・工程別に考慮する事項について
・ 自然要因(猛暑日)における不稼働を考慮して工期を設定することを追記しました。
・ 十分な工期確保や交代勤務制の実施に必要な経費は請負代金の額に反映することを記載しました。
・ 勤務間インターバル制度は、安全・健康の確保に有効であることを記載しました。
・ 技能労働者やオペレーターの移動時間も労働時間に含まれうる旨や、運送業者が物品納入に要する時間を考慮する必要性を追記しました。
(3)その他
・ 建設資材価格高騰を踏まえた適切な価格転嫁の対応として、資材の納入遅延や高騰は、サプライチェーン全体で転嫁する必要があることを記載しました。
・ 各業界団体の取組事例等を更新しました。

関係者の皆様におかれましても、工期に関する基準の改正の趣旨をご理解いただき、働き方改革の推進にご協力をいただきますよう、お願いいたします。

「全建ジャーナル 2024. 5月号記載」


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