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建設業社会貢献活動推進月間中央行事 発表事例 テレビ番組「建設人(つくりびと)」の制作について

一般社団法人 高知県建設業協会

はじめに
 
当協会では、令和3・4年度に、国土強靭化事業と、その施工に携わる建設業の人たちにスポットを当て、県民の皆様に地域建設業の姿、役割を知って頂くための特別テレビ番組「建設人(つくりびと)」を制作、放映しました。
 第1 弾は令和3 年11 月21 日、サブタイトルを「津波から高知の人命と財産を守る」として、日曜夕方5時から30分番組、高知放送(日本テレビ系列)で放送しました。来たる南海トラフ地震対策として高知県内で行われている津波対策工事や、その現場で働く従事者へのインタビューを中心とした内容としました。
 そして、第2弾は令和4年10月16日、第1弾と同じく日曜夕方午後5時から30分、サブタイトルを「土佐の国づくりの歴史をつなぐ」として、同じ高知放送で放送しました。
 以下、本稿で内容をご紹介します。
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 2回の番組づくりにアドバイスを頂いた国交省、高知県土木部、そして番組にご登場いただいた協会会員の方々はもとより、商工会議所会頭・副会頭、地域住民の方、国交省の皆様、県土木部長、そして濵田高知県知事、皆々様には誌面をお借りして厚くお礼申し上げます。

テレビ番組第2弾
「建設人(つくりびと)-土佐の国づくりの歴史をつなぐ- 」について

〇テーマの検討
 高知県土木の歴史は、自然との共生、闘いの歴史と同義であることは論を俟ちません。南を太平洋、北を険しい四国山地に囲まれた本県は古来幾度も猛烈な台風や地震津波の襲来を受け、その都度先人達は、県土復旧と防災事業に知恵を絞り工夫を凝らしてまいりました。
 高知県土木の歴史をたどり、今日まで人々の生命財産を守り安全安心な暮らしを実現してきたのは建設業であることの史実を伝えたい。そしてその歴史を受け継ぎ、新たなインフラ整備によってより豊かな未来を築き上げていく、その使命感を伝えたい。番組作りにその思いを込めました。
 次に、番組の内容の一部をご紹介します。

〇番組紹介① 高知県の道路

参勤交代の際に使用されたルートと現在の高速道路の ルート

 江戸時代の参勤交代で街道の整備が行われた際、当初は県東部から徳島県を抜け、海路を使って本州に渡っていましたが、6代藩主(山内豊隆)の時に四国山地越えの道を整備して、瀬戸内海へ出るルートを使うようになりました。その道は現在の高速道路のルートとほとんど変わっていないのです。道は集落と集落を結び、そこに暮らす人やものが移動するために造られ、集落の位置が大きく変わらない限り、集落間をなるべく最短で結びたいという思いは昔から変わらずあるものです。険しい四国山地を縫うように安全に抜けていくために造られた道は、理にかなったものであり、先人たちの偉大な知恵でした。
 現在では、四国内で「四国8の字ネットワーク」という道路の建設が進んでいます。この事業は、四国各県の中心都市を高速道路で効率的に連結し、地域交流や連携を生み出し、災害発生時の緊急輸送道路の確保や寸断されることの無い安心・安全な道路ネットワークの確立などを目的としています。
 高知県内でも高速道路の延伸化が進んでいますが、県東部で進む延伸化工事の現場では、公共事業としては日本初となる3Dプリンタを活用した集水桝が活用されています。この最新技術を活用した施工によって、工期や人員を半分以下にすることができました。

〇番組紹介② 河川の整備(日下川新規放水路)

日下川浸水被害の様子

 道路の発展と共に私達に欠かせないのが、川の利水や治水の発展です。昔から先人たちは河川堤防の整備に尽力してきましたが、当時の技術では対策に限界があり、度重なる水害に悩まされてきました。
 高知県中部を流れる一級河川仁淀川の支流、日下川が流れる地域では、普段はおとなしい川でもひとたび大雨が降ると川が氾濫し、周辺が浸水してしまう被害が多く発生していました。というのも、通常河川は、上流から下流に水が流れていきますが、この地域の特徴として、実は上流の地盤が低く、下流の地盤のほうが高かったため、水が本川に流れていきにくくなっていたのです。そのため、大雨の際本川である仁淀川の水位が上がると、支流の日下川の流れが悪くなるとともに、本川の水が逆に支流に向かい大規模な氾濫が発生していました。こういった悩みをふまえ、この地域では“国や県を中心に、地下にトンネルを掘り、洪水の時にトンネルに川の水を通して仁淀川に排水する”といった放水路事業を進めています。

日下川放水路事業現場
3Dプリンタを活用した集水桝の製作の様子

〇番組紹介③ 津波対策事業「三重防護」

浦戸湾で進む三重防護のラインについて

 さらに、「国土強靭化」対策の事例の一つ、三重防護と呼ばれる津波対策も進んでいます。
 三重防護とは、高知市にある土佐湾の支湾浦戸湾から高知市中心部に津波が浸水するのを、第一ライン、第二ライン、第三ラインの3つのラインによって防ぐもので、発生頻度の高いレベル1津波に対しては浸水を防ぎ、想定される最大クラスのレベル2津波に対しては、浸水時間を遅らせ避難時間を稼ぐ、という役割を持っています。
 第一ラインの防波堤では、基礎捨石が流れ出さないように保護する被覆ブロックを作り、防波堤を粘り強くする工事が進んでいます。

実際に現場で作られている被覆ブロック

〇番組紹介④ まとめ
 土佐の大地が生まれ、人々が暮らし始めてから長い年月をかけて発展してきた現代。そのかげには、幸せな生活を営むために、そして災害から人命や財産を守るために、努力を重ね経験を伝え続けてきた先人たちの歴史がありました。この安全・安心な土佐の国づくりの歴史は、官と民、そして今を生きる私達も、一緒になって国土強靭化の理念のもと、未来へとつながっていきます。

〇視聴者の方からいただいたご意見
 視聴者の方からは、「県内で暮らす方の安心・安全のために少しでも役に立ちたいとの姿に感銘を受けた。」「たくさんの方が昔から建設業に携わっ
てきてくれたおかげで、今安心して便利に生活できているのだなと思った。」「建設業のイメージは、きつい・汚い・危険の3Kだったが、番組を見てイメージが一新され、同時に技術力の進歩に驚いた」等、たくさんのご感想をいただきました。

一部しかご紹介できないのが残念ですが番組紹介は以上です。

 結びに、余談になりますがNHKで放送中の連続テレビ小説「らんまん」では、主人公“槙野万太郎”の学友として広瀬佑一郎という人物が登場します。 この人物、実は牧野富太郎と同郷で同い年、佐川町出身の土木工学者“廣井勇”がモデルとなっています。(補足:廣井勇=明治土木工学の第一人者で北海道小樽の防波堤工事に携わり、橋梁、築港のほかダムや水力発電、波力発電等幅広い分野で足跡を残すとともに、東京帝大教授として多くの優れた土木工学者を育てました。)
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 拙稿をお読みいただき、ありがとうございます。
 高知県にお立ち寄りの際は、坂本龍馬、中岡慎太郎だけでなく、牧野富太郎や廣井勇等々、様々な歴史・偉人に触れていただけると幸いです。

[全建ジャーナル2023.9月号掲載]

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https://forms.office.com/r/quhAX2Nejq
今後の参考とさせていただきます。

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