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世界は安いものからできているのたん

有機化学を始めるにもまず原料が必要たん。
今回はいくつか基礎化学品の製造のつながりを見ていきたいたん。

さて、身の回りに目を向けてみればとりあえず空気があるたんから
窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素は手に入りそうたん。
地球にたくさんあるものも使うことができて、地殻存在比の順に
ケイ素、アルミニウム、鉄、カルシウム……辺りまでは酸化物や炭酸塩の形でその辺に落ちているたん。
海まで足を延ばせば、海水中から塩化ナトリウムを取り出せるたん。
塩化ナトリウム水溶液を電解すれば水酸化ナトリウムとか塩素を得られるので道具がそろってきたたん。塩素からは塩酸も作れるたん。
火山の近くに行けば硫黄を拾うこともできるたん。
これを酸化して硫酸、亜硫酸を手に入れられるたん。

植物はその辺に生えているたんけど、彼らの体はセルロースでできているたん。これはグルコースの多量体たん。植物は二酸化炭素と水からグルコースを大量に作っているたんから、これも使っても良さそうたん。
微生物の力を借りればここからエタノール、酢酸も作れるたん。

グルコース、エタノール、酢酸

植物が化石になると石炭になるたん。
世界にはありがたいことに石炭を産出する場所があって、これは長大な炭化水素のようなものたん。
これと水を熱することで下式のように一酸化炭素と水素を得るたん。

色々ごまかしてある水性ガスの合成

もちろん石炭そのものを不完全燃焼させることでも一酸化炭素を得ることができて、例えば鉄の還元に使われているたん。製鉄所たん。

大雑把な鉄の還元

こうやって炭素を還元剤として用いることはほかのものでも行われていて、例えばリンなどはリン酸を同様に炭素で還元することで製造されているたん。優れた還元剤である一方、当量の二酸化炭素を出してしまうので最近は問題なのたんけど、それはまた今度話すたん。

さて、水素(と鉄)が手に入ったのでせっかくだからアンモニアを作っておくたん。ハーバー・ボッシュ法たん。水素と窒素はミターシュ先生が絶大な努力の後に発見された鉄触媒を介してアンモニアを与えるのたん。

現代だと500度くらいで行われるのたん

アンモニアがあれば当然これを酸化して硝酸にすることができて、オストワルト法によれば下式のように合成できるたん。ただしこれには白金触媒を必要とするので、日本だと十勝とかに探しに行く必要があるのたん。

とても簡単にしたオストワルト法の式

そろそろ有機化学らしいことをしたいたん。一酸化炭素を水素で還元すればとりあえずメタノールを得るたん。

メタノールの合成

ロジウムやイリジウムのような貴重な元素を頑張って探してくることができれば、それらを触媒に酢酸を合成することもできるたん。いわゆる、モンサント法やカディバ法たん。ようやく植物と生物に追い付いてきた感じたん。

触媒サイクルは省略たん

もう少し先に進むには、今のところ石油の力を借りないといけないたん。
中東を中心に世界には石油が湧き出ているところがあって、ここからは石炭よりも分子量の低い、液体の炭化水素を取り出すことができるたん。石油から低沸点成分を取り出してきたものをナフサといって今は70円/Lくらいで売ってるたん。ナフサは炭素数8-10くらいの芳香族炭化水素が主なので、これを水蒸気とともに熱分解して以下の化学品を得るたん。

エチレン、プロピレン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ブテン、ブタジエン

これがいわゆるナフサのクラッキングであって、この方法でエチレンを作るエチレンプラントが日本にもいくつか存在しているたん。
エチレンやプロピレンは重合させることでポリエチレン、ポリプロピレンといったプラスチックを作ることができるのたん。

ポリエチレン、ポリプロピレン

とても安いのでスーパーの袋をはじめ自動車部材に至るまで広く使われているのたん。

また、このクラッキングによっていわゆるクメン法の材料がそろったのたん。ベンゼンを直接酸化してフェノールにすることは難しいたんけど、この方法で簡単に作れるのたん。

クメン法たん 真ん中がクメンたん

フェノールは様々なことに使われるたんけど、例えばクメン法の副生物のアセトンと組み合わせてビスフェノールAを作ることができるたん。
これはポリカーボネートというプラスチックの原料などに使われるたん。ポリカーボネートは透明さと頑丈さを活かして乗り物の窓とか光ファイバーとかいろいろ使われているたん。

ビスフェノールAたん

フェノールのほかの用途としては、医薬品の合成があるたん。
簡単な例としてはフェノールのナトリウム塩に対して高温高圧で二酸化炭素を作用させるコルベ・シュミット反応で得られるサリチル酸があって、これを無水酢酸でアセチル化すればいわゆるアスピリンを合成できるたん。
頭が痛くなっても安心たん。

アスピリンの合成たん

あともういくつか系統はあるたんけど、安いものはここまでに出てきたものくらいたん。他のものはここに出てこなかったような高級な元素との組み合わせか、安いものを原料にした化学的な変換によってできているのたん。
みんなも身近なものがどんな安いものに帰着するか考えてみるとよいたん。

このように現代の人間の生活はエネルギー面ばかりでなく、物質面でも大きく石油に依存しているのたん。石油は安価に大量に存在していて、世界を作るための原料として好適なのたん。
ところが炭素を含む化合物は燃焼によって二酸化炭素を生じるのたん。これがいま地球温暖化を引き起こしているのたん。

地球温暖化防止のために石油が使えないとなると、人間を守るための頑丈な素材や、医薬品を諦めることになってしまうのたん。
でもそうはいかないのたん。
これほど人が死ななくなった生活を諦めるわけにはいかないのたん。
そのために多くの研究がされているたん。
いつかそれの話をするたん。

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