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『COVID-19』が教えてくれたこと (第7回)

第7回目の今回は「ウイルスの戦略」について考えてみましょう。

と言っても、ウイルスに頭脳がある訳ではありません。
第3回で説明しましたとおり、遺伝子と『エンベロープ』と呼ばれる脂質の膜とから成り立つ、ウイルスの構造から予想されるウイルスの目的は、唯一「増殖する」事なのです。

ウイルスの戦略

ウイルスの目的は「自己増殖」です。

しかしウイルスは、宿主の細胞が無いと「自己複製」できない寄生体でした。
なので、ウイルスは、まず宿主に「感染する」必要があります。

ウイルスは「変異」して進化する過程で、「感染する」ために便利な様に、『エンベロープ』の表面に『スパイク』と呼ばれる突起物を持ったのです。

繰り返しますが、これらの戦略は頭脳で論理的に考えて採った戦略ではありません。
「変異」の繰り返しの果てに、「自然選択」で残った最適解なのです。
(この選択の仕組みは、AIの『機械学習』も原理的には同じです。)

首尾よく宿主の細胞内に侵入を果たしたウイルスは、宿主細胞の自己複製の仕組みを利用して、遺伝子と『エンベロープ』の「複製」を始めます。
 DNARNAタンパク質

SARS-CoV-2 』の遺伝子の場合は、実体がRNA(リボ核酸)ですから、この「複製」プロセスの途中から利用する事になります。
第3回で述べたとおり、この様にして目的である「自己増殖」を達成します。

宿主細胞内で増殖したウイルスは、宿主細胞の細胞膜を突き破って、細胞外へと脱出します。
こうして、感染細胞は障害されて壊されてしまうのです。

宿主の体内では、この様に病状を発症するのですが、ウイルスの『毒性』があまりに強いと、結局、宿主自体が死んでしまう事になります。

宿主自体が死んでしまうと、ウイルスもそれ以上増殖できませんから、宿主の体外に出て、別の宿主に『感染』して増殖を続ける他ありません。

従って、『感染力』を強くする方向で『変異』する事は、ウイルスの目的に
とって有効な選択なのですが、一方で究極、宿主全体が全滅してしまえば、ウイルス自身も全滅してしまうので、『毒性』を強くする方向の『変異』はウイルスの目的にとって、あまり有益ではないと考えられるのです。

(参照)新妻免疫塾 https://www.youtube.com/watch?v=MhErT2o8zQg

前述のとおり、『SARS-CoV-2 』はRNAを遺伝子に持つウイルスですから「進化」のスピードが早い事が特徴です。
これは、RNAの構造が化学的に『変異』し易い事から理解されます。

言い換えるならば、「機械的な学習速度」があまりに早く、言葉自体の矛盾を許容するならば、『自然の「人工知能(AI)」』と呼んでも良いのかもしれません。
とにかく、賢いのです!

私たちが「ウイルスとの闘い」に手こずっている理由も、この辺にあるのだと思います。

さて、「見えない敵」であるウイルスの存在を私たちが認識しているのは、その『毒性』と『感染力』に気付いたからです。

この点においても、SARS-CoV-2 は賢いウイルスで、感染者に気付かれない無症状(サイレントキャリア)の内に、先に感染力を発揮する術を身に着けています。
こうしたサイレントキャリアは、スーパースプレッダーになり易いと考えられているのです。

これまで述べた「ウイルスの戦略」を前提に考えるならば、SARS-CoV-2 の進化の方向性は『強い感染力』と『弱毒化』の方向に向かう確率が高い、と分かります。

実際に、第2波と呼ばれている現在の日本の感染拡大状況も、上記を裏付る傾向にある事が報告されています。
これは、あくまで推測ですが『強い感染力』と『弱毒化』の方向に『変異』した、「変異型SARS-CoV-2 」が現在の流行の中心に居るのでしょう!

では、上記の予測が正しいとすると、私たち日本人の側の戦略は、どうする事が効果的なのでしょうか?

敵を知り、己を知らば百戦危うからず

前回までに「人体の免疫システムの戦術」を、そして今回「SARS-CoV-2 の
戦略と戦術
」を解明しました。
次回以降では、いよいよこの難問に取り組んで行きたいと思います!

次回も、また是非読んで下さいネ♥


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