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『COVID-19』が教えてくれたこと (第3回)

第3回目の今回は、「ウイルス学」の基本をおさらいしておきましょう。

その前に、第1回目の記事で私がうっかりと『COVID-19との闘い』の事を『生物間の生存競争』と書いた事を、まず訂正しておきたいと思います。
問題であるのは「ウイルスは生物か?」という点です。

また、同じ第1回目で私は「ウイルスの本質は『情報』である」と云う事を書きました。
これは、京都大学の畑中正一先生が NHK教育テレビのテキストの中で書いておられた言葉です。

私自身、専門外で恐縮なのですが、亡母の闘病の際に『ウイルスとの闘い』を経験し、それなりの勉強も重ねましたので、一般の方にも分かり易く説明できるのではないかと思い、恐れずにチャレンジしてみる事に致します。

『ウイルスとの闘い』

このタイトルは、現下の『COVID-19との世界大戦』を直接表しているのではありません。
これは、先に書いた京都大学の畑中正一先生の NHK教育テレビのテキストで使われていたタイトルです。
番組は1993年4月~6月に放送されたものです。

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皆さんもご存じの、クィーンのフレディ・マーキュリー(Freddie Mercury)がエイズで亡くなったのが 1991年11月 ですから、当時人々に最も恐れられていたウイルスは、おそらくエイズでしょう。

尤も、私の母は『成人T細胞白血病』という病気で 1995年4月 に亡くしました。

1993年のお正月、東京から福岡に帰省した際に、大学病院の主治医の先生から母の病名を聞かされて、この病気の治療法が当時確立して無い事、そして母の余命の見通しが「残りおよそ一年」である事を告げられました。

私と母とは前年の夏に父を亡くしたばかりで、母は単身で福岡に住んでいましたので、私は東京で経営していた会社を整理して急遽帰福したのです。

1993年4月は東京から福岡に帰って来て、母と二人で新たな生活をスタートさせたばかりの時でした。
幸い、私は東京からの紹介で、専門学校の非常勤講師の職を得ていたので、食べていく事と母の介護とを両立させつつ、さらに母の病気について詳しく勉強する時間を確保する事ができたのでした。

さて、「ウイルスは生物か?」という問いなのですが、「生物」とは定義によると、
① 入れ物(外界との境界膜)を持つ
② 自己複製できる
③ 自己維持できる
④ 進化する
以上の四つの条件を兼ね備えています。

上の定義に従えば、同じ「病原体」でも「細菌」は生物であり「ウイルス」は生物ではないと云う事になります。
つまり、自分単体では生きられず、他の生物に寄生して生きる寄生体です。

その中核に DNA(デオキシリボ核酸)や RNA(リボ核酸)などの遺伝子を持ちますし、いちばん外側に「エンベロープ」と呼ばれる脂質の膜を持つものもいます。
そして「変異」して進化しますが、「自己維持」のために他の宿主を必要とする点、さらに宿主の細胞が無いと「自己複製」できない点が「生物」とは異なる点だと云えます。

またさらに、「レトロウイルス」と呼ばれる RNAウイルスの仲間では「逆転写酵素」を持ちます。

通常、人間などの DNA を遺伝子として持つ生物の場合には、
 DNA ⇒ RNA ⇒ たくぱく質
の流れで、体細胞を作っていくのですが、「レトロウイルス」の場合には、この「逆転写酵素」を使って RNA から DNA を作り出す事が出来るのです。

この事は、「レトロウイルス」が人間の DNA の中に、移り住む事が可能である事を意味しています。

実際に、私の母の『成人T細胞白血病』の場合では『HTLV-1』という感染力の弱い「レトロウイルス」が原因でリンパ腫(ATL)を発症するのですがこの「レトロウイルス」は、外部から体内に侵入し、普通は作られた抗体の働きで体の中からウイルスを取り除くことができますが、『HTLV-1』の場合侵入した『Tリンパ球』の中で、さらに DNA の中へ入り込んでしまうため、せっかく作った抗体では取り除くことができなくなってしまうのです。
つまり『HTLV-1』は侵入した『Tリンパ球』の遺伝子の中で生き続けることになります!
この状態は「持続感染」と呼ばれます。

感染経路としては、主に母乳感染と輸血によるもので、私の場合も母の母乳で育ったので、後日抗体検査を受けたのですが、結果は陰性でした。

それはともかく、これがきっかけで私は「免疫学」と「遺伝子治療」とに、深く関心を寄せられたのです。

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お気付きの方もおられるかも知れませんが、結果的に亡母は3年間に渡って『ウイルスとの闘い』を闘い抜きました。
そして傍らで私も『医療と経済』、さらに何よりも『無知との闘い』を闘い続けていたのだと感じています。

ウイルスの本質は『情報』である

畑中先生のこの言葉は、「核酸が情報を、そしてたくぱく質は機能を担う」との意味として私は理解しています。

しかし、この言葉の含意はさらに深遠です。
そして今では、『生命』の本質は『情報』である
この様に、私は考えているのです。

次回は『免疫学』について、基本的な知識をおさらいしてみましょう。
また、是非読んで下さいネ♥


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