こころの時間 - 法伝寺 山中是道

神戸にある日蓮宗のお寺の住職をしています。阪神大震災に被災した事がきっかけでお寺で預かってもらい育ててもらった事がご縁で15才から修行に入り出家しました。ですが、普通の家庭で生まれた在家出身ですので、身近な仏教の発信ができればと思っています!

こころの時間 - 法伝寺 山中是道

神戸にある日蓮宗のお寺の住職をしています。阪神大震災に被災した事がきっかけでお寺で預かってもらい育ててもらった事がご縁で15才から修行に入り出家しました。ですが、普通の家庭で生まれた在家出身ですので、身近な仏教の発信ができればと思っています!

最近の記事

兵庫県知事選から考える、何が善で何が悪なのか

兵庫県知事選は沢山の社会的問題を提起しました。その中でメディアの報道に対する問題というのをまざまざと見せられて、考えさせられる機会にもなったと思います。 という私も神戸のお寺の住職ですから、興味関心をもってテレビとネットそれぞれの意見を調べて、結果的には斎藤知事に投票しました。 同時にお坊さんですので、この何が善で何が悪なのかが入り乱れる状況の中で、仏教は、仏様は何が正しいと行っているんだろうか。そんな事も考えたりするわけです。 今後もこういった事は沢山あるでしょうから

    • 死んだらどうなるの?問題について

      死後の世界はどうなっているんだろう?これはどの宗教にも投げかけられる普遍的なテーマだと思います。 でも、なんかあの世に行くんでしょ?とか、なんか生まれ変わるんでしょ?とか、なんかどこかにいて見守ってくれているんでしょ?とか。 以外に曖昧で人によって考え方が違うところも日本人の面白いところだなぁと思います。これはもしかしたら神道の死後の考え方が、あまり固定されておらず、色々あって、そこに仏教の考え方が混ざったのでさらに複雑化したからかもしれません。 なのでこの機会に仏教で

      • 「あなたの宗教は何ですか?」

        こう聞かれて答えに困る、留学生や駐在の日本人が多いと聞きます。 神道なのかそれとも仏教なのか、でもどっちも信仰してるかというと良くわからないし、なんだったらクリスマスだってするし。。。 いち日本人の僧侶として、この質問に真正面からちゃんと答える、一つのアイデアをシェアしたいなと思います。 結論から言うと、宗教っていうコンセプト(概念)が欧米と日本とは違うんだよ。と説明してあげることです。 実は「宗教」という日本語は明治時代に、英語の「Religion」を翻訳して出来た

        • 豊かさとは、時間に満足する事

          昨今は選挙も有り、世の中では政治や経済の話が毎日報道を賑わしています。その中でいかに日本が豊かさを取り戻すか、国民が豊かさを取り戻すかという事が議論されています。 国の豊かさは一般的にはGDPで測られます。では個人の豊かさの指標とは何なのか? もちろん色々な考えがあって良いのですし、経済学的な見方もあると思います。それと同時に宗教的な、仏教的な側面からも考えてみたいと思います。 仏教的な一つの結論として「時間に満足しているかどうか?」という事が言えるのではないかと思いま

          宗教って怖いもの?

          「宗教」って何だか怖いイメージありませんでしょうか?例えば盲信して人の意見をきかなくなっちゃうんじゃないか、とかお金や時間を沢山取られてしまうんじゃないかとか。 今、ちょうどスリランカのお寺に来ています。地域の活動と家族や社会の考え方と、個人の生活が「宗教」というものを通じてすごく自然に、ナチュラルに繋がっています。 他の国に行った時もよく同じ様に感じます。それは仏教に限らずイスラム教やヒンドゥー教でも同様に感じます。そんな他の国で自然な物が、なぜ日本では怖いものになって

          お彼岸の心

          今日はお彼岸の入り、今日から一週間が秋のお彼岸です。 以前に「彼岸に至る6つの道」を説明しました。今日は「お彼岸の心」、幸せに至るための大切な心持ちについてお話したいと思います。 そもそもお彼岸はこの世界(此岸)から仏様の世界(彼岸)を見つめる期間。要するにちゃんと良い方向に向かって進んでいるかどうかを確かめる期間という事です。 では良い方向とは何なのでしょうか? 仏教ではシンプルに悪い方向とは「苦しみの道」です。逆に良い方向は苦しみから離れた「幸せな道」です。「苦し

          「空」って実は現代人には分かりやすい考え方

          仏教で有名な言葉、考え方に「空」があります。 よく「有るようで無い、無いようで有る」と説明されますが、余計わからないですよね?でも実は現代人にとってはすごく分かりやすい、現代人だからこそ分かりやすい考え方なのです。 般若心経にはこのように説かれています。 「聞け、シャーリプトラよ、 全てのダルマ(物事の構成要素)は空によって特徴づけられている。(諸法空相)。 それらは作られるものでも、壊されるものでもない。(不生不滅) 汚れているものでもなく、清らかでもない。(不垢不浄)

          「空」って実は現代人には分かりやすい考え方

          彼岸に至る6つの道

          今年も9月になり、秋のお彼岸がやってきます。彼岸は秋分の日、昼の長さと夜の長さがほぼ等しくなることから、私たちの迷いの世界(此岸)と仏様の理想の世界(彼岸)が近づくと昔から考えられてきました。 それでは仏様の理想の世界、彼岸とは何なのでしょうか?それは別世界へ行くことではなく、私達が仏様のような心と行いになるということです。つまりわたしたち自身のレベルが上がることです。 仏教では迷いや苦しみの世界にいる理由は、私達の智慧(賢さ)と慈悲(優しさ)が足りず、道に迷い、起きた出

          『現代版 忠と孝』

          先に紹介した教育勅語は天皇と国民の間の忠と孝の関係が基本構造となっています。この忠と孝は日本の社会の基本として、とても大切にされてきたものであります。 ということはある意味日本らしさを形作ってきたものでもあります。 今日、社会は西洋的な価値観を基盤として形成されています。そこに忠と孝の概念をうまく、合わせられれば、現代的かつ日本らしい形を築けるのではないかと考えました。 そもそも忠と孝とはどういう意味でしょうか? 調べてみるとこのような意味だそうです。 「忠」は、主に君主や国

          『今あなたの道徳と教育の基本は何ですか?』

          教育勅語という戦前に広められたお言葉があります。これは日本の道徳と教育の基本として説かれたものです。そして戦後に軍国主義思想の象徴として批判されたものでもあります。 戦後の日本語訳で有名なものに国民道徳協会訳文がありまして、参考までに最下部に記しました。 これを読まれて、戦争に向かわせるものだという批判的な意見もあれば、いや今読んでも良いものだという肯定的な意見もあると思います。皆様はどう思われますか?もちろんどちらの意見でも良いと思います。 ただこの訳文と原文を比べてみると

          『今あなたの道徳と教育の基本は何ですか?』

          『あなたはどんな死後のイメージを持っていますか?』

          死は全ての人に訪れるものですが、漠然としたイメージしか持っていないものでもあります。しかし、まったくイメージを持っていないわけでもない。それは何故でしょうか?少し考えてみたいと思います。 まず科学的には、死後の世界が有ることも無いことも証明できていないので分かっていないというのが現在地点です。つまり、死後は有るんだと言っても、逆に死後は無いんだ、と言っても非科学的になります。 しかし人間にとって、全くわからない事、はとても不安な事です。特に戦争や災害などで死が近い社会状況にな

          『あなたはどんな死後のイメージを持っていますか?』

          『相手の今を尊重するという愛』

          前回はガンディーが人生の中で上手くいった面を書きましたが、上手く行かなかった面もあります。その中で最たるものが家族や、仲間との関係です。 ガンディーの長男は、父が家族を特別扱いしなかった事から生じた諍いで、家出をし、父と真逆な事をしようとして、肉を食べ、酒を飲み、遊びまくり、最終的には路上で死にました。 またガンディーはヒンドゥー教徒でしたが、イスラム系住民との融和も説いていました。しかしインドではイスラムとヒンドゥーの間には沢山の諍いがあり、イスラム教徒に家族を殺されたヒン

          『相手の今を尊重するという愛』

          『愛は最も強力な力

          「みんなご縁で繋がっている」と前回書きましたが、だから何が変わるんだ?と思われるかもしれません。そんな時にとっても参考になる事例があります。それは歴史上ほぼ初めて、暴力を使わずに支配からの独立を果たしたインドのガンディーの人生です。 「非暴力不服従」にて独立を果たしたと学校でも習ったと思います。でも具体的にどうやって独立までたどり着いたか想像できますでしょうか?暴力をつかわず、ただ我慢をしていれば、支配国であるイギリスが許してくれたのでしょうか?そんなに優しくあるはずがありま

          『みんなご縁で繋がっている』

          「仏教聖典」という本があります。ホテルにキリスト教の聖書と並べて置いてある本です。さりげない存在ではありますが、初めての人が仏教を学ぶための本を一冊だけ選ぶとしたら何を薦めるかと聞かれたら、私は間違いなくこの「仏教聖典」だと言います。 お釈迦様の生涯から根本的な教え、そしてその背景までもが分かりやすい言葉で、一冊の本に纏め上げられています。そして特筆すべきは初学者が読んでも、プロが読んだとしても、過不足ない内容になっている事です。そして何度読んでも学びがある。これは素晴らしく

          『みんなご縁で繋がっている』

          『魂は存在するのか?輪廻とは何なのか?』

          ミリンダ王の問いというお経があります。これはミリンダ王というギリシャ系の民主主義的思想を持ち、お金と権力を持っており、さらに知識人でもあった西洋の王様が、東洋、インドの天才的な僧侶であったナーガーセーナと様々な問答をするというとっても珍しい形のお経です。 しかしながらこの構図は今の世界に生きる現代人が古代の仏教の智慧から、今を生きる中での疑問を学ぶのにとっても適した形になっているとも言えます。 その中では多種多様な問いが行われます。 例えば「水には魂があるのか?熱せられるとジ

          『魂は存在するのか?輪廻とは何なのか?』

          『ちょうどよく生きる』

          引き続き「菜根譚」から。 「国を憂え人のために勤めることは美徳である。だが、それも度を過ぎて身を苦しめるようになると、心の本性から外れ感情を喜ばせられなくなる。 また、あっさりとして物に執着しないというのは高尚な気風である。だが、それも度を過ぎて心がすっかり枯れてしまえば、人を救い物を利することはできなくなる。」 『憂勤は是れ美徳なり。太だ苦しめば則ち以て性に適い情を怡ばしむる無し。澹泊は是れ高風なり。太だ枯るれば則ち以て人を済い物を利する無し』(前集二九) すごく人間味があ