好きなマンガ-6「うちのちいさな女中さん」
昭和初期、日本には女中さんという接客や炊事などを行う女性の職業がありました。それは裕福な家庭でなくても雇うことがある、とても身近な人たちでした。
という感じの説明1ページからはじまる、昭和初期のインドア派女流作家さんとその家に紹介されてやってきた14歳の女中さんの日常を描く物語。
もうメッチャクチャ面白いです。何回読み直したことか。明治初期の知ってそうで知らない「少しずつ現代っぽい文化が入り始めたころ(ブラジャー、ガスコンロ、家で作るカレーライス等)と、「今の時代では見なくなった文化(着物の仕立て直し)」の生活の混合具合を丁寧に丁寧に優しく描いているお話です。
このマンガの素晴らしいところは、丁寧な昭和初期の家事風景描写であることはもちろんですが、個人的には「もともと表情が表に出ないタイプの寡黙で生真面目なハナちゃん(女中)が、新しい時代の訪れに驚きや動揺を隠せない可愛らしく愛おしいリアクション芸」だと思います。
上の引用だと、このクリームソーダを飲むシーンが最高の見所です。(単行本で是非見てください!)
そして、努力家で真面目で謙虚なハナちゃんの姿は、人間いくつになっても斯くあるべしと思わせてくれて、個人的に読むたびに身が引き締まる思いです。
最高のマンガですが、最後に勝手な思い込みのお気持ち表明文を書きます。
正直表紙を見たときに「ハルタコミックの森薫さん合宿組のマンガ家さんかな?」と思いました(実際はゼノンコミックスです)。そして、最初の入り口だけ読んだら「シャーリー日本版か」と思うくらい似ていました。
でも、これはこれでたぶん作者の長田さんと担当さんは相当に悩んでこの設定にしたのだと思います。シャーリー的な設定にしすぎでは?女中さんが若いってところまでちょっとに過ぎてませんか?もっとオリジナリティを。でも、この年齢の子が頑張るってのがやっぱり一番マンガとして面白くなると思う…シャーリーが先にやってる…そこは長田さんの力ならオリジナリティが勝ってきます、でもスタート時はどうしても…うーーーーん、という葛藤を、担当さんと何度も何度も重ねたに違いありません。
そんな苦悩に苦悩を重ねて、ネームを何度も書き直して、結果、このような1話が一番読み心地がよかった。シャーリーに似てるといわれるかもしれないが、1話以降は絶対オリジナリティが評価される、という確信があったのだと思います。
そして、実際に、長田さんの描きだす美しく柔らかい絵と、暖かいテンポと、優しく謙虚なキャラクター達は、特に2話目以降、圧倒的な面白さとなって輝きだします。
そんなこんなお気持ちで、できれば2話目まで読んでほしく、試し読みできるところを探しましたが、私のサーチでは1話目しか試し読みを見つけられませんでした。ということで公式です。
1話目で引き込まれたら、是非2巻まで買ってください!(2022年5月現在、2巻まで)1話目より何倍も面白い話が待っています。