『アナザストーリーズ』口さけ女伝説

1970年代後半。
小学生の私は、様々な怪現象話に接してきた。
ノストラダムスの大予言、矢追さんの宇宙人話、ユリ・ゲラー、放課後には毎日のようにコックリさんをしていたし、TV番組は今では絶対親から文句がきそうな位怖かった「河童の三平」実写版。
そう言えば、地球から1分間空気が失くなるなんて話もあって、一生懸命息を止める練習してたっけ。

そんな時代背景の中、突然口さけ女が出たと言う噂が、クラスに広まった。
大抵の怪奇現象には慣れっこになっていた当時の私が、なぜか本気で怖がっていた記憶がある。
今から思えば、それまでに関わってきた怪奇話は、実態の無いものが多くて、ただ勝手に怖がっていれば良かった。
でも口さけ女だけは、もし出会ったら最後、「キレイだ」と答えても殺されてしまう。
逃げても、高速を走ってる車より早く走れるらしいから、とても敵わない。
ニンニクが苦手らしいから、毎朝丸ごとの焼いたニンニクを食べて行った。(当時の友達はいい迷惑だが、それでいじめられた記憶はないから、みんな食べてたのかも)
とにかく口さけ女に会わないように、いつも走って移動していた。

そもそも口さけ女の話はどこから始まったのか?
番組では岐阜に住む小学生の女の子が、新聞記者のお父さんに話したことで、それを記事にした事から全国に広まったと言っていた。
もちろん、ただのオカルト話を記事にしたわけではなく、その記事は当時から問題になっていたらしい、子供の塾や受験戦争が関わっているのではないかと言うことだった。
当時は観たいTVは、その時間でなければ観れなかったし、もちろんスマホもない。
夜塾に行かなくていいように、子供達が作り上げた話ではないかと言うことだった。
今みたいに、殆どの子供が塾に行き、スマホで情報が簡単に入ってくる時代とは違い、人気のある番組を見れなかった子供は、次の日学校で寂しい思いをした。
どうにか塾に行かなくて済むように、幼い子供が捻り出したお助け怪奇話ではなかったのか。

おそらくはじめは、もっとシンプルな話だったのが、マスクをむいたり、車より早く走れるなど尾ひれがついたのだろう。

口さけ女発祥の地の岐阜では、今口さけ女を町おこしにしているという。
幼い小学生は助けられなかったかもしれないが、町起こしにはぜひ成功してもらいたいと思う。

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