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無題:除光式

そうか、今日か。
食べ終えた焼き鳥の串を、まるで献花をするかのようにそっと、ゴミ箱にいれた。



コーヒーを、飲もう。

今日はザッと、ちょくでコーヒーの素をマグカップへ注ぐ。 ん、ちょっと多いような、気もする。

まぁ、いいか。

実は毎朝コーヒーを飲むほどの人間ではなく、今水以外に(お茶を作ればあるのだが)気軽に飲めるものがこれしかないから、という理由でよく飲んでいる。そもそも、朝や昼食にパンをあてがうことが多い人間にとって、コーヒーをあまり飲んでこなかったというのも不思議な話だが、コーヒーをメインウェポンにしている両親の分を少しでも減らすのは良くないと、半ば控えていた面があった。


残り少ないお土産もののお菓子等を並べ、コーヒーと夜を共にする。
はて、どう書いたものか。

一般的に「除幕式」というのは、華々しく行われるものだと認識している。規模はどうあれ、それは祝福されるべきイベントなのだろうと思う。

しかし、今回は除幕式ならぬ「除光式」。いつもなら記事のタイトルについての説明なぞしないのだが、これがメインの話になるのだからするべきであろう。

明日から、まとまった期間としては久しぶりに働くことになる。去年も同じ時期にやっていた、短期のアルバイトだ。ピアスは割と目をつぶってくれている感があったのでそのまま通していくつもりだが、流石にネイルは剥がさねばなるまいて、というよりやんわり剥がしといた方がいいねというお言葉も頂いたので、(頂く前に剥がすつもりですけどとちゃんと一言添えている)つまりはお別れをせねばなるまい、ということである。

たかがネイルを剥がすくらいで…という感じなのではあるが、まぁ色んな理由が私にもあるのでな。
なんか今日は身が入らないというか、気分が良いので感傷的になれず、やや文のキレが悪い。

ネイルも繰り返し塗っていけば、色を変えたり、剥がしたりすることに別に躊躇しなくなってくるのかなって思うと、慣れというのは怖いなと少し思う。私の場合、今回が初なのと旅行中の気分転換という意味合い、その他の理由(ここクソデカ)でこの爪に愛着を注いでいたのだけれども、こんなにも剥がすことに気持ちを持ってかれているのはワシくらいなんじゃなかろうて。

うーむ、きもちがふわついておる。流石に身を入れたいので、そろそろテーブルに座り除光液とにらめっこするべき。
どうせならまだ一夜を共にして朝に剥がしても良かったのだけど、そういえば初めて塗ってもらった時も、今と同じ夜が更けた頃だった。

思いをめぐらせる。

コーヒーを飲み干した。
そして私は席につく。

台所上の明かりだけが、座る私を照らしている。このような、僅かな光源でもって照らし、それ以外は辺り一面が暗いという、この環境が好きになってしまったというか、癖になったというか。
湯船に浸かる時、電気を消す。風呂の自動の光と、冬場は洗面所で首を振るストーブの明かり。これだけが私を照らしているのである。言っちゃえば、ドア越しに燃えているようにも見えなくは無いので、これ擬似本能寺の変だろとか馬鹿なことを繰り返し考えたりする。こんなんだから、全てにおいてダークモード仕様なのだ。

…はて、どうしたものか。今日は特段こんな感じで書こうとか、全然考えとらなんだ。
色々書きたいこととか、あった気がしたんだけどなぁ。

ぼくはめめしぃ人間なので、目に映る繋がりが消えてしまうのは、やや辛くはある。別にもう爪の色を変えてろうが、違うピアスにしてろうが、私にとってはさほど関係の無いことだ。んんぅ、なんか書きたいこと、違うなぁ。
もう今日はやめにする?うん? だめ? そっかー。

なんだろうなぁ、旅を終えてから1週間少し経ってしまったのだけど、この行為を持ってして本当に「終わってしまう」感があって、辛い。帰ってきて、いつものクソみたいな生活に結局戻ってしまい、いつかの思い出も写真の中に閉じ込められて、君との思い出も、やがては色の着いた筆を水につけた時のあの色彩のように、薄れていってしまうのかな、なんて思う。実際、薄まっている実感がある。
あの時の時間をいつまでも思い返したいから、淘汰されないようにいつまでもいつまでも君のことを考えて、もはや思い返すために君への好意を利用しているのでは無いかと思うことすらあって、やや、ううん、とても辛くなる。あなたへ生じた好きが、果たしてどこを水源として湧いてきたのか、分からなくなってくる。
いやそもそも、こんなにもあの一時を大事に大事に胸にしまっているのは私だけであって、そもそも大して話せなかった人間側が何故こんなにもそれを抱えて生きているのかという話にもなり、まぁ元気に1人で沼の中泥遊びする日々なのである。今はきもちが元気元気なので少々軽やかに書いているけども。まぁ、そんなことはどうでもいいし、そもそもどうでもいいくらいに笑っていてほしい。

うーーーーーん、やっぱ切れ味悪すぎるな今日。ダメだーーー、、うわーーーーーーーん身が乗らないよ~~~~~

今、右親指の子が、消えてしまいました
次、右中指の子。
うわーーーめっちゃ悲しいな。
黒だったらさ、ちょっと習字してて💦みたいに言い訳とかできひん?
右薬指。右人差し指。こんなに綺麗な色を爪に塗ってたんだね。
右の小指。あぁ、ただの右手に戻ってしもうた。
配達員さんが来る音が聞こえる。
この子達も一緒に、どこかへ連れて行ってくれないだろうか。
左親指。
思い込みが激しいから、またひとつ思い馳せるものが増えてしまったなと、したり顔で笑う。キモイ。
左中指。
左薬指。指の部分にめちゃついてまうな。落とすのも下手すぎか??塗るのもやってもらった身なのに…。。
左人差し指。そういえば、青い鳥居を生で見てみたいなぁ。
左小指。

出張で少し帰ってきて、明日再び戻る父に、人生まだまだ長いからねと、また向こうに行ける機会もあるだろうと言われて「うん…」と、軽く、元気さと、肯定さと、雑多な感情を混ぜた返事をした。

まだまだ人生、果たして長いのだろうか、続くのだろうかと思ったが、続いていってしまうのだろう。どうなるか分からないけど、分かりたくもないかもだけど、どうにかこうにか、やっていきたい所存です。

自分の爪は元通りに。傍らには、コットンのパレット。魔法のない世界で、なんてよく言ったものだけど、やや含みある笑顔で、君を見送った。


…どうやら除光式も、除幕式と同様、明るい門出になったようである。
それもこれも、どれもこれもに意味を与えてくれたのは、君のおかげなんだ。ありがとう。
何回も言うと効力は薄れていくから、今回は差し控えておこうかな。


心に被さった布が取り払われたような音が、彼方でしたような。
そんな深夜。

ま、俺自身の内容の文にしちゃァ、随分と明るく書き終えたなァ。らしくないらしくない。
ではね。

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