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無題:君の生まれた街へ

【⚠️🚨◤◢WARNING!◤◢🚨⚠️】
この話はフィクションです。
実際のなんちゃらとかとは関係ないらしい。
あと、リハビリです。


📌

外に出しておくと、缶・ペットボトル・コップ……。その他もろもろ、冷を帯びたものがすぐ汗をかく季節になってきた。
あぁ、夏だなぁ。と、それらを眺める一方で、我々人間側が汗をかいても全くもって風情がないのは悲しい。汗をかきやすい部分を、ひたすらハンカチで拭う夕方前。

普段乗っている電車の時刻をゆうに過ぎ、行き場を亡くした男が1人。彼の地を目指すことで気を紛らわそうとした。

そう、「君の生まれた街」。


運命や奇跡。信じない人の言説がよく目に入りがちだ。でも、私はそういったものがあった方が何かと都合が良いのではないかと思っている。
そうじゃなければ、この巡り合わせをなんと形容すれば良いのだろうか。

あなたは、たとえば自分、もしくは友達、好きな人や尊敬する人の生まれた場所や土地を知っていたりするだろうか?
生まれた場所と育った場所は、ややニュアンスが異なる。故郷と同じ場合もあるだろうし、そこからは遠く離れていたり、もしかすれば外国で生まれた人もいるのだろう。

とにかく、その人が誕生するまでに続いてきた生活の延長線上に、生まれた場所が存在するのだろう。
地元の人間がこの地に集まるまでの経緯からして、ある程度生まれた場所がある一定の、それこそ地方自治体にまで絞られる可能性はある。そういうデータがあるのかどうかは定かでは無いけれど。
が、しかし、自分から遠く離れた存在の場合は、その限りではない。自分が足を伸ばせるほどの場所で誕生したかもしれないという“可能性“は、まず排除されてしまう。
少なくとも、その地域の近辺にルーツを持っていると自ら先入観を抱いてしまうからだ。


ただ、どうやら、運命や奇跡という類はどうやらあったらしい。
「君の生まれた街」は、足を伸ばせばそこにあった。


他愛のない会話の中で触れられた話題で、話を広げてくれたのは君の方だった。
ふと呟かれた字(あざ)の場所を調べた時、まったく気にもとめないような場所が私にとって「意味のある場所」に変化した瞬間だった。

地縁とは、かくも不思議なものだ。無色透明な色が、君の色で塗りつぶされていく。
字が適用する区画内を目でなぞって、かなり気持ち悪い行為なのだが、遅かれ早かれ実際に赴こうと思っていた。



僕は、弱い。かなりもろい。
その日もまた、かつてのように過ちを繰り返し、背後から銃撃を受けながら歩いていた。
こんな僕を、あなたは笑うだろうか、蔑むのだろうか。苦し紛れに、気を紛らわすために「君の生まれた街」へ逃げ込む私をどうか許してほしい。

そう思いながら、脳内で囁く「これからは 幸福が 流行るらしいって」の幻聴に苦しめられつつ、汗をハンカチで拭い歩く。


駅、公園、教習所……。何かのifがあるならば、君はここに居たりしたのだろうか…。
なんとも言えない感情と眼差しを手向ける。

実際に歩いてみないと分からないことだらけで、中に足を踏み入れたことは今まで無かったのだが、私はよくその街の縁(へり)を横切っていたらしい。
過ちを犯し、気を紛らわすため近くに流れる川沿いを歩いた時。通院日に限って電車が運転を見合わせ、ズカズカと歩いた道でもある。

本当に、知らないうちに近くに居たのだなぁと、知らず知らずにその街を彩っていた、お気に入りの見知った歩道橋を皮切りにシャッターを切り始めた。

周りには台地由来の地名。そして当地は谷の名を冠し、谷間から染み出た湧き水が沢となって今も流れている。そこを起点に公園として整備され、現在もなお大切に守られているというわけだ。

湧き水を利用した池の公園。そして、湧き水には鯉が解き放たれており🦆も居た。
およそ貯水池の周りに公園があったような私のところよりも、歴史があり、非人工的な自然がそこにはある。しかも、住宅街の近くにだ 。これはすごいことだ。
ここに限った話ではないが、土地の記憶を目に見える形で継承していく取り組みに感服する。

そうこうしているうちにそろそろお時間、という具合になってきた。ちんたら見ていたから、大体3分の1ほども見れていない感じだった。
再訪を誓いつつ、帰り際、マップに自動的に表示された病院に目がいく。沿革を見る限り年代が噛み合わないので、確実にそこでは誕生していないと言えるのだが、なんとなく横目に見ながら帰路に着いた。

夕焼けが綺麗だった。


なにかに意味を見出そうとするのは、意味の無い自分の写し身のあらわれで、自分自身を探そうとしているのかなと少々肩をすくめた。
それでも、意味をもたらしてくれたのは君で、見出したのが私だった。
流れ星の尾を追うように、夕焼け小焼けの空を飛ぶ鳥たちの行方を案じるように、君を想った。

なんだか違う。あ、フィクションですから。ね。

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