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ショートショート部屋

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たらはかにさん主催の #毎週ショートショートnote  に参加した作品をまとめています。
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2024年1月の記事一覧

ツノがある東館(#毎週ショートショートnote)

妻と俺は縁側に腰かけ、横たわる死骸を眺めている。 「今年は拍子抜けだったわね」 「赤4匹に緑と青が2匹ずつか。少ないな」 「せめて紫が獲れればねえ…」 成鬼の買取価格は1体約100万の契約たが、紫の成鬼は特に人気が高く、倍の金額は下らない。十分に成熟した紫鬼はその味が段違いに良いとかで、グルメ垂涎の的なのだ。 「ま、仕方ないじゃん。来年に期待しようぜ」 「そうね。じゃ、運ぶとしますか」 ◇ 令和6年、節分明けの朝。 俺たちは今年も鬼の獲物を車に積み込み、梅屋デ

アメリカ製保健室(毎週ショートショートnote)

創立100年を記念した、僕らの学校の全面改修が終わった。 青銅色の巨大な門、そびえ立つ巨大な女神のモニュメント。 冷たい床はビロードの絨毯敷きに、 寒々しかった教室の蛍光灯はシャンデリアに変わった。 学食には特製チーズバーガーがお目見えだ。 アメリカに心底憧れる校長の、長年の夢だったらしい。 でも僕の心が躍ったのはやはり保健室だった。 ブロンドの髪も麗しい、アン先生が赴任してきたのだ。 「ダイジョブ、メヲトジテ」 毎夜眠れないまま登校し、保健室に直行する僕は、先生が優し