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(ネタバレ有り)トラペジウムの感想。

トラペジウム見ました。最高すぎた。
本当はTwitterで書こう思ったんですけど、とても140字じゃ収まらなさそうなので、noteで言語化します。多分文はぐちゃぐちゃです。

まずアイドルというのはファンの皆を笑顔にする職業だ。個人を笑顔にするのではなく、皆を笑顔にする職業。これはつまり逆を返せば個人に無関心ということになる。その意味で、東ゆうは“アイドル”である。ここでの“アイドル”は“主人公”と言い換えることができるかもしれない。
公開当初、「東ゆうがサイボーグみたいで人の心が無い。」というツイートがバズったのをご存知だろうか。それは正しい指摘だと思う。なぜなら東ゆうは“アイドル”だから、個人に興味は無いのだ。彼女には“アイドル”である東ゆうしか見えていない。東西南北の皆が笑っていなくても、ファンが笑ってれば自分は笑っていられる。自分の周りの友達(個人)よりファンの皆は優先されるべきことだから。
しかし、“アイドル”はアイドルにはなれないのだ。実際、あれだけの熱意があるにも関わらず、何度もアイドルオーディションには落ちている。そもそも東ゆうには何も無いのだ。本編にも出ているが、東ゆうだけファンが少ない。それは他の3人には個性があったり特技があるが、東ゆうには何も無いから。これは本人も無意識で気付いていることがセリフからも分かる。
物語中盤、東西南北は崩壊し全員事務所からも契約終了となる。ここで東ゆうは“アイドル”から“女の子”になるのだ。これがトラペジウムという話の大きなポイントだと思う。女の子がアイドルになる話は沢山あるが、この作品はその逆なのだ。“女の子”になった彼女は初めて友達(個人)に目を向け、自分の失ったものの大きさに泣く。そして、彼女はそれでもアイドルを志すと決意する。“アイドル”であることをやめた事で初めてアイドルになることを夢見ることが出来たのだ。夢見ることが出来たからこそ、彼女は本当のアイドルになれた。
そして、最後の回想の場面である。本当のアイドルになった東ゆうは高校生の時の自分に対して割と高評価をしている。今の自分は職業としてアイドルをやっているが、あの頃の自分は“アイドル”だったのだ。なりたくてなったとか、そういうのではなく本質として“アイドル”だった自分に対して感謝をしている。昔“アイドル”だったからこそ本当のアイドルになれたと、確信して幕を閉じるのだ。
大きな点はこれを日本を代表するアイドルが執筆したという事だ。“アイドル”はアイドルになれない。しかし、本当のアイドルになった人は昔“アイドル”だったのかもしれない。


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