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KIRINJIのThe Great Journey( feat. RHYMESTER)について

https://www.youtube.com/watch?v=iYc9OEggqHo&feature=youtu.be


人類の、一組のカップルの旅。
それからこの曲は新生キリンジの旅でもある。

感動的なエピソードや泣きメロなんて皆無なのに、聴きながらただただ泣いた。8月3日にリリースされたKIRINJI『ネオ』のリードトラック。『The Great Journey』がヤバい。

キリンジは、兄弟時代まで遡っても「feat.」で作った曲がない。はじめての共作の相手がRHYMESTERだ。

キリンジにRHYMESTERって、食べ合わせ的にはメロンに生ハムかなーと。メロンに生クリームじゃない。キリンジのサウンドに合いそうな予定調和気分のほわほわしたラッパーを入れなかったのが意外だった。

ひねりの効いた安定のポップスに、しょっぱいくてスパイシーな男女の情事(RHYMESTERのラップ)が絡む。歌詞もなかなか、だ。

「AとBとCすなわちHに入っちまったスウィッチ Let's Go!」

「さまよう恋人たちは空室待ち」

とにかくエロス。ギリギリアウトーーー!

そして、この曲、ほとんどが宇多丸とMammy-Dのラップだ。歌の尺が短い。「ぼんやり聴いてたらRHYMESTERの曲に聞こえるかも?」ってお兄ちゃんが言うくらいに(※1)。

サウンドも音が分厚い。さすが大所帯になっただけあるよね、って前作のアルバム「11」からこの編成だったわけですが。違うんですよ、ひたすら動きまくるファンクなベースととんかつやのきゃべつ千切りにしてるみたいに刻みつづけるリズム隊。力強いブラックミュージック。あきらかに違うバンドになってる。

「すべての生物が幾世代にも渡って繁殖を繰り返した結果 私たちの今がある 営みは続く」

「無数の巣箱に詰まった野蛮人が競ってダーティなダンシング」

ラブホを探し彷徨うカップルたちの夜と、崇高なる人類の歴史がクロス、昇華してグルーブ感も増してクライマックス。遺伝子を受け継いで、異物を受け入れて、増殖しながら新しいものになっていく。

それってキリンジの今じゃないか!

「むかしのさあ、兄弟時代のキリンジが至高だったわけじゃん……」みたいなごたくを並べる余裕もない。心臓がはちきれそうになりながらまた再生。

新しいキリンジは「ニュー」じゃない。「ネオ」なのだ(※2)。かつてあったものを刷新していく。ポップスとしての聴きやすさと安定感、泣きのメロディという特色を乗り越えてでも新しい何かを探しに行く。くらくらするほどかっこいい。

みんなで「どこも満室!」って叫ぼうぜ。

※1 http://miyearnzzlabo.com/archives/38149

※2 http://www.cinra.net/interview/201608-kirinji

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