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【インタビュー】開催直前『DESIGNART TOKYO 2021』有料配信カンファレンスの見所(後編)

10月22日(金)~10月31日(日)に行われるデザイン&アートフェスティバル
DESIGNART TOKYO 2021

昨年はコロナ禍の影響により、世界中のイベントが中止や延期を余儀なくされましたが、『DESIGNART TOKYO』は感染症対策を徹底し、リアルとオンラインの2軸によるハイブリッドの分散回遊型イベントを開催。リアル開催の部分では規模を縮小せざるを得なかったといいますが、オンラインシフトにより、予想もしなかった結果がもたらされることになったといいます。

そんな『DESIGNART TOKYO』は、今年もオンラインを活用したコンテンツを発信する予定で、ZAIKOとパートナーシップを締結しました。有料配信されるオンラインカンファレンス『CREATIVE CONFERENCE BRIDGE 2021』をはじめ、様々な面で協業しています。

前回の記事では『DESIGNART TOKYO 2021』開催直前 主催者インタビューとして、DESIGNART代表/クリエイティブディレクターの青木昭夫さんにアートフェスティバルの立ち上げ経緯や昨年のコロナ禍での取り組みについてインタビューしました。

今回は『DESIGNART TOKYO 2021』の見どころや有料配信されるオンラインカンファレンスの内容、そして今後の展望について、お話を伺いました。

今年の目玉はクリエイターの秘蔵の作品を集めた"蔵出し"展示

ZAIKO編集部:
『DESIGNART TOKYO 2021』の見どころはどういったところにあるのでしょうか?

青木:
今年の目玉となるのは『KURADASHIー発想の原型ーというイベントですね。様々な理由や事情で市場に出回ることなくクリエイターたちの手元に保管されていた創作物、つまり、発想の原型である秘蔵の作品を一挙に集めて、その世に出なかった理由に理解を示しつつ、"蔵出しする"という形で展示、お披露目することをコンセプトにしたイベントです。

イベントでは約30組のデザイナー、アーティストの作品がワールド北青山のメイン会場で展示されますが、それらの作品はイベント会期スタートと同時にクリエイターファーストを掲げるクラウドファンディングの「うぶごえ」で販売されることになっています。貴重な作品が展示販売されるということもあって、1番注目して頂きたいイベントですね。

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【画像キャプション(左上から時計回りで)】Swirl we+、Bulge lines / gray 寺山紀彦、A DIFFERENT CORNER 山中 一宏、Vannfall / NedreFossJIN KURAMOTO STUDIO

次に世界的に有名なシャンパーニュメゾン「ペリエ ジュエ」とオーストリアのデザイナーユニット「ミシャー’トラクスラー」とのコラボインスタレーションイベントも今年の見所のひとつです。このイベントでは、ミシャー’トラクスラー初のデジタル技術を用いたインタラクティブアート作品『I am Nature』が世界に先駆け、東京で初披露されます。

また、会期中には、Polygon Aoyamaで行われるイギリスのスピーカーメーカー「KEF」と建築チームの「クライン ダイサム アーキテクツ(KDa)」のコラボインスタレーションイベント『KEF 60 YEARS - Listen & Believe – Welcome to the Wireless High-Fidelity Experience』、渋谷の廃ビル1棟を使い、若手クリエイターグループの「MULTISTANDARD(マルチスタンダード)」を中心に作品が展示される『1-15-22 Apartment』、イタリアの家具ブランドの「FLEXFORM(フレックスフォルム)」による、イタリアの自然にインスパイアされた色彩をキーワードにした大胆なインスタレーションが展示される『Velocity of Colours』など、さまざまなイベントが青山・表参道を中心に渋谷、代官山、六本木、銀座などで行われます。

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それとすでに展示はスタートしていますがGINZA SIXでの『Metamorphosis Garden(変容の庭)』という、彫刻家の名和晃平さんによるARテクノロジーを使ったインスタレーションイベントも注目です。ここで展示されるインスタレーションは、振付家のダミアン・ジャレと共作で、スマホ越しにオブジェを見ると、ARでダンサーが踊るパフォーマンスが再現されるユニークなものになっています。

"ゼロイチ"で物事を考える、新しい発想を見つけるヒントに

ZAIKO編集部:
オンラインでカンファレンスイベントの『CREATIVE CONFERENCE BRIDGE 2021』が配信されるとのことですが、どういった内容のクロストークがラインナップされているのでしょうか?

青木:
カンファレンス ブリッジは、以前から「自分の未来をより良い生活にしていくための発見ができるような場にしたい」という想いもあって、"架け橋"的な意味も込めて、あえて異業種のクリエイター同士を掛け合わせることを大事にしながらやってきました。

例えば、最近ではみんなが"サステイナビリティ"という言葉をよく口にしますが、素材を変えるような表面的なところだけでなく、より深くその言葉の意味を追求していくと、"サステイナビリティ"の概念がもっと豊かになり、立体的でリアリティがあって、本当に環境に良いことを実践できるようになります。カンファレンス ブリッジでは、そういったヒントになるようなトークセッションが非常に多いことが特徴となっています。

"変化する社会や訪れる未来に向けて、考え学び意見交換するクロストークの場"ということで、今年は『Co-循環』をテーマに建築家、デザイナー、オークショニア、ギャラリスト、ジャーナリストなど立場の違う様々な分野、業種のクリエイターの方々に集まって頂きました。

"Co-循環"というテーマには、"共同の"とか"互いに"という意味を持つ「Co」という言葉にそれぞれがしっかりと循環している状態の意味を持つ"好循環"という言葉を掛けています。現在は、コロナ禍の影響で既存のビジネスや手法が通じにくくなっている状況があるからこそ、気づきを与えてくるような"ゼロイチ"で物事を考える新しい発想が必要です。そういったこともあって、関わった人すべてが好循環しながら共存共栄になっていく仕組みをここでディスカッションし合えるような場にしたかったのでそのようなテーマにしました。

ZAIKO編集部:
今回は4つのセッションが予定されていますが、それぞれの見所を教えていただけますか?

青木:
今回のカンファレンスの目玉となる1つめのセッション『パリ・オリンピックにつなぐ、アフターコロナの建築と都市』は、アンスティチュ・フランセ日本との共同開催で、フランスの建築家で都市設計家でもあるドミニク・ペローさんと日本の著名建築家の隈研吾さんの2人にファシリテーターとして建築家、美術史家の山名善之さんにご登壇頂きます。

2024年のパリ・オリンピックに向けた新たな都市デザインを統括するペローさんと国立競技場の設計に携わった隈さんには、"オリンピック"という共通項があります。このセッションでは、ちょうどオリンピックが終わったタイミングということもあり、東京からパリへバトンを渡す意味を込めて、オリンピックに代表される大規模な公共建築がどのように社会的な影響も与えながら、街の循環に根ざしていけるかについて、トークして頂きます。パリ・オリンピックの貴重なプランも見聞することができますよ。

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【画像キャプション(左から)】セッション1の模様:山名善之さん、ドミニク・ペローさん(スクリーン画面)、隈研吾さん

2つめのセッション『日本×台湾!デザインを語る新しいことばをアジアから発信しよう。』では、台湾デザイン研究院院長の張基義さん、台湾を代表する建築家のジョニー・チウさん、日本代表をする気鋭の若手プロダクトデザイナーの鈴木啓太さんの3人とファシリテーターとしてフランス発の世界的に著名なインテリア誌『エル・デコ』ブランドディレクターの木田隆子さんにご登壇頂きます。

このセッションは、台湾と日本の交流をデザインし、双方のデザイン振興を目的としたものになります。親日国としても知られる台湾と日本は歴史的なつながりも深く、台湾には日本の技術を受け継いでいる文化もあったり、竹細工など色々な工芸文化を持っています。そういったものと日本のクリエイティブとを掛け合わせるような話や、近年、世界に通用するクリエイターを輩出しつつある台湾が国を挙げて取り組むデザイン戦略の話などを交えながら、古いものを現代に蘇らせ、未来へとつなげる日台のデザインの力にも触れながら、西欧の文脈ではなくアジアの言葉でデザインを語るにはどうしたらいいのかを考えます。ここでは世界に台頭するアジアを共に創っていく新しい提言もされます。

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【写真キャプション(左から)】セッション2の模様:木田隆子さん、鈴木啓太さん、(スクリーン画面左から)張基義さん、ジョニー・チウさん

3つ目のセッション『Art is Lifeline. 日本でアートの民主化は起こるのか?』では、「フィリップス・オークショニアズ」日本代表でディレクターの服部今日子さん、タカ・イシイギャラリー代表の石井孝之さんの2人とファシリテーターとして「美術手帖」総編集長の岩渕貞哉さんにご登壇頂きます。

このセッションはアートの分野に特化した内容になります。現在、アート市場は戦後最大と呼ばれるほど盛り上がりをみせていますが、ある研究所の試算によると日本の市場規模は世界で14位。しかも世界のトップであるアメリカと比べるとわずか10分の1程度にすぎません。その意味では日本はGDP世界3位の先進国ということもあり、今後の伸びしろがあると言えるわけですが、残念ながら日本ではまだまだアートの敷居は高く、敬遠されがちです。

ただ、最近では30代、40代の経営者層による節税や投機的な意味でのアート収集が見られるようになったり、音声SNSの「Clubhouse」を使ってのライブオークションが行われるなど、以前と比べてアートの民主化の動きも見られるようになっています。また、コロナ禍でドイツのメルケル首相が投げかけた「アートは生命線である」という言葉が世界で非常に注目されるなど、アートがいかに人間の精神的な支え、心の豊かさをつくる原動力だったか、改めて気づかされた部分もあります。オークショニアである服部さんによる世界のアート市場の状況やオークションの楽しみ方、オークションから見る世界のアートトレンドについての話のほか、タカ・イシイギャラリーさんも参加した、9月のアート・バーゼルの報告など、アートにあまり馴染みがない人からよく知っている方まで楽しめるトークとなっております。

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【写真キャプション(左上から時計回りで)】セッション3の模様:「美術手帖」総編集長の岩渕貞哉さん、「フィリップス・オークショニアズ」日本代表でディレクターの服部今日子さん、タカ・イシイギャラリー代表の石井孝之さん、DESIGNART代表/クリエイティブディレクターの青木昭夫

4つ目のセッション『手技とテクノロジーで回す、サステイナブルなものづくり』では、東京大学生産技術研究所特任教授/noizの豊田啓介さん、先ほどお話しした「KURADASHI」のキュレーターでもあるプロダクトデザイナーの倉本仁さんの2人とファシリテーターとして編集者、キュレーターの塚田有那さんにご登壇頂きます。

このセッションでは、手技とテクノロジーを掛け合わせたサステイナブルなものづくりをテーマにしています。テクノロジーというと機械的であったり、未来的なイメージがあるかと思いますが、実は手工芸的なものにも素材や技術が掛け合わせられたものがあります。ですので、一口に先端技術だけにフォーカスしてしまうと本当に必要なものにはなりにくいということもあります。また、その裏には必ず手技の効いた技術が必要で長く愛されるものになるにはこの両方を兼ね備えている必要があります。

そういった我々の考えもあって、テクノロジーを使った建築やプロダクト設計が得意な豊田さん、逆に手工芸的なものづくりで知られる倉本さん、サイエンス&アートを得意とされている塚田さんの3人には、テクノロジーと手技の効いたプロダクトをクロスオーバーさせたものについて、トークして頂きます。

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【写真キャプション(左上から時計回りで)】セッション4の模様:編集者・キュレーターの塚田有那さん、東京大学生産技術研究所特任教授の豊田啓介さん、DESIGNART代表/クリエイティブディレクターの青木昭夫、プロダクトデザイナーの倉本仁さん

「クリエイティブ」に出会いやすい環境づくりに取り組んでいく

ZAIKO編集部:
DESIGNART TOKYOの今後の展望について教えてください。

青木:
僕らは「クリエイティブ」とは、"日々の暮らしを楽しくしてくれるパートナーのような存在"であり、"人と人を繋げる大事なリソース"だと考えているので、そういったものに出会いやすい環境づくりに今後も取り組んでいくつもりです。

それと実は今、ものづくりの分野では素晴らしいプロダクトは沢山あっても、間に入って繋いだり、発信できる人材が不足しているんです。そういったこともあって、今年6月にものづくりや色々なクリエイティブを世界に発信したり、繋げていく人を増やしていくための「DESIGNART研究所」というブランドディレクター養成塾を開講しました。

そのような人材が不足する原因には海外に発信していくための言語の壁や、日本の市場がそれなりに豊かなだけに海外に出ていく状況が生まれにくいといった問題が関係しているのですが、僕らはこの研究所からそういった状況を打破していくための人材育成に取り組んでいます。今後は、この研究所から幕末の志士を育てた松下村塾のように優れた人材を輩出することで、日本のクリエイティブ全体を引き上げていけるような状況をつくりたいと思っています。

【開催概要】
名 称:
DESIGNART TOKYO 2021(デザイナートトーキョー2021)

会 期:
2021年10月22日(金)~ 10月31日(日)

会場エリア:
表参道・外苑前/原宿・明治神宮前/渋谷・恵比寿/代官山/六本木/銀座/オンライン

主 催:
DESIGNART TOKYO 実行委員会

発起人:
青木昭夫(MIRU DESIGN)、川上シュン(artless)、 小池博史(NON-GRID・IMG SRC)、永田宙郷(TIMELESS)アストリッド・クライン(Klein Dytham architecture)、マーク・ダイサム(Klein Dytham architecture)

オフィシャルサイト:
https://designart.jp/designarttokyo2021/
【オンラインカンファレンス】
名 称:
DESIGNART CREATIVE CONFERENCE -BRIDGE- 2021

日時・出演:
Session 1|パリ・オリンピックにつなぐ、アフターコロナの建築と都市
🕐2021年10月25日(月)18:30〜20:00(JST)
🕐2021年10月28日(木)21:00〜22:30(フランス時間)
登壇者:隈 研吾(建築家)、ドミニク・ペロー(建築家/都市計画家)
ファシリテーター:山名善之(建築家/美術史家/東京理科大学理工学部建築学科教授)
対応言語:日本語/フランス語
共催:アンスティチュ・フランセ日本
アンスティチュ・フランセ東京 エスパス・イマージュにて収録

Session 2|日本×台湾!デザインを語る新しいことばをアジアから発信しよう。
🕐2021年10月26日(火)18:30~20:00(JST)|17:30〜19:00(台湾時間)
登壇者:張基義(台湾デザイン研究院 院長)、ジョニー・チウ(建築家/J. C. Architecture創業者)、鈴木啓太(プロダクトデザイナー/PRODUCT DESIGN CENTER代表)
ファシリテーター:木田隆子(『エル・デコ』 ブランド・ディレクター)
対応言語:日本語/中国語
アンスティチュ・フランセ東京 エスパス・イマージュにて収録

Session 3|Art is Lifeline. 日本でアートの民主化は起こるのか?
🕐2021年10月27日(水)18:30~20:00
登壇者:服部今日子(「フィリップス・オークショニアズ」日本代表・ディレクター)、石井孝之(タカ・イシイギャラリー代表)
ファシリテーター:岩渕貞哉(「美術手帖」総編集長)

Session 4|手技とテクノロジーで回す、サステイナブルなものづくり
🕐2021年10月28日(木)18:30~20:00
登壇者:豊田啓介(東京大学生産技術研究所特任教授/noiz/gluon)、倉本 仁(プロダクトデザイナー/JIN KURAMOTO STUDIO 代表)
ファシリテーター:塚田有那(編集者/キュレーター/一般社団法人Whole Universe代表理事/「Bound Baw」編集長)

料 金:
🎫1DAY (1Session):¥1,500
🎫4DAYS (4Sessions) 通しチケット:¥3,000